【新型コロナ】「センバツ中止」だけじゃない 「ドラフト戦線」も大混乱で最も痛手なのは……

【新型コロナ】「センバツ中止」だけじゃない 「ドラフト戦線」も大混乱で最も痛手なのは……

中止が決定されたセンバツに出場する予定だった、ドラフト候補の明石商・ 中森俊介(撮影・西尾典文)

 3月11日、第92回選抜高校野球大会の臨時運営委員会が開かれ、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止が発表された。選抜高校野球が行われなかったのは太平洋戦争で中断された1942年〜1946年以来初のことである。選抜大会の中止に代表される今回の騒動はアマチュア野球界にも大きな影響を与えている。直結しているのはプロ球団による有望選手のスカウト活動だ。今回の事態が今年のドラフト戦線にどのような影響を与えるのか、様々な大会、カテゴリーから探ってみたい。

 まず、冒頭で触れた選抜高校野球だが、『春はセンバツから』という言葉があるように、ドラフト戦線が本格化するのもこの大会からだ。例年全球団のスカウト陣がバックネット裏に陣取り、全出場校が登場するまで連日視察するというのが恒例となっている。有力選手については昨年秋の時点で当然各球団チェックを行っているが、高校生の場合は一冬超えて大きく成長することは少なくない。その成長度合いを確認する絶好の機会を失うことはプロ球団のスカウトにとって大きな痛手と言えるだろう。

 もうひとつの影響は、選手を評価する判断についてである。普段、プロ球団のスカウトは全国各地に散らばって特定のエリアを担当しており、有力候補となると部長、管理職クラスも足を運ぶというケースが多い。そして甲子園大会に全スカウトが集結する意味合いは、多くの目で選手を確認する、いわゆる『クロスチェック』にある。一人の目だけではどうしても偏った部分が出てくることもあるため、それを多くの目で見て評価を固めようということだ。甲子園大会に限らず大きな大会や、上位候補の注目選手を視察する場合にも行われている。甲子園大会でのもうひとつの大きなポイントは、その選手の大舞台での強さを判断することだ。プロ野球は毎日大観衆の前で試合が行われており、選手にかかるプレッシャーも並大抵のものではない。そんな環境でも実力を発揮できる選手かということを、甲子園でのプレーから判断したりもしているのだ。

 ここまではプロ球団側の視点からの影響を述べたが、最も痛手を被っているのは選手自身である。選抜高校野球が中止となったことで、それだけ大きなアピールの場を失うということになるのだ。そして、その影響はもちろん高校野球だけではない。今年に関しては、今のところ最も大きいのは社会人野球の選手達ではないだろうか。社会人野球の全国的な大会は都市対抗野球と日本選手権の二つである。例年、都市対抗は7月、日本選手権はドラフト後の11月に行われているが、今年は東京五輪の影響でこの日程が入れ替わることとなった。それだけであれば影響はないのではないかと思うかもしれないが、都市対抗には「補強選手制度」というものがあり、本大会の出場を逃したチームの選手も、同じ地区のチームに補強されて出場することが可能である。このため、ドラフト候補になるような有力選手は、毎年大半が本大会に出場しているが、それがドラフト後となったことで、最大のアピールの場を失う選手も少なくない。また、今年は7月に行われる日本選手権の出場権は各地区連盟が主催する『日本選手権対象大会』の優勝チームに与えられ、残った出場枠を各地区の最終予選で争う形となっている。

 そして、今年最初の日本選手権対象大会である東京スポニチ大会は3月12日から行われる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で既に中止が発表されている。ドラフト対象となるカテゴリーの中では最も早く開催される大きな大会であり、毎年多くのスカウトも視察しているだけに、出場予定だった選手にとっては貴重なアピールの場を失ったことになる。

 さらに4月に入っても新型コロナウイルスの騒動が収束しなければ、春のリーグ戦が始まる大学野球にも影響が出てくることも十分に考えられる。選手にとってはアピールの場がどんどん減ることは間違いないだろう。新型コロナで“大混乱”の様相を呈してきたドラフト戦線……数少ない大会でいかに自分の実力を発揮できるのか。今年のドラフト候補は例年以上に勝負強さが求められることになりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年3月14日 掲載

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