サイン盗みに蓋した「高野連」の粉飾体質 トラブル続き、“もはや球児虐待”の指摘も

高校野球で球児に過密なスケジュールを強いるのは「もはや虐待」と、門田隆将氏が指摘

記事まとめ

  • 平成最後のセンバツ高校野球で、習志野の“サイン盗み疑惑”が取り沙汰された
  • 白黒つけるのは極めて困難だといい、高野連は疑惑や批判にはことごとく蓋をするとも
  • 一方で球児に過密なスケジュールを強いるのは、「もはや球児虐待」と指摘する声もある

サイン盗みに蓋した「高野連」の粉飾体質 トラブル続き、“もはや球児虐待”の指摘も

 甲子園には「魔物」が棲むという。ここぞという場面で絶対的エースが崩れ、打率5割超えのスラッガーが不振に陥るのも頷ける話だ。だが、真の魔物とは、美談に名を借りて球児を酷使し、疑惑や批判にはことごとく蓋をする当の「高野連」ではないか――。

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 4月3日に閉幕した平成最後のセンバツ高校野球。習志野(千葉)と星稜(石川)の一戦で、習志野の“サイン盗み疑惑”が取り沙汰されたのはご存じのとおりである。星稜・林監督が抗議した一方、習志野の小林監督はこれを否定。スポーツジャーナリストの安倍昌彦氏は、この「疑惑」に白黒つけるのは極めて困難だと語る。

「サイン盗みがなくならないのは証明ができないから。今回の件も、最終的には“自白”がなければ断定はできないでしょう」

 しかし、このまま疑惑に蓋をしたところで何の解決にも繋がらないのは明らか。フェアプレーを旨とする高校野球を巡り、釈然としないトラブルが繰り返されるのはなぜなのか。

「サイン盗みや登板過多といった問題の背景にあるのは、各学校の監督を含む高校野球関係者の勝利至上主義です。それに歯止めをかけてこなかった高野連にも責任があると思います」

 とは、『甲子園という病』を著わしたスポーツジャーナリストの氏原英明氏の弁。

 その弊害のひとつが、投手の「多投・連投」問題だ。


■もはや球児虐待


 高野連の八田英二会長は、昨夏の甲子園大会の講評でこう述べている。

〈秋田大会から一人でマウンドを守る吉田(輝星)投手を他の選手がもり立てる金足農は、目標に向かって全員が一丸となる高校野球のお手本でした〉

 吉田投手が甲子園で投じた球数は6試合で881球。日ハムの先輩・斎藤佑樹の948球に次ぐ「ワースト2位」の記録で、秋田県予選の投球数まで合わせれば実に1517球に達する。

 ここ数年、アメリカメディアが“日本の高校野球はクレイジー”と非難するのも頷ける話である。にもかかわらず、高野連のトップは、投手生命を脅かす過酷な連投を「高校野球のお手本」と称えるのだ。

「アメリカではかなり以前から、投手の球数制限や休養を義務づける“ピッチスマート”というガイドラインを取り入れています。高野連はこうした世界の事情を知らず、大会の盛り上がりにしか目を向けない。1試合に200球投げることを“熱投”という美談で覆い隠す風潮にも首を傾げざるを得ません」(氏原氏)

■ユニホーム出演で“処分”


 高野連の常識はずれなエピソードは枚挙に暇がない。

 昨年12月、高知商業の野球部員が同校のダンス同好会の発表会にユニホーム姿で出演。ダンス同好会がチアガールとして甲子園での応援に華を添えてくれたことへの恩返しだった。

 ところが、この発表会が500円の入場料を取っていたことで〈野球部員の商業的利用〉に当たる可能性があるとされ、高野連は一時、野球部長の処分を検討したのである。

 これには同校OBの野球評論家・江本孟紀氏も、

「明らかに高野連の過剰反応で問題にすること自体がおかしい。お金について言うのなら高校野球だって甲子園の入場料で何億円もの収益を上げています。何でも口出しすればいいというものじゃないでしょう」

 と憤りを隠さない。

 確かに、昨夏の第100回記念大会の収入は、史上最高額となる7億8千万円を記録している。

『甲子園への遺言』の著者で、ノンフィクション作家の門田隆将氏が続ける。

「高野連が、球児の無償の奉仕によって莫大な利益を上げていることは厳然たる事実です。昨年から外野席でさえ500円の入場料を徴収しています。果たして、そうした利益は球児たちに還元されているのか。高野連は朝日や毎日、NHKなどのOBを職員として受け入れながら、その給料すら明らかにしていませんが、こんなことがいつまで許されるのでしょうか」

 美談で粉飾しながら、球児に過密なスケジュールを強いるのは、「もはや球児虐待と言われても仕方がない」(門田氏)

 真偽はともあれ、今回の騒動でも高野連は当事者の訴えをろくに聞かず、何事もなかったかのように幕を引こうとしている。球児たちの悲愴な面持ちを、その美しい物語の表紙で覆い隠し、ただひたすら自分たちの栄華を守るために。

 甲子園を目指す少年たちの「汗と涙」の物語。それが、球児らにとって不正発覚に怯えて流す「冷や汗」や、連投の果てに肘を壊してこぼれる「悔し涙」であってはならない。

「週刊新潮」2019年4月11日号 掲載

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