星稜「奥川」、霞ヶ浦「鈴木」 明暗分けた“超高校級投手”…気になるスカウトの評価は?

「超高校生級」と呼ばれる逸材の名にふさわしい堂々たる雄姿だった。

 夏の甲子園大会第2日、今大会最大の注目選手である星稜のエース、奥川恭伸が登場した。佐々木朗希(大船渡)、西純矢(創志学園)、及川雅貴(横浜)が地方大会で敗退したことで“高校生投手ビッグ4”の最後の砦として、これまで以上に高い注目が集まったなか、奥川は期待通りのピッチングを見せた。結果から先に言うと、被安打3、1四球、9奪三振で旭川大高を完封したのだ。この日のピッチングを見たスカウトからは「1年目から一軍のローテーションで期待できる」という声も聞かれた。

 奥川の良さはストレートの速さ、変化球のキレ、コントロールなどあらゆる面があるが、最も大きいのはストライクゾーンで勝負できるというところ。この日の球数はわずか94球だが、それでも9三振を奪っている。ちなみに、石川大会、準々決勝の対遊学館戦では109球で13奪三振、決勝の小松大谷戦でも114球で14奪三振をマークしており、少ない球数でも多くの三振を奪っている。それは無駄なボールが少ないという証明でもある。

 特に素晴らしかったのがやはり基本となるストレート。全94球中ストレートは62球と約2/3を占めていたが、150キロ以上は10球、145キロ以上は51球を数えた。ちなみに平均球速にすると144.1キロで、これはプロの先発投手でも上位に入るレベルである。しかも、ただ速いだけでなくボールの角度があり、それがコーナーいっぱいに決まるのだから、高校生レベルでは金属バットでもとらえるのは困難だ。

 変化球はスライダーが中心だが、立ち上がりこそ少し抜けるボールもあったもののカウントをとるボールと決め球をしっかり投げ分けており、ほぼ完璧にコントロールすることができていた。本人は試合後に反省すべき点がたくさんあると語ったが、5回2死からボールが続いて与えた四球と、9回1死から甘く入ったスライダーを持丸泰輝に後方へ持っていかれたライトフライ以外は、ほぼ完璧という内容だった。今年の選抜でも、強打の履正社(大阪)を相手に被安打3、17奪三振完封という圧巻の投球を見せているが、甲子園の大舞台で2大会続けてここまでピッチングを披露できたことは素晴らしいという一言に尽きる。すでに、中日が「1位指名濃厚」という報道も出ているが、この日のピッチングを見る限りでは複数球団による1位指名の可能性は高いといえる。

 この日は第1試合でもう一人、プロ注目の投手である鈴木寛人(霞ヶ浦)も登場したが、その結果は対照的なものとなった。初回に2本のホームランを浴びて2点を失うと、その後も味方の失策などもあって失点を重ね、3回途中7失点で早々と降板となったのだ。相手が強打の履正社ということもあるが、ここまで早くマウンドを降りるとは想定していなかっただろう。チームも終盤に追い上げを見せたが、6対11で敗れ、鈴木の甲子園はあっけなく幕を閉じた。

 結果だけ見ると、奥川とは比べるまでもないが、それでもプロからの評価が下がるものではない。左肩が開かずに上から腕を振れるフォーム、ボールの角度は素晴らしいものがあり、この日のストレートは最速148キロをマークした。これは今大会で奥川に次ぐ数字である。

 広島の苑田聡彦スカウト統括部長は、鈴木について「茨城大会の決勝を見ましたが素晴らしかったです。今日はその時より少しボールが高くて打たれましたが、素材は素晴らしい。(ドラフトでも)外れ1位くらいあるんじゃないですかね」と語っていた。また他のスカウトも「上(上半身)と下(下半身)が一緒に出るのが気になるけど、もう少し上が出るのを我慢できるようになればもっとよくなる」と話しており、さらなる伸びしろを十分に感じさせる。

 現在の完成度では、奥川の方が一枚も二枚も上だということは間違いない。ただ、持っている“潜在能力”では鈴木も決して負けてはいない。少し細身な体つきを見ても、これからしっかりウエイトが増えてくれば、さらにスケールアップすることも十分に考えられる。高校時代、ドラフトの時点での評価が下でもプロ入りしてから追いつき、追い越した例はいくらでもある。鈴木にはこの経験を大きな糧として、レベルアップした姿をプロで見せてくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月8日 掲載

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