広島・バティスタの「ドーピング騒動」が日本球界に投げかけた「大きすぎる問題」

 セ・リーグのペナントレースは、巨人、DeNA、広島の三つ巴の戦いが長く続かず、巨人が5年ぶりの優勝を果たした。3連覇中で優勝候補だった広島は、田中広輔や松山竜平といった主力が不調に苦しみ、本来の強さを取り戻せなかった。

 なかでも広島に大きな打撃を与えたのは、103試合に出場、26本塁打、64打点という活躍でチームを牽引していた主砲・バティスタが、日本野球機構(NPB)のドーピング検査で陽性となったため、シーズン途中で離脱したことだろう。

 検体から検出されたのは、クロミフェンとその代謝物であるヒドロキシクロミフェンという物質。世界アンチドーピング機構の禁止物質「ホルモン調整薬および代謝調整薬」として指定されているものだ。

 NPBは9月3日にバティスタに対して、来年3月2日までの6カ月の出場停止処分を科した。彼は球団を通じて、以下のようなコメントを出している。

〈今回、このような事態を招いてしまいました。NPB、広島東洋カープ球団、チームメイト、その他チーム関係者、私を応援してくださっているカープファンの皆様、他球団ファンの皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。同時に、私も大変ショックを受けております。今回禁止物質の陽性反応がありましたが、意図的に摂取していないことをお伝えしたいです。どうか皆様、私を信じてください。私は禁止物質が自分の成績を上げる助けにはならないと考えているため、今までにステロイドや、成績を上げるために使用されるようなその他の薬品を使用したことは一度もありません。これからの私にできる唯一のことは、今後選手としてプレーできるよう毎日一生懸命練習していくことだけです。もしカープ球団に契約を継続してもらえるなら、カープの勝利に貢献し優勝できるよう、全てに対して100%の力で臨み、最善を尽くしたいです。〉

 バティスタは、あくまで意図的ではないと主張している。しかし、巨人のマシソンが自身のツイッターで、NPBの処分は手ぬるすぎるとし、処分期間を長くするべきと主張したことが報じられるなど、球界関係者の間には疑問の声もあがっている。

 では、他の競技に比べて、バティスタへの処分は軽いのか。Jリーグや海外でプレーするサッカー選手を多数クライアントに持つエージェントは、「NPBは及び腰の裁定を下した。本来なら厳罰が下ってもおかしくないです。処分内容を聞いて呆れました」としたうえで、こう話す。

「サッカー界を例に挙げると、ドーピング検査で疑惑が発覚した時点で、まず処分対象になり、試合には参加ができなくなります。そのから審議を行って、事実関係を争うのが通常のケースです。たとえば、1994年に開かれた米ワールドカップで、アルゼンチンの英雄、マラドーナは大会期間中に陽性反応が出ると即座に大会から追放され、最終的には15カ月の出場停止処分という厳罰となりました。こうした事例に比べると、NPBの処分はあまりに軽すぎると思います」

 さらに語気を強めて、こう続ける。

「公表された処分を見れば、有期限の出場停止ですね。さらに、自国を含むウインターリーグ参戦に可能で、年明けから広島の球団施設も使用できると報じられています。
これでは、故障者のリハビリと実質的に変わらないと思います。サッカー界では、同様の事例が起きれば、関連施設の使用を一切認めないでしょう。マラドーナは、処分期間中に引退を決意したのですが、処分が明けると丸々と太っていました。これは、トレーニングすらできなかったということ。『出場停止』という処分は、それくらい何もできなくなるということだと、我々は認識している。だからこそ、風邪薬やサプリメント摂取にも最新の注意を払うのです」

 広島番記者は「制度の問題」を含めたうえで、こう指摘する。

「NPBの裁定は、規定に準じて粛々と行われたものです。出場停止の期限は検出された薬物の種類によるもので、処分は制裁が決定した時点から執行されるため、今回は時期的にほとんどがシーズンオフの期間になってしまったというだけです。つまり、問題は今回の処分内容ではなく、制度自体に不備があると言うべきではないでしょうか。謹慎期間を試合数にするなど、改善すべき点は多いと思います」

 出場停止期間は来年3月2日までで、バティスタは開幕戦からの出場も可能だ。ただ、本当にバティスタはチームに戻ってくるのか。前出の広島番記者が疑問を呈する。

「球団はバティスタが帰国する際、来季以降の契約について『するかしないかわからない』とコメントしています。騒動が発覚した当初は、来季契約に前向きという報道もありましたが、ややトーンダウンした感は否めません。発覚以来、バティスタ本人は球団を通じてコメントを出したのみで、結局一度も公の場に姿を見せることなく、ひっそりと帰国したことも気になります。さらに今回の件の大きな問題は、A検体から陽性反応が検出された後のB検体の検査中に、バティスタが試合に出場し続けたことです。球団は『B検体で陰性だった場合、本人の名誉に関わる』と理由を説明しましたが、さすがに苦しい弁明と言わざるを得ません。今季のバティスタの成績は、浮沈を繰り返した広島の順位に連動していると言っても過言ではなく、他球団のファンの反発も強い。再契約となれば球団自体のイメージダウンは必至で、そんなリスクを犯すとは思えません」

 広島はクライマックスシリーズ(CS)圏内となる3位をなんとかキープしている状況だ。仮に、バティスタが前述したB検体の検査中に出場停止になっていれば、Bクラスに転落してCS進出を逃していた可能性は非常に高い。今回のドーピング問題が日本球界に投げかけた問いかけはあまりに大きすぎるのではないか。

週刊新潮WEB取材班

2019年9月26日 掲載

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