巨人は「バレンティン」をFAで本当に獲得すべきか? 4つのポイントを分析すると…

 5年ぶりのリーグ優勝を果たした読売ジャイアンツ。昨年オフには丸佳浩、炭谷銀仁朗を獲得するなど積極的に他球団から戦力を補強したが、このオフもその流れが続くかに注目が集まっている。そんななか、獲得が噂されているのが今年8月にFA権を取得したバレンティン(ヤクルト)だ。現時点では、FA権を行使するかどうかは不透明な状況だが、仮に行使した場合は「日本人扱い」になるということもあって、複数球団が獲得に向けて調査を進めることは間違いない。果たして、巨人はバレンティンを獲るべきなのか。現在のバレンティンの状態、過去に巨人入りした外国人選手の成績などから検証してみたい。

 まず改めてバレンティンのこれまでの成績を振り返ってみると、来日9年間で957安打、287本塁打、760打点、打率.273という数字となる(9月16日終了時点)。2015年は左脚太ももの故障でわずか15試合の出場に終わったものの、その他の8年間は全て30本塁打をクリア。2013年には日本記録となるシーズン60本塁打を放ち、3度のホームラン王と1度の打点王に輝いている。シーズン30本塁打8回は、NPBの外国人選手で歴代1位の記録である。今シーズンも下位に低迷するチームにあって30本塁打、90打点をクリアしており、その打力はまだまだ健在と考えられるだろう。

また、過去20年にNPBの他球団から巨人に移籍した外国人野手の移籍前年、移籍1年目の成績をまとめると下記の通りとなった(年齢は移籍1年目の満年齢)。

マルティネス(移籍時:34歳)
移籍前年:133試合 139安打 30本塁打 95打点 4盗塁 打率.283
移籍1年目:83試合 85安打 16本塁打 56打点 1盗塁 打率.324

ペタジーニ(移籍時:32歳)
移籍前年:131試合 146安打 41本塁打 94打点 0盗塁 打率.322
移籍1年目:100試合 107安打 34本塁打 81打点 1盗塁 打率.323

ローズ(移籍時:36歳)
移籍前年:138試合 140安打 51本塁打 117打点 7盗塁 打率.276
移籍1年目:134試合 150安打 45本塁打 99打点 3盗塁 打率.287

イ・スンヨプ(移籍時:30歳)
移籍前年:117試合 106安打 30本塁打 82打点 5盗塁 打率.260
移籍1年目:143試合 169安打 41本塁打 108打点 5盗塁 打率.323

ラミレス(移籍時:34歳)
移籍前年:144試合 204安打 29本塁打 122打点 0盗塁 打率.343
移籍1年目:144試合 175安打 45本塁打 125打点 1盗塁 打率.319

クルーズ(移籍時:32歳)
移籍前年:133試合 128安打 16本塁打 73打点 0盗塁 打率.255
移籍1年目:81試合 75安打 11本塁打 37打点 0盗塁 打率.252

ゲレーロ(移籍時:32歳)
移籍前年:130試合 131安打 35本塁打 86打点 1盗塁 打率.279
移籍1年目:82試合 70安打 15本塁打 40打点 2盗塁 打率.244

 ローズ、イ・スンヨプ、ラミレスが大成功といえ、ペタジーニも悪くない数字を残している。これを見ると補強の成功率は決して悪くないといえるだろう。それを考えると、巨人がバレンティンを獲得する価値は十分にあると考えられるが、話はそう簡単ではない。

 一つは年齢的な問題である。バレンティンは来シーズンで36歳を迎える。過去に移籍してきた選手を見るとローズが同じ年齢だが、その他は30台前半と油が乗り切っている時期だったことを考えると不安は否めない。長期離脱をしたのは2015年だけだが、細かい故障を繰り返している。特に左太もも、左ひざの状態が慢性的に良くないというのは大きな不安材料といえるだろう。

 もう一つは守備の問題だ。昨年までの8年間で外野手として3度リーグ最多の失策数を記録しており、今シーズンも現時点でワーストの6失策を喫している。昨年はファースト転向を検討されたが、外野以上に適性がないと判断され、すぐに断念となった。東京ドームの外野は、他球場に比べて広くないとはいえ、守備に難があるバレンティンを起用し続けるのは巨人にとっても勇気がいる決断となるだろう。


■素行面に問題も…


 さらに、気がかりなのがプレー以外の素行面だ。ここ2年間は大きな問題は起こしていないが、過去には首脳陣やチームメイトとたびたび衝突してトラブルメーカーという印象は根強く残っている。過去に巨人入りした外国人選手もローズやゲレーロなどが首脳陣とトラブルを起こして成績を落としたこともあるだけに、こちらも見過ごせないポイントだ。

 そして、最大の懸念点は巨人外野陣の若返りの遅れに繋がるということである。今季はセンターに30歳の丸佳浩、ライトに37歳の亀井善行、レフトに32歳のゲレーロというのが最も多い布陣で、32歳の陽岱鋼も控えている。ここにバレンティンが加わるとなると、それだけ若手の出番は確実に減ることになる。立岡宗一郎、重信慎之介、石川慎吾といった中堅選手が選手としての旬を逃し、世代交代は遅々として進まないことが容易に予想できるのだ。

 これまでのバレンティンの実績、過去に巨人入りした選手の成績を考えると、来シーズンだけを考えるなら戦力としてプラスになる可能性は高い。だが、その一方で、生え抜きの選手の成長機会を奪い、またトラブルの火種を抱えるというマイナス面も考慮したうえで、獲得を検討すべきだろう。バレンティン、巨人フロント陣がそれを踏まえて、果たしてどのような判断を下すのか。オフの大きな関心事となりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月23日 掲載

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