広島東洋カープ緒方孝市監督が野間峻祥に「パンチ6発」 鉄拳制裁は是か非か

記事まとめ

  • 広島東洋カープは6月28日からオールスター前まで1分を挟み、20季ぶりの11連敗を喫した
  • 連敗当初に緒方孝市監督は、野間峻祥に怠慢プレーを叱責し、6回、手が出たという
  • 野間は被害届の提出などを検討したが、長野久義らベテランに説得されたよう

広島カープ・緒方監督が怠慢選手に「パンチ6発」 今どき鉄拳制裁は是か非か

 昨季まで3連覇を果たした好調が嘘のように11連敗を喫した広島カープ。その陰に秘された事件こそ、他ならぬ緒方孝市監督(50)による「嵐の掌底」連打だった。

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 FAのお蔭で櫛の歯が欠けたように選手がいなくなる広島がそれでもセ・リーグ3連覇を果たせたのは、緒方孝市監督の手腕に負うところが大きいだろう。FAなしには野球ができない巨人は干支ひと回りの間に2度の3連覇を飾っているが、それとはモノが違うのだ。

 もっとも今季の緒方広島は昨季までの快進撃をそのままに……とは行かず、3・4月は12勝15敗で、5月は20勝4敗1分と破竹の勢いで一時首位に立ったものの、6月は6勝15敗2分の大ブレーキ。そして、6月28日からオールスター前まで、1分を挟んで、20季ぶりの11連敗を喫した。元カープコーチでOB会長を務める安仁屋宗八氏は、

「丸(佳浩)や新井(貴浩)が抜けましたが、どちらかというと新井の穴は大きいですね。彼は若い選手のプレーの悩みの相談に乗ったり、ベンチの雰囲気を盛り上げていましたから」

 と、調子に乗りきれない古巣を分析する。そんな連敗当初の6月30日、敵地でのDeNA戦で事件は起きていた。担当記者によると、

「野間(峻祥)が打ち上げた浅いフライを投手が落球したが、野間が緩慢な走塁をしたせいでアウトになった。全力疾走していればセーフだったのは明らかでした」

 村野工から中部学院大に進んだ野間は、2014年にドラフト1位指名を受けた。4年目の昨季に初めて規定打席に達し、打率2割8分6厘。不動のセンターだった丸の後を襲う最有力候補と目される26歳だ。

 そんな野間は件の試合後、緒方監督に呼び出された。

「8畳くらいの監督室で、怠慢プレーについて監督は相当な勢いで叱責しました。そして監督の手が6回、野間に飛んだんです」

 と、球団関係者。

「野間はホームベースを踏み忘れて2軍降格したことがある。そんなウッカリが怠慢走塁で雷を落とされるのは仕方ない。ただこのご時世、暴力はダメ。野間は被害届の提出などを検討したけど、長野(久義)らベテランに説得されたようです」

 選手のひとりは、

「裏方含めほぼ全員が知っている話っす。野間は“打球が見えなかった”って言い訳したみたいですが、なら走れよって感じ。平手ではあるんですが、掌底を食らったっていうのは聞きました。監督、力強いし」

 野武士の如く他を寄せ付けない監督の存在感ゆえに、物言えば唇寒しの状況だという。穏やかならざる話だが、球界にあって鉄拳制裁と言えば、あの中日監督時代の星野仙一氏である。

「1987年から91年までの第1次政権時が酷かったですね。ロッカールームに向かう途中の通路に呼び出してボコボコにする。壁には星野さんが蹴った後にできた穴が残っていました」

 と、当時の担当記者。

「中村武志(捕手)は練習中に態度が良くないということで、ホームベースからバックスクリーンまで後ずさりしながらシバかれ続けたことがありました。また、ベンチでは激昂すると湯呑を壁や地面に投げつけて割ってしまう。その破片を片付けるのは大変だと、プラスチック製のコップに替えたことがあったんですが、湯呑をぶつけても割れないから、“誰や〜! プラスチックに替えたのは!”と怒鳴り散らしていました」


■球団本部長が語るには


 平成は令和となり、ラジカセなんかと一緒に愛のムチやシゴキもガラクタ箱に入れられてしまった恰好だ。体罰は絶対悪という風潮が大勢を占める中、緒方監督はどう考えているのか。直撃すると、

「今、ものすごい、そういうことの指導に対して、本当に難しいことなんで。で、下手に嘘とか、そういうことになってしまうと……」

 そう絞り出した後は「広報を通して」と言うのみなので、責任者である広島カープの鈴木清明常務取締役(球団本部長)にご登場頂こう。監督とは、「彼が20歳の時にアメリカ留学へ連れて行って以来の付き合い」なのだと言う。

「監督と選手本人に2度ずつ、その他の関係者にも聴取しました。『パンチ6発』というのは事実ではない。ただ、プレーに対する姿勢を糺す過程において、手を出す行為があったことは事実です。監督本人は、“野間選手の能力を評価しており、怠慢なプレーに対して、あってはならないと叱責をしている中で手が出てしまった。野間選手に影響が及んで、プレーに集中できなくなってしまうのは本意ではなく、申し訳ない”と言っていました。監督は一本気で若い頃からストイック。取り繕って嘘を言うことはできないタイプで、怖いオヤジかもしれないけれど、愛情のあるオヤジなんです」

 掌底は複数回か?と質すと、それを否定はしなかった。では、野間の反応は?

「“僕は監督の気持ちも意図もわかります。何の不満も恨みもありません。翌日から普通に監督と話をしています”と言っていました。オーナーも強い口調で、“(暴力は)一切ダメだ”ということで、球団としては監督に対して厳重注意という処分を下しました」

 そして、「推測ですが……」と付け足して、

「あの日は1軍に上がる、あるいは2軍に落ちる選手を決めた日に当たります。選手には自覚を持ってほしかったのだと思います」

 事実、野間とポジションを争う長野が登録を抹消されている。

「手が出たというのは感情的になってしまったんでしょうけれど、怒りで錯乱してというわけではないんです。いじめやドロドロした人間関係があって手が出るのと、愛情ゆえに何とかしてほしいと思って手を出してしまった場合とが同列に扱われてしまう世の中です。そもそもこれらに境界線を引くのは難しい。全ての暴力はいけないし許されない、それ自体は正しいのですが」

 暴力にも色々ある。そういう議論が成立しない時代の“生き辛さ”を問わず語りに語っていて、真率な響きがある。他方、野間を長野らベテランが説得した話について球団側は、

「そのような事実があったか否かはわかりません。しかし、2度の聴取で選手に丁寧に聞いており、野間選手が不満を抱いている旨の発言はありませんでした」

 と、煮え切らなかった。

「週刊新潮」2019年8月1日号 掲載

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