オリックス、「イチロー」の以来復活なるか…育成重視に舵を切った「ドラフト戦略」に光明

オリックス、「イチロー」の以来復活なるか…育成重視に舵を切った「ドラフト戦略」に光明

太田椋(Orixbaseballclub/Wikimedia Commons)

 マイナーリーグの下部組織が充実している米国では、常に3年後、5年後のオーダーを見据えながら選手の編成、補強を行っている。日本のプロ野球では登録枠数の問題から、そこまで選手を抱えることはできないが、ソフトバンクなどを筆頭に長期的なスパンで選手を獲得している球団が出てきていることも確かだ。そこで現在所属している選手で5年後のオーダーを組んだ時にどんな顔ぶれになるかを考えながら、各球団の補強ポイントを探ってみたい。今回、取り上げる球団はパ・リーグで最も長く日本シリーズ進出から遠ざかっているオリックスだ。イチローが主力だった“栄光の時代”を取り戻せるか。

・5年後の野手(※年齢は2025年の満年齢)
捕手:若月健矢(30歳)
一塁:頓宮裕真(29歳)
二塁:宜保翔(25歳)
三塁:中川圭太(29歳)
遊撃:太田椋(24歳)
左翼:佐野皓大(29歳)
中堅:宗佑磨(29歳)
右翼:西浦颯大(26歳)
DH:吉田正尚(32歳)

・5年後の先発投手
K−鈴木(31歳)
竹安大知(31歳)
山岡泰輔(30歳)
田嶋大樹(29歳)
山本由伸(27歳)
榊原翼(27歳)

・5年後のリリーフ陣
近藤大亮(34歳)
山田修義(34歳)
張奕(31歳)
漆原大晟(29歳)
吉田凌(28歳)
本田仁海(26歳)

 野手で中心となるのはやはり吉田正尚になるだろう。プロ入り当時は腰痛に悩まされたが、過去2年間は全試合フル出場を果たし、打率、本塁打、打点全てにおいて一流の成績を残して見せた。フルスイングの豪快なホームランの印象が強いが、プロ4年間の通算打率が.315というのは見事という他ない。チームの野手では最も重要な選手であり、国内FAで球団を去らないようにすることが大きな焦点と言える。

 それ以外のメンバーは、現在のレギュラーから入れ替わる部分が多いと予想した。若月と中川はレギュラークラスと言えるが、それ以外はまだまだ実績のない選手たちで不安要素は多いものの、将来性が豊かで楽しみな選手も少なくない。

 まず、期待したいのが今年高校卒2年目となる宜保、太田の二遊間コンビだ。宜保は昨年ルーキーながら二軍のレギュラーに定着。打率は.227と低いものの、チームトップタイの85安打、チーム2位の13盗塁を記録し、一軍でも初安打をマークしている。体は大きくないが、抜群の運動能力が光るリードオフマン候補だ。

 太田は昨シーズン、オープン戦で死球を受けて骨折して出遅れたが、夏場以降はレギュラーに定着。ホームランがなかなか出ないウエスタン・リーグにあって、64試合で6本塁打と非凡な長打力を見せている。この二人が、吉田正尚に続くような存在になれれば、チームの将来は一気に明るくなってくるだろう。

 少し気になるのが捕手だ。若月は守備力が評価できるが、打力は明らかに物足りない。それ以上に若月より若い捕手となると、一塁に予想した頓宮と、育成選手しかいないのが現状だ。昨年のドラフトでは、捕手の好素材が多かったにもかかわらず、育成で鶴見凌也を獲得しただけだった。早めに若月を脅かすレギュラー候補の好素材を補強したいところだ。

 投手陣は、現在の二枚看板である山岡と山本の二人にまだまだ若さがあるというのが最大の強みだ。ともに打者を圧倒するピッチングを見せ、貯金を作れるタイプというのも非常に大きい。三番手以降は少し落ちるが、ドラフト上位で獲得した田嶋とK−鈴木も控えており、彼らが順調に成長してくれば、さらに強力な先発ローテーションになるだろう。

 その一方で、リリーフ陣はディクソン、増井浩俊、海田智行といったベテランの主力が多く、現在の布陣から大きく入れ替わることが予想される。名前を挙げた中で抑え候補として期待したのが漆原だ。育成ドラフトでの入団ながら、一年目から二軍で抑えを任せられると、23セーブをマークして、見事に支配下登録を勝ち取った。150キロを超えるストレートは数字に見合う勢いがあり、決め球となる落ちるボールも操る。今年は一軍でも、しっかり実績を残して飛躍の年にしたい。

 もう一人楽しみなのが、こちらも育成から這い上がってきた張だ。外野手でプロ入りして投手に転向したという“変わり種”だが、そのフォームはとても元外野手とは思えない。昨年オフに行われた世界野球「プレミア12」では台湾代表として活躍し、先発投手としてベストナインにも選ばれている。先発に入れても当然面白いが、チーム事情と適性を考えると、リリーフとして大成する可能性は十分にあるだろう。

 阪急時代から伝統的に社会人出身の選手が多く、その伝統は長く続いていたが、ここ数年は明らかに方針転換した印象を受ける。昨年もドラフト上位で高校生二人を指名し、育成ドラフトでもソフトバンクを上回る選手を獲得した。ファームの本拠地を充実させ、多くの育成選手から一軍戦力を輩出させようという試みはソフトバンクを追随するものである。今年はアダム・ジョーンズという大物外国人を補強して即効性を求めたが、その一方で先を見据えた編成にも取り組んでいることは間違いない。まだまだ足らない部分は多いが、これからどうなっていくか、楽しみなチームになってきたことは間違いないだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月24日 掲載

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