プロ野球「有観客開幕」、こっそりアルコールにハイタッチ…応援団入場も懸念

プロ野球「有観客開幕」、こっそりアルコールにハイタッチ…応援団入場も懸念

無観客から5000人、全体の50%に応援団と緩和されていく

 新型コロナウイルスの感染防止のために無観客で開催されていたプロ野球に7月10日、観客が戻ってきた。政府によるイベント開催制限の緩和を受け、試合には5000人を上限に観客を受け入れるようになり、8月以降は人数制限の撤廃も想定されている。球場での応援では大声や肩組、ハイタッチが禁止されるなど多くの制限が設けられ、各球場では密を避けるために間隔を空けての指定席が用意されたが……いざ「有観客開幕」となってから「3密」が各地で散見された。一歩間違えば新型コロナ感染拡大の温床にもなりかねない大勢での野球観戦。本当にこのまま有観客で実施し、人数を増やすことに問題はないのだろうか。

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 1日あたりの新型コロナ感染者が新たに430人確認され、東京都は243人と新規感染者数が過去最多を更新した7月10日。ほっともっとフィールド神戸球場(神戸市)には、くしくも、いずれも東京を本拠地とする巨人とヤクルトの試合を心待ちにしたファンが大勢駆けつけた。

 だが、観客が球場入りした16時以降、しばらくは小降りだった雨が18時のプレーボール約10分前から土砂降りに。指定席に座ったまま傘を差したり雨ガッパでしのいだりするファンもいたが、内野席にいた大勢のファンが雨宿りできる後方のスペースに移動し、付近は完全に3密状態でごったがえした。試合開始が遅らされている間、近くの甲子園球場ではすでに阪神―DeNA戦は始まっていたため、密集の中で「甲子園はやっとるんやから早くやれ」「さっさと選手出てこい」などと大声の怒号も飛び交っていた。

 元々は、密を避けるために数席ずつ空けた指定席が用意されていたようだが、そういった細かな対策もむなしく、内野席の後方はまさに「3密」状態が続いた。さらに、雨天中止が決まった直後、巨人とヤクルトの選手が1人ずつグラウンドに登場。ダイヤモンドを走り回って本塁にヘッドスライディングするパフォーマンスを披露した際には、3密状態で大きな拍手や歓声が響いた。これには、ヤクルト球団関係者も「屋外球場で雨天時にこうして密になる状況は、誰も想定できていなかったのではないか。クラスターの温床になりかねないと批判されても仕方がない」とため息をつくしかなかった。

 日本野球機構(NPB)のガイドラインでは、大声を出したり、観客同士がハイタッチをしたり、肩を組んで接触したりする行為等を禁じ、応援席は前後左右に一定の間隔を空けるよう定められている。各球団はさらに、密集による感染リスクがあるとしてファールボールをファンが拾わないよう注意喚起したり、球場内の売店には飛沫防止シートや除菌スプレー等を設置したりしたほか、ほとんどの球場でアルコール類の販売や持ち込みが禁じられるなど、入念な感染対策が講じられている。

 とはいえ、10日から各地で始まった有観客試合。いざ各地の球場を見渡せば、接触回避で甘くなった手荷物検査をくぐり抜けコソッと持ち込んだアルコールを飲む、グラウンドで好プレーが生まれれば思わず大声を出して周囲とハイタッチしてしまう、スタンド後方の立ち見席で仲間と密集して観戦するなど、ルールに反したファンの姿もあちこちで見られた。

 さらに、試合中にファンの大声が響き渡って選手が打席を外す場面もあるなど、入念な感染対策のわりにはあまり理想通りの展開になっていない実情がうかがえる。ファン心理からすれば、これだけ待ちわびたプロ野球に高いチケット代を払ってきているんだから、「ちょっとくらい大目に見てよ」という思いもあるだろう。

 もちろん、政府が専門家らの見解を踏まえ、7月10日からコンサートやプロスポーツなどイベント開催制限を緩和して5000人までの入場を認めており、プロ野球もそれにならって観客を入れていることを考えれば、球団側もファン側も何も悪いことはしていないわけで、有観客試合に対して真っ正面から異を唱えるつもりはない。

 ただ、5000人以内の今ですら、一部のファンがルールを守らず、一歩間違えば大規模クラスターが発生しかねないこの有り様。8月1日からは5000人の人数制限が撤廃され、入場者数が「収容人数の50%以内」となるため、多くの球場には2万人以上のファンが集うことになる。さらに、一部の球団では、ファンの応援をトランペット等の鳴り物でリードする「応援団」の入場も認められる予定だ。


■鳴り物使う「応援団」も入場へ、飛沫感染リスクは?


 少し説明すると、プロ野球では従来より、球場で応援するファンらの秩序維持のため、NPBや各球団の審査を経て認められた応援団のみ、トランペットや太鼓を使った鳴り物入り応援が認められている。NPB関係者によると、8月1日からさらに入場制限緩和が進むことで、ファンの人数も増えるため、応援をリードする応援団の入場を積極的に認めようとする球団がある。他方、「いくらシートなどで飛沫感染対策をしても、鳴り物入り応援は感染リスクが高い」として、応援団の入場を一切認めない球団もあるという。

 さる球団幹部は「主催者側が一生懸命対策しても、ルールを守らないファンがいれば感染リスクは避けられず、今のまま2万人以上のファンを入れるなんて考えられない」とこぼす。また、選手の間でも、球場のファンの生歓声を歓迎する声が上がる一方、「球場によってはファンとの距離が近すぎて、感染が怖い」「鳴り物入りの応援がない分、変なヤジが響いてやりづらい」といった不満の声も聞こえてくる。

 プロ野球の各現場で生まれるこうした危機感からすると、入場するファンの数を5000人以内から1か月足らずで2万人以上にまで増やすのは時期尚早ではないだろうか。

 優れた危機管理とは――。当然、それは最悪の事態を想定することだ。プロ野球をはじめとしたイベント開催の是非に関する専門家らの検討は、ルールが守られる「性善説」にたって進められたに違いない。今後、プロ野球の有観客試合ではルールを守るファンのモラルが不可欠なのはもちろんだが、このまま人数を大幅に増やしていくことに本当に問題がないのか、改めて検討する必要があるだろう。

週刊新潮WEB取材班

2020年7月12日 掲載

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