巨人、総額50億円の「大型補強」を検証 成功だったのか、それとも…

巨人、総額50億円の「大型補強」を検証 成功だったのか、それとも…

巨人・丸佳浩(Jtwya/Wikimedia Commons)

「のびのび野球」を合言葉に原辰徳監督が3度目の就任をはたした巨人は、5年ぶりのV奪回を目指し、FAやトレード、新外国人獲得など総額50億円規模ともいわれる大型補強を行った。その結果、2019年は日本一こそ逃したものの、2位・DeNAに5.5ゲーム差をつけ、V奪回に成功した。

 成功組の代表格は、広島からFA移籍してきた丸佳浩だ。カープの3年連続Vの原動力となった打線のキーマンは、移籍1年目も打率2割9分2厘、27本塁打、89打点と3番打者として安定した成績を残した。そんな丸が独特の“あっち向いてホイ打法”で、V目前のチームに大きな1勝をプレゼントしたのが、9月12日のDeNA戦(横浜)だった。

 3対1とリードした4回表1死二塁、丸は2ストライクから武藤祐太の真ん中高めストレートをコンパクトに振り抜いたが、相手バッテリーも審判もスタンドのファンも右翼席上段目がけて飛んでいく打球をひたすら目で追いつづけている最中、丸の顔は正反対の三塁ベンチ側を向いていた。ネクストサークルの岡本和真も「(顔の)余韻が凄いっすね」と驚いた珍打法は、まさに“あっち向いてホイ”のポーズ、そのまんまだった。さらに6対3の8回表にも同じ打法から左越えにダメ押し2ラン。2位・DeNAとの直接対決を8対5で制した巨人はマジックを「7」に減らした。

 ちなみにこの打法は、ツイスト打法と呼ばれ、チームメートの阿部慎之助が取り入れていたもの。打つ瞬間に腰を逆方向に捻ることで、体を開かずに最短距離でバットを出すことができるのが特徴だ。9月初めに22打数2安打と打撃不振に陥った丸が、阿部に勧められて、「わらにもすがる思いで始めてみた」のがきっかけだった。導入後、この日を含めて4試合で15打数7安打と絶大な効果に、丸自身も「ここまで結果が出るとは。ビックリ」と目を丸くした。

 しかし、ソフトバンクとの日本シリーズでは13打数1安打の打率0割7分7厘に封じ込められ、シリーズワーストの12三振を喫した広島時代の前年同様、“逆シリーズ男”というありがたくない異名を頂戴した。

「(12打数無安打のあと)最後に1本出たけど、あれを来シーズンにつなげないと」の反省を生かし、2020年は“シリーズ男”と呼ばれたいところだが……。


■失敗組は…


 一方、失敗組の代表格は、退団したマギーの穴埋めに獲得したビヤヌエバだ。前年はパドレスの正三塁手として20本塁打を記録。右の長距離砲と期待されたが、シーズン開幕後、クローズアップされたのは、打撃よりも走塁の際のラフプレーだった。

 4月9日の中日戦(ナゴヤドーム)、2対1とリードした巨人は、6回表1死一塁で小林誠司が遊ゴロを放つ。打球を処理した京田陽太が6-4-3の併殺を狙ってセカンド・堂上直倫に送球した直後、一塁走者のビヤヌエバがスライディングをしながら、二塁に突っ込んできた。左足を払われる形になり、バランスを崩して転倒した堂上は送球できなくなり、一塁はセーフに。

 2019年から新たに併殺崩しの危険なスライディングもリクエストの対象になり、与田剛監督がリクエストを要求。リプレー検証の結果、ビヤヌエバにはアウトが宣告されるとともに、「もう一度やったら退場」と警告も与えられた。

 しかし、同21日の阪神戦(甲子園)で、ビヤヌエバはまたもや問題行動に出る。4回表無死一塁、岡本の遊ゴロの際に二塁に滑り込むと、ベースに立ちはだかるようにして両手を広げる妨害行為で、糸原健斗の悪送球を誘発。しかも、このプレーに対し、審判団は阪神側のリクエスト要求を認めず、2つの進塁権を与えて、ビヤヌエバの生還を認めたため、不服とした阪神は、NPBに意見書を提出した。 

 これに対し、NPB側は「今後は守備妨害もリクエスト対象にする」と回答。期せずしてリクエストの適用範囲拡大に貢献する形になったビヤヌエバだが、肝心の打つほうでは、打率2割2分3厘、8本塁打に終わり、たった1年で退団。その後、日本ハムが巨人時代の年俸(推定2億2千万円)より格安の8千万円プラス出来高で契約した。2020年シーズンに活躍すれば、皮肉にも「長く日本で、巨人で戦ってほしい」と原監督が願ったことが、半分だけ叶うことになるのかもしれない。

 このほかの補強組では、西武からFA移籍の炭谷銀仁朗が58試合に出場し、打率2割6分2厘、6本塁打と貢献も、“3年総額6億円の控え捕手”では投資に見合わない。打撃を期待され、オリックスから獲得した中島宏之は打率1割4分8厘、1本塁打、新守護神候補だったクックも0勝2敗6セーブ、防御率4.80といずれも結果を出せず、メジャーから復帰の岩隈久志に至っては1試合も1軍登板できずに終わった。“50億円効果”と呼ぶには、寂しい現実である。

 シーズン後、巨人はFA宣言した美馬学(楽天→ロッテ)、鈴木大地(ロッテ→楽天)の獲得に動いたが、いずれも断られ、“巨人ブランド”だけでは、補強が難しくなったことを印象づけた。これまでにも、村田修一のようにFAで獲得した選手がまだ働けるのに戦力外通告を受けたり、満足に活躍の場を与えられないなどの前例から、FA組が「自分が能力を発揮できる球団でプレーしたい」と“巨人以外”を考えるようになった結果ともいえる。

 日本シリーズでバランス良くチームを強化したソフトバンクに4連敗した現実をみると、50億円の大型補強が成功だったとは言い切れない。2020年シーズンは、マネーゲームだけに頼らない「育成しながら優勝」の方針を一層推し進める必要性に迫られている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」上・下巻(野球文明叢書)

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月1日 掲載

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