楽天、監督は更迭、生え抜き2人は移籍… 2020年の注目は「古巣との因縁対決」

楽天、監督は更迭、生え抜き2人は移籍… 2020年の注目は「古巣との因縁対決」

平石洋介前監督

 球団史上初の生え抜き監督で、松坂世代、及び1980年代生まれの世代でも初の快挙となる平石洋介監督が指揮をとった2019年の楽天。則本昂大、岸孝之の両エースを故障で欠きながら、開幕直後の4月10日に単独首位に浮上すると、6月下旬まで首位争いを繰り広げ、前年最下位のチームを見事2年ぶりのAクラス(3位)に押し上げた。だが、CS敗退直後の10月11日、球団は三木肇2軍監督の新監督就任を発表し、平石監督はたった1年で実質解任。ファンの間からも「なぜ?」の声が上がった。さらに、入団以来チームをずっと支えてきた生え抜きのベテラン2人もシーズン後、相次いでチームを去った。

 テレビやネットで大きな反響を呼んだ心温まるシーンが見られたのが、5月2日のソフトバンク戦(福岡ヤフオクドーム)だった。1点をリードされた楽天は、5回裏2死満塁のピンチに古川侑利が踏ん張り、松田宣浩をバックネット方向への捕邪飛に打ち取った。だが、打球を追う捕手・嶋基宏に、後方の牧田匡平球審が行く手を遮る形になった。行きがかり上、嶋も立ち止まるわけにはいかない。牧田球審は突き飛ばされるようにして仰向けに倒れ込み、頭と背中を強打した。

 嶋はそのまま打球を追いつづけてキャッチすると、すぐさま牧田球審のもとに駆け寄り、「大丈夫ですか?」と心配そうに抱きかかえた。幸い大事に至らず、牧田球審は苦笑いしながら起き上がり、「アウト!」をコールしたあと、グラウンドに落ちていた帽子とマスクを拾い上げた。熱戦のさなかの珍ハプニングに、スタンドから笑いが起き、ほのぼのとしたムードも漂った。

 嶋の紳士的対応は、ネット上でも「流石、嶋」「嶋王子が牧田姫を抱えた」など大反響を呼び、同5日の「サンデーモーニング」(TBS系)に出演した張本勲氏も「“あっぱれ”でしょう。こういうプレーを見ると、うれしいね」と絶賛した。

 だが、その後、嶋は腰痛の影響で打率2割9厘、盗塁阻止率1割未満と攻守に精彩を欠き、減俸制限を大幅に超えるダウン提示を受けると、「人生一回きりなので勝負したい」と自由契約を申し出、ヤクルトに移籍。「自分の中で宝物にしたいと思います。本当にいい13年間だった」の言葉とともにチームを去った。

 2011年の東日本大地震に際し、「見せましょう、野球の底力を」と復興支援の名スピーチを行ったナイスガイの退団は、みちのくのファンにとっても残念な一事だった。


■再出発の2020年


 25年ぶりの完全試合がもう少しで実現するところだったのが、7月19日のソフトバンク戦(楽天生命パーク宮城)だ。楽天の先発・美馬学は、最速146キロの直球と低めに決まる変化球のコンビネーションで、ソフトバンク打線を8回までパーフェクト。1994年5月18日の槙原寛己(巨人)以来の完全試合まで「あと3人」となった。もし達成すれば、1950年にプロ野球史上初の完全試合を達成した藤本英雄(巨人)の32歳1カ月を更新する32歳10カ月の史上最年長記録にもなる。

「(記録を)意識して」9回のマウンドに上がった美馬だったが、先頭の明石健志にフルカウントから痛恨の四球を許し、記録ストップ。さらに代打・栗原陵矢に左前に初安打を許したあと、2死から上林誠知に右越え三塁打され、完封まで逃してしまった。

 2安打1四球1失点の完投勝利を収めた美馬は「(パーフェクトを)やっちゃうんじゃないかと思っていたんですけどね。惜しかったです」と残念そう。

 楽天にとっては、2014年7月15日のオリックス戦で、辛島航、福山博之の継投で試合開始から8回2死まで無安打に抑えた最長記録を1/3イニング上回る新記録だったが、シーズン後、美馬はこの記録を置き土産にロッテにFA移籍し、9年間在籍したチームを去った。

 1回表裏だけで1時間を超えるノーガードの打ち合いが演じられたのが、6月22日のDeNA戦(横浜)だ。1回表、楽天は茂木栄五郎、島内宏明の連続二塁打で1点を先制したあと、ブラッシュの左翼線二塁打、ウィーラーの右前タイムリーなどで6対0と突き放した。

 ところが、その裏、DeNAも打者12人の猛攻で7対6と一気にひっくり返す。両チームが初回に6点以上を取り合ったのは、1989年10月7日にヤクルトが8点、中日が6点を取って以来30年ぶりの珍事だった。

 楽天は8対9の7回に山下斐紹の左越え2ランで逆転すると、8回に1点を加え、4時間7分の大乱打戦を制した。平石監督は「初回に6点取って負けたらダメでしょ」と苦笑したが、この勝利で39勝29敗の貯金10とし、2位・ソフトバンクに1.5ゲーム差の首位をキープ。5月15日の日本ハム戦(楽天生命パーク宮城)では、球団史上初の8点差逆転勝ちを収めるなど、この時期のチームには神がかり的な勢いがあった。

 7月以降失速し、最終順位こそ3位に終わったものの、CSファーストステージ初戦でソフトバンクに先勝するなど、監督1年目としては大健闘と言える成績だったのに、待っていたのは、2020年から新設される「2軍統括」への配置転換という“降格人事”だった。

 このポストを断り、楽天の第1期生として15年間在籍したチームを去った平石前監督は、その後、3年連続日本一を達成したソフトバンクの1軍打撃兼野手総合コーチに迎えられた。

 相次いで楽天を去った指揮官と2人のベテランが、それぞれの立場は違うものの、他球団で再出発する2020年。古巣との因縁対決も注目される。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」上・下巻(野球文明叢書)

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月6日 掲載

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