巨人、期待の新戦力「湯浅大」の健大高崎時代、67試合で盗塁68という韋駄天

巨人、期待の新戦力「湯浅大」の健大高崎時代、67試合で盗塁68という韋駄天

湯浅大

■ドラフトでは8位指名


 ついにブロ野球が開幕した。中でもセ・リーグは、昨年王者の読売ジャイアンツが開幕から4連勝を飾るなど、スタートダッシュに成功した形となっている。

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 そんな好調なチームにあって、開幕1軍登録された選手の中で93番というひと際大きな背番号を背負っている選手がいる。内野手の湯浅大(ゆあさ・だい)である。

 今年プロ3年目の湯浅は右投げ右打ちで主にショートをこなす、ヤングジャイアンツの中でも注目の選手である。ちなみに、同じく若手の期待株である外野手の山下航汰(残念ながら現在は骨折してしまいリハビリ中)は同じ高校の1学年後輩だ。

 山下の先輩にあたる湯浅は、昨シーズンは2軍で、前年を大きく上回る67試合に出場し、打率2割4分をマークした。

 過去2年間は1軍公式戦への出場はなかったものの、今季はさらなる飛躍が期待されていた。

 そして湯浅はその期待にいきなり応えた。オープン戦では16試合に出場して23打数9安打で打率3割9分1厘という高打率をマークしたのだ。

 9安打のうち二塁打2本、本塁打1本と長打力の面でも成長をみせることができたのも大きかった。

 さらに開幕前の6月2日から再開された練習試合でも“見せ場”を作った。10日までの間に2本塁打を放つなど、開幕一軍に向けて猛アピールしたのだ。

 結果的に再開後の練習試合では10試合に出場して、25打数8安打の打率3割2分、2本塁打、8打点という堂々たる成績を残している。ついに念願の開幕1軍を勝ち取ったのである。

 そして守ってもショートをこなしているだけに、今や球団側は“ポスト・坂本勇人”、“坂本勇人の後継者”の最有力候補と考えているようだ。

 とはいえ、ファームの試合から真剣に観ているような熱心なG党には“釈迦に説法”となってしまうかもしれないが、ライトな読売ファン、ましてや他球団のファンにしたら、「湯浅大? 誰?? 聞いたことない」という選手に違いない。そこでここからは、この湯浅大という選手の経歴について詳しく語っていきたいと思う。

 湯浅は、早稲田実業(西東京)の清宮幸太郎(北海道日本ハム)と履正社(大阪)の安田尚憲(千葉ロッテ)という、東西の高校生スラッガーが注目されていた2017年のドラフトで指名された。

 だが、1位指名された2人とは対照的に、湯浅の指名順位は8位。ほとんど注目されることもなかった。


■右手首骨折の悲劇


 とはいえ、プロに指名されたのには、“武器”があったからこそ。彼の場合、172センチ70キロと小柄ではあるが、50メートル6秒フラットという脚力が彼の最大の魅力であった。

 湯浅は高校進学の際に、その脚力を活かすべく、まさにベストの選択をしている。15年春のことだった。

 進学したのは地元群馬の高崎健康福祉大高崎で、高校野球界では“健大高崎”の愛称で知られている強豪校だった。

 加えて健大高崎といえば、徹底した機動力で相手チームをかく乱する、“機動破壊”を得意戦法としている。まさに湯浅は、チーム戦略にピッタリとフィットした選手だったのだ。

 そして、その才能が早くも認められる。1年夏の県予選から控え選手としてベンチ入りを果たしたのだ。

 その夏、夏の県大会を勝ち抜いた健大高崎は見事に甲子園出場を果たすことに。だが、惜しくも湯浅は甲子園でのベンチ入りメンバーからは漏れてしまうこととなる。

 だが、チームが夏の甲子園で3回戦敗退し、新チームが結成されると、すかさずショートのレギュラーの座を獲得した。

 秋の県予選は準決勝で、翌2年夏の県予選は決勝戦で敗退と、惜しくも甲子園にはあと一歩届かなかったが、主将・1番・ショートの座を任された2年秋には県大会準優勝と関東大会ベスト4入りを達成し、17年春の第89回選抜大会への出場を果たした。

 ちなみに、秋は公式戦8試合で23打数11安打9四死球の打率4割7分8厘をマークし、盗塁数もチーム内2位の8盗塁を数えている。まさにチームの絶対的リード・オフ・マンとして八面六臂の大活躍ぶりであった。

 しかし、好事魔多し。肝心の春の選抜を直前に控えた17年2月中旬に右手首を骨折してしまう。手術を受けたものの、その影響もあって、一時戦線を離脱することとなってしまった。

 その後、リハビリを積み、ケガ明けで選抜に挑むことに。だが、とてもレギュラーとしてフル出場できる状態ではなく、準々決勝までの4試合(延長15回引き分け再試合含む)のうち、代走で1試合、守備固めで1試合の出場に留まった(打撃成績は記録されていない)。そしてチームもベスト8で敗退を喫してしまった。

 さらに大会終了後に、骨折した箇所の骨の再手術を受けるハメになった。これにより、再び戦線離脱を余儀なくされてしまったのである。

 それでも3年の夏は県予選3回戦から7番・ショートで待望の実践復帰を果たした。するとそこからの4試合で16打数7安打と打ちまくり、なんと打率4割3分8厘、4打点の大活躍を見せたのである。


■実は開幕戦でも勝利に貢献


 だがチームは2年連続でまたも宿敵・前橋育英の前に4-6で涙を飲み、最後の夏を甲子園出場という形で飾ることは叶わなかったのであった。

 湯浅の甲子園出場は3年間で1回のみ。しかもケガのため、満足にプレーすることができなかった。

 それでもプロのスカウトは走・攻・守3拍子揃った好選手と評価、一躍ドラフト指名候補選手となったのである。中でも実際に指名した読売のスカウトの1人は、湯浅をこう評していた。

 いわく「守備範囲が広く、フットワークが良く安定したスローイングで打者走者をアウトに仕留めるなど、脚力を活かした守備力が特徴です。ベースワークも上手く、積極的な走塁も魅力ですね。リーダーシップがあり、チームを盛り上げる存在の選手でもあります」

 特に出塁すれば、すかさず盗塁する姿勢が高くされた。例えば高2の秋は公式戦と練習試合を合わせた全67試合で68盗塁(公式戦では8試合で8盗塁)を決めたほどである。

 さて、念願の開幕1軍を勝ち取った湯浅は、6月19日に東京ドームで行われた開幕戦、対阪神タイガース戦で記念すべきプロ初出場と初打席を記録している。

 1-2と1点を追う7回裏。この回、読売は1死2塁から1番・吉川尚輝がライトスタンドへ鮮やかな逆転2ランを放ち、3-2と試合をひっくり返すことに成功する。

 そして、そのまま逃げ切って勝利したが、この吉川の逆転弾をお膳立てしたのが、湯浅である。

 先頭の代打・石川慎吾が右前打で出塁した無死1塁の場面だった。ここで9番・先発投手の菅野智之の代打として登場し、見事に送りバントを成させたのである。

 プロ初打席でかなり緊張する場面での起用であったが、それを感じさせない仕事ぶりだった。

 その翌日には、自慢の快足でチームの勝利に貢献している。3-1とリードした7回裏無死1、3塁の場面で1塁代走に起用されると、小川一平―原口文仁の阪神バッテリーから二塁盗塁に成功し、プロ初盗塁を記録したのだ。

 この直後に追加点となる2番・坂本勇人の左前適時打が飛び出しただけに、この盗塁成功は大きかった。

 ところが、1番・セカンドで記念すべきプロ初の先発出場を果たした6月21日の阪神戦では2打席連続空振りの三振を喫してしまう。

 そのあとの広島東洋カープとの試合でも、2打席ノーヒット1三振と、そのバットから快音は聞かれず、わずか開幕5試合で屈辱の2軍落ちである。

 あまりにも早すぎる原辰徳監督の決断であった。だが、溢れるセンスと才能、そして素質の持ち主だけに、ファームで揉まれてさらに力をつけて、1軍に戻ってくるはずだ。

上杉純也

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月4日 掲載

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