佐々木朗希は千葉へ…高身長右腕「藤浪晋太郎」の“二の舞”を避けられるのか?

佐々木朗希は千葉へ…高身長右腕「藤浪晋太郎」の“二の舞”を避けられるのか?

ドラフト会議でロッテから1位指名を受け、喜ぶ佐々木朗希投手

「令和の怪物」は千葉へ……。10月17日に行われたプロ野球ドラフト会議で、最速163キロ右腕の岩手・大船渡高校の佐々木朗希投手が4球団競合の末、ロッテに指名された。

 佐々木は2年夏の岩手大会で154キロを計測し、現エンゼルスの大谷翔平が花巻東高2年時の最速151キロを上回って注目を浴びた。今年4月のU-18ワールドカップ(W杯)では高校日本代表に選出され、代表合宿の実戦形式の投球で、日本の高校生史上最速となる163キロをマークし、MLBも注目する存在となった。甲子園を目指して挑んだ最後の夏の大会では、岩手大会準決勝まで4試合29イニングを投げて毎回の51奪三振と圧倒的な投球を見せた。しかし、花巻東高との決勝戦では前日の準決勝で129球を投げた影響を考慮され、佐々木が登板することなくチームは2対12で大敗。佐々木の登板回避を決断した大船渡高・國保陽平監督の起用法は社会問題にまでなった。

 ドラフトでは星稜高・奥川恭伸投手、明治大・森下暢仁投手と並ぶ「BIG3」として注目された。佐々木に対しては今年6月に1位指名を公言していた日本ハムを筆頭に、西武やロッテも事前に1位を公表し、歴代最多の8球団を超える入札も予想されたが、蓋を開けてみれば西武、楽天、ロッテ、日本ハムの4球団にとどまった。

 抽選では井口資仁監督が4人の中で2番目にくじを開き「交渉権獲得」の文字を確認して右拳を振り上げた。昨年も3球団競合の末、大阪桐蔭高・藤原恭大外野手を引き当てた井口監督は「プレッシャーをかけられていたのでホッとした。ドラフトで(当たり)くじを引いた夢を見たので、引けるだろうなと思った」と笑顔を見せた。

 指名決定後の記者会見で佐々木は「ホッとしている。(ロッテは)12球団で一番応援がすごいという印象。日本一の投手になれるように、チームを優勝に導けるような選手になりたい」と喜びを表した。

 会見で佐々木は「今ある日本最速は超えたい」と、大谷が日本ハム時代にマークした165キロの更新を宣言した。しかし、岩手大会決勝での登板回避から、秋に行われたU-18W杯では韓国戦に先発したものの、右手中指の血マメの影響により、わずか1回19球で降板と身体面での不安も露呈した。野球強豪校ではない県立高校の出身で、プロの厳しい練習に耐えられないのではないかという声も聞かれる。1位入札の球団が予想外に少なかったのも、不安材料のひとつと言えるかもしれない。

 佐々木にとってロッテからの指名は吉と出るのか、凶と出るのか。ドラフト情報を研究する団体『プロアマ野球研究所(PABBlab)』主任研究員で、野球ライターの西尾典文氏は「デメリットはあまり感じない」と不安を一蹴する。

「ロッテは種市篤暉や岩下大輝、二木康太など、高卒の右投手が育っています。近年は野手も含めて高卒の選手を多く獲得しているので、安心して見られますね。巨人や阪神などの人気球団とは違い、注目度もほどほどのロッテは、佐々木にとっていい環境なではないでしょうか。活躍するために必要なことは焦らないこと。体ができれば大丈夫だと思うので、無理をしないことですね」

 ロッテを長年取材するスポーツライターも「ロッテは環境が整っている」と太鼓判を押す。

「コンディショニングや育成方法を含めて、ロッテの投手育成は優れていると言えます。特に吉井理人一軍投手コーチが筑波大大学院でコーチング理論を学んでいることが大きい。体力面に不安があると言われている佐々木を、イチから鍛えていくことになるでしょうし、余程のアクシデントがない限りは、故障のリスクも低いと思います」

 現在のロッテの投手事情も佐々木にとって好材料だと前出のスポーツライターは続ける。

「エース格の石川歩や涌井秀章から若手まで、右投手が豊富にそろう投手陣で、早い段階から無理に佐々木を投げさせる必要がない。状況的にも、長期的視野での育成が可能な環境と言えます。高卒の長身右腕と言えば、大阪桐蔭高から阪神に入団した藤浪晋太郎がいますが、彼は1年目から先発ローテに入ってフル稼働した結果、近年は急激に成績が落ち込んでしまった。藤浪の“二の舞”を避けられるという意味でも、佐々木はいい球団に入ったと言えそうです」

 佐々木の前途洋々と言えるのか。ベテランのロッテ担当記者が、過去のドラフトを振り返りながら、不安を口にした。

「過去最多の入札数には及ばなかった佐々木ですが、ロッテで過去最多と言えば、古くは90年の小池秀郎(当時亜細亜大)が思い出されます。当時は川崎が本拠地で、不人気球団だったロッテは小池に入団拒否されたわけですが、考えてみれば、ドラフトで目玉と言われた選手の指名は小池が最後で、特に、怪物と呼ばれるような高校生投手が入団した記憶が皆無に等しい。佐々木のような球界の未来を担う可能性がある選手を育成した経験は、今の球団にはありません」

 過去のドラフトを振り返ると、87年に伊良部秀輝(当時は尽誠学園)、88年に前田幸長(当時は福岡第一)を最後に、高卒投手のドラフト1位選手はほとんど見当たらない。05年から07年に柳田将利、大嶺祐太、唐川侑己を1位指名しているが、この時期は大学・社会人との分離ドラフトとなっている。平成に入って以降、高卒投手のドラフト1位は00年の田中良平(当時は加賀高)と、自由枠を使わなかった03年の内竜也(当時は川崎工高)のみで、いずれもドラフトの目玉とまではいかない存在だった。

 前述の担当記者が言う。

「佐々木の入団で来季のロッテは、春季キャンプからちょっとしたフィーバーになることが予想されます。激増するはずの報道陣の対応や営業面でも、これまでに経験したことがないことばかりになるはず。日本ハムは大谷獲得の際に、独自の育成プログラムを作成し、それに基づいて清宮幸太郎や吉田輝星も育成されています。ロッテは現場レベルの育成面では問題がないとしても、それ以外の部分も含めたプランが確立されているのでしょうか」

“藤浪の二の舞”などはもってのほか。令和のプロ野球全体を考えても、ロッテの責任は、とてつもなく大きなものとなる。

山村智雄(野球ライター)

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月18日 掲載

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