佐々木・奥川を擁して惨敗…野球U-18侍、「高野連主導」ではもう世界と戦えない!

9月1日から韓国で行われた野球のU18W杯。日本代表はグループステージを1位で突破したものの、スーパーラウンドで韓国、オーストラリアに敗れ5位という結果に終わった。佐々木朗希(大船渡)、奥川恭伸(星稜)、西純矢(創志学園)など過去最強と言われる投手陣を擁しながらも、決勝はおろか3位決定戦にも進出することはできなかったわけだが、この結果に対して批判の声は少なくない。では、優勝に向けて日本代表が本当にやるべきことは何だったのか。改めて検証してみたい。

 今大会、大きな話題となったのが野手の選考だ。内野手は7人のうち6人が右投左打のショートで、外野手は2人しか選ばれなかった。20人という限られた人数では複数のポジションを守れることが要求され、ショートを守れる選手は能力が高いことから、今回のような人選になったのは確かに理解できない理屈ではない。結果として、慣れないファーストを守った韮沢雄也(花咲徳栄)に守備のミスが出たことは間違いないが、これもある意味「結果論」である。

選手選考については、そのことよりももっと前段階で重要なポイントがある。それはこの大会は「高校野球」ではなく、あくまで「U18」という年齢のカテゴリーによるW杯ということだ。

出場資格は2001年1月1日から2003年12月31日に生まれた選手にある。つまり、高校卒1年目のプロ野球選手でも、いわゆる「早生まれ」であれば出場資格があるということなのだ。調べてみると、この対象になるプロ選手は下記の5人が該当した。

吉田輝星(日本ハム) 投手  2001年1月12日生まれ
太田椋(オリックス) 内野手 2001年2月14日生まれ
牧野翔矢(西武)   捕手  2001年3月4日生まれ
水谷瞬(ソフトバンク)外野手 2001年3月9日生まれ
市川悠太(ヤクルト) 投手  2001年3月29日生まれ

 人数こそ少ないが、吉田と太田という二人のドラフト1位指名選手が対象となっている。吉田は二軍でも負けが先行しているが、既に一軍でも初勝利をマークしている。彼は、昨年開かれたU18アジア選手権に出場したものの、甲子園の疲れからか本調子ではなく、その悔しさを晴らすことも制度的には可能だったのだ。太田はオープン戦の故障で出遅れたが、二軍では既に主力として結果を残し始めている。また、市川も昨年のU18アジア選手権に出場した経験があり、大きな戦力となっただろう。ここではプロ入りした選手をピックアップしたが、もちろん大学1年生や社会人1年目の早生まれの選手も出場資格を持っている。彼らを選出対象に含めるだけで、選考の幅が広がることは間違いないだろう。

■選考プロセスに改善を


 もう一つ改善したい点が、選考のプロセスだ。今年は4月に代表候補選手を集めての合宿を行ったが、それ以降は大会直前まで全員が集まる機会はなかった。甲子園大会の決勝まで戦った奥川と山瀬慎之助(星稜)は合流が遅れ、二人とも本大会での出場機会は少なかった。また、他にも明らかに調子が上がっていない選手がいたことも確かである。甲子園大会終了からW杯までの日程に余裕がないのであれば、地方大会で敗退した選手から多めに候補選手を選び、早めに合宿を行うことなども一つの方法だろう。

 今回の代表選手も、内々には選出を伝えられており、準備はしてきたと言われているが、より調子の良い選手を選ぶためには選考合宿を行った方がメリットは多いはずである。また、前述したように高校生以外のカテゴリーからも選出できるのであれば、より多くの選手を事前に集めて選考を行うべきではないか。

 ちなみに、今回の選手選考は日本高野連の技術・振興委員会が行ったといわれている。「高校野球」、「高野連」という枠組みを超えて、日本代表として戦うという意識がなかったとしても致し方ないだろう。簡単に言えば、カテゴリーを超えて最適な選考を行い、世界の舞台で戦う体制が日本にはできていないことに尽きる。

 それでも「侍ジャパン」という統一名称で、各年代の代表チームができたことは大きな前進である。世界を舞台に戦う姿を見て、自分も日本代表に選ばれたいという意識を持つ球児、野球少年も確実に増えているはずだ。繰り返しになるが、高野連の主催する高校野球という枠組みにとらわれることなく、もっと広い視野で日本代表というチームを編成していく体制を整えていくことが、今の時代には求められている。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月13日 掲載

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