3位転落の巨人 起爆剤に指名された中田翔の打撃フォームに必要なこと【柴田勲のセブンアイズ】

3位転落の巨人 起爆剤に指名された中田翔の打撃フォームに必要なこと【柴田勲のセブンアイズ】

中田翔

■守護神の(翁田)大勢が……


 巨人がひどいことになった。ゴールデンウイークは1勝8敗、アッという間に首位から3位に転落した。

 8日のヤクルト戦、1点をリードした9回に守護神の(翁田)大勢を投入して勝てると思ったが踏ん張り切れなかった。逆転負けで今季2度目の3タテを食らって4連敗、負の流れを止めることはできなかった。

 1死から代打・中村悠平にフルカウントから左翼線に二塁打、続く塩見泰隆にはやはりフルカウントから打ち取った当たりが遊撃内野安打となった。一、二塁となり山崎晃大朗に初球、155キロの真っすぐを捉えられた。

 逆転の2点二塁打となった。

 ここまで打者4人で16球中、15球が真っすぐで1球はスライダーだった。打者は基本的に真っすぐ狙いだ。追い込まれてフォークなどの変化球を考える。カウントを取るのにもっとスライダーやカーブといった変化球を使ってもよかった。

 大勢、確かに真っすぐは速い。球威はあるが、そりゃ甘くなれば打たれる。コントロールが悪くベルト辺りに集まっていた。山崎への一球は不用意だった。

 だが開幕ダッシュの原動力となった大勢である。新人である。責めることはできない。反省材料として次につなげてほしい。


■続々と離脱


 エース・菅野智之が右ヒジ違和感、主将・坂本勇人が右ヒザの負傷で出場選手登録を抹消された。これだけでも痛いのに吉川尚輝が4日の広島戦(マツダ)で左肩に死球を受けた。肩甲骨挫傷と診断されて出場選手登録を抹消された。

 吉川尚、坂本、丸佳浩、そして岡本和真の4人は絶対に離脱してほしくない主力だが、エースに続いて2人抜けた。

 巨人で現在考えられるベストの1・2番であり二遊間のコンビだ。原辰徳監督は初回での得点をテーマに掲げていた。巨人は5月7試合で計17得点、1試合平均で約2.4点である。急激な下降線をたどったのはもっともだ。

 原監督はこの危機的な状況に2軍で調整中の中田翔の再昇格を決めた。10日のDeNA戦(新潟)から合流する。いわば、打線の起爆剤として指名した格好だ。

 中田は日本ハムから移籍して今季2年目で開幕当初は中軸に座っていたが、期待に応えられず(※1)4月22日には首のコンディション不良もあって出場選手登録から外れていた。

 2軍降格後はそれなりの成績(※2)を残しており、中田なりに状態の改善を目指していたようだ。今度こそ原監督の期待に応えることができるのか。


■中田翔の合流に期待


 降格前の中田はバットを立てる打撃フォームだった。力感を求めていた。パワーを前面に押し出した。開幕前、20キロの増量に成功したそうだが、これではバットの出がスムーズにいかない。ポイントまで遠回りする。

 さらにバックスイングが小さいから上体が突っ込む。2軍で140キロあたりを投げる投手には対応できても1軍投手の150前後の真っすぐや変化球には難しい。

 若い時は上半身5割、下半身5割の力で打てる。だが、年々年を取ってきたら上半身4割、下半身6割にする必要がある。

 右の股関節に体重を6割から7割乗せる。バットを寝かせてヘッドを捕手側へちょっと向ける。バックスイングしてステップする際は楽にできる。ボールを長く見ることができる。バッティングに力感は必要ない。順応性が肝心で求められるものだ。

 中田はいろいろ言われているが、私は打率2割7分前後、本塁打25本はいけると思っている。打点王を3回獲得したように勝負強さも持っている。吉川尚、坂本が離脱したいま、中田の復帰は打線に厚みが出る。中島宏之を代打の切り札に使えるし、守備の良さには定評がある。内野が締まる。期待がかかるのは当然だろう。私も期待している。


■若手を起用する事情


 巨人の若手投手陣に陰りが見え始めた。4月までに堀田賢慎、戸田懐生、赤星優志、平内龍太、山崎伊織、大勢がプロ初勝利を挙げたものの右ヒジのトミー・ジョン手術明けの山崎伊は登録と抹消を繰り返しており、赤星は登録を抹消された。堀田もヤクルトの村上宗隆に満塁弾を浴びてKOされるなど精彩がない。戸田、直江大輔は2軍で調整中である。

 彼ら若手は開幕前のチーム事情があって使ったもので、それがうまくいってラッキーだった。それがいつの間にか期待が大きくなってしまった。

 本来は菅野であり、戸郷翔征、高橋優貴、C.C.メルセデス、マット・シューメーカーらが前面に出なければならない。しかし若手が主力になった。

 そのへんが今季の巨人の辛いところだ。野手陣も同じである。中山礼都、湯浅大、増田陸らを起用しているが、原監督にすればあと2、3年後にモノになってくれればという選手だろう。いま使うところに投手陣同様苦しい台所事情が見える。

 いずれにせよ巨人は緊急事態である。前回今コラムで「長いシーズンには好不調の波がある。小波で終わるか、それとも大波か」と記した。どうやら今回は後者だったようだ。

 ここは全員で乗り切るしかない。まずは10日のDeNA戦、中田に注目だ。

 ※1 21年8月20日、日本ハムから無償トレードで移籍。今季は23試合に出場して打率.188、2本塁打、8打点。

 ※2 9試合に出場して打率.241、4本塁打、8打点。雨天コールドでノーゲームとなった4月29日の試合では2打席連続本塁打を放っている。
 (成績は9日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮編集部

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