巨人「岡本和真」を語る…奈良のジョニー・デップから令和初の三冠王へ

■オーラを漂わせて


 巨人ファン待望の生え抜きで、右の長距離砲である岡本和真(24)の存在感がいや増しに高まっている。原辰徳監督(62)がドラフトで単独指名し、内田順三(72)・二岡智宏(44)の両打撃コーチが水をやり、高橋由伸前監督(45)が見事に開花させた4番。人生を巨人に捧げる徳光正行が、かつての興味深いエピソードを拾いつつ、その成長物語について愛を込めて綴る。

 我が巨人軍の連勝も7で止まり一旦小休止となりましたが、その戦い方を見ていますと他の追随を許さぬ王者のそれに思えてなりません(ペナントレース終了後に全然違うことを言っているかもしれませんが……)。

 なにせ規定打席到達者で3割以上打っているのが岡本和真内野手とヘラルド・パーラ外野手(33)だけ。その状態で、リーグトップ(ヤクルトと同点)の総得点を叩き出していること。

そして、故障者が相次ぐ中で菅野智之投手(30)を中心とした投手陣がしっかりと粘投していることが、首位に君臨する要因であることは火を見るよりも明らかであります。120試合とはいえまだまだ長いペナントレース何が起こるかわかりませんが、今のところ安泰と言ってよろしいのではないでしょうか?

 そこで今回やはり注目しておきたいのはイケメン・ハツラツプレーで売り出し中の北村拓己内野手(24)! と言いたいところですが、彼に関しましてはいずれということで、何と言っても岡本和真内野手でございます。

 巨人ファン待望の生え抜きで右の長距離砲。「何を今更言ってるんだこのアホ」とも言われそうですが、今年の岡本選手は昨年・一昨年とは発するオーラのようなものが違って見えるのは私だけではないはずです。これは巨人ファンそしてプロ野球ファンの方々すべてが感じているのではないでしょうか?

 もちろん、名前と存在感で出塁確率が高い坂本勇人内野手(31)や丸佳浩外野手(31)が前を打ち、後ろの5番にここのところ存在感が日増しに上がっている大城卓三捕手がいることで打点・得点を上げることができているという部分もありますが、今シーズンの岡本選手は相手の心を折るホームランやタイムリーヒットが多いこと多いこと、ファンとしては感謝感激雨あられでございます。

 そして他球団のスラッガーを見渡して、切磋琢磨すべくほぼ同世代のライバルたちがひしめいているのも、環境として最高なのではないでしょうか? 言わずもがなではありますが、広島東洋カープの鈴木誠也外野手(25)や東京ヤクルトスワローズの村上宗隆内野手(20)でございます。

■ミスターの「3」と若大将の「8」を背負って


「ホームランは野球の華」とはよく言ったもの。岡本、鈴木、村上の御三方のホームランはそれぞれの個性はあれど、実に衝撃的なものですし大変美しいアーチを描きますよね? とにかく御三方ともスイングスピードがとても速いですし、900グラム以上もある木の棒を持っているとは思えないくらい軽々と振り抜くさまには惚れ惚れしてしまいます。

 さあ、肝心の岡本選手の話にいたしましょう。岡本選手は2014年単独指名ドラフト1位で巨人軍に入団致しました。スカウトやフロントが他の投手を勧めたそうですが、当時も監督だった原辰徳現監督が「将来のスラッガー候補・岡本和真」にこだわって単独指名が実現したそうです。

 指名を受けた際の記者会見で、ハンカチで口元を押さえてはにかみながらインタビューを受ける純朴な感じは今でも目に焼き付いております。

 入団した時の背番号は「38」。長嶋茂雄(84)さんの背番号「3」と自信が現役時代に背負っていた背番号「8」を合わせては? とこれまた原監督が提案して決めたそうです。そうです、東京読売巨人軍・岡本和真の生みの親は現監督・原辰徳さんなのです(「そんなの誰でも知ってるよ」という意見は無視して)。

 しかしその後の道は、西武ライオンズに入団した清原和博(52)さんや巨人の先輩でもある松井秀喜(46)さんのようにはいきませんでした。ルーキーイヤーの2015年9月5日の横浜DeNAベイスターズ戦でホームランは放ったものの、1年目の公式戦成績は打率.214、1本塁打4打点に留まり、2年目はわずか3試合の出場で打率.100、本塁打・打点ともに0。

 3年目も出場試合15、打率.194、0本塁打2打点と、期待とは裏腹の成績でした。イースタン・リーグやフレッシュオールスター(ともにファームつまり2軍戦)では活躍していたのですが、1軍での結果がなかなか出ない時期を経験していたのです。しかしその間も腐らずに、内田順三打撃コーチや二岡智宏打撃コーチの下で猛練習に励んでいたことで、4年目のシーズンにおいてその大輪を見事に開花させたのです。

■「俺の女房の名前を貸してやる…」


 内田順三さんは自身の著書(『二流が一流を育てる』KADOKAWA)の中で岡本選手に対して「12の3ではなく12〜の3で振るイメージ、早めにテイクバックをしてゆったりとトップの位置で待ちそこからスイングするよう心掛けろ」と指導したと述べています。

 さらに内田さん流の洒落なのか、「彼女の名前はなんだ」と問うても恥ずかしがって言わない岡本選手に対して、「俺の女房の名前を貸してやる。“かず〜よ”のタイミングで打て」とも伝えたとか。そして2軍監督をなさっていた時には「小手先だけではなく、最後まで振り切るスイングをしながら、プロの打撃を磨け」と尻を叩いたそうです。

 そして4年目のシーズン(2018年)の話に戻ります。その年はオープン戦から調子を上げて開幕1軍スタートを勝ち取り(前年も開幕スタメンではありましたが)、「6番1塁」で開幕スタメンを奪取。第2戦となる3月31日には4打数4安打(1ホームラン)5打点と大暴れをしてプロ入り初の猛打賞、さらに翌4月1日も3ランホームランをかっ飛ばしました。その後も活躍を続け6月2日にはついに4番打者として試合に出場したのです。

 さらにこんなことがありました。

 2015年9月26日のヒーローインタビューで「奈良県から来ましたジョニー・デップです」と球場を沸かせた名言(迷言?)を2018年3月31日のヒーローインタビューの際に「今年、気を引き締めているのでやりません」と拒否し、その後もインタビュアーがなんとかそっちの方向に持って行こうとするものの恐縮しながら頑なに拒否し続けました。

 私はその中継を観ていたのですが、アナウンサーの誘導に嫌気がさすとともに岡本選手の不退転の決意を感じ取り、「今年こそ岡本は絶対にやってくれる」と確信めいた感情を抱きました。結果、打率.309、33本塁打100打点(最終戦に100打点を決めるという痺れる演出)という素晴らしい結果を出し、見事巨人の4番に成長しました。しかし自らを4番に引っ張り上げてくれた高橋由伸監督が巨人を去ることとなってしまいました。さぞかし岡本選手も悲しかったことでしょう。


■「和真は神の子みんなの子」


 そして後任には巨人軍岡本和真生みの親、原辰徳さんが就任することに。生みの親に実力で勝ち取った4番打者であることを証明するために懸命に野球に取り組み、1軍選手としては事実上の2年目のスランプ的な時期も経験しましたが、打率.265、31本塁打94打点の成績を叩き出し、シーズンを無事乗り切りました。

 迎えた今シーズン、オープン戦も好調をキープし続け、今年は60本くらい打ってしまうのではないかとファンも関係者も思っていたら、新型コロナの影響を受けて開幕は大幅に遅延して6月19日スタートで全120試合になってしまいました。しかししっかりと集中力を切らさずに開幕に備えていたのでしょう、打率.327、10本塁打27打点(7月22日現在)と今シーズンの3冠王の可能性を感じさせる数字を叩き出しています。

 進化が止まらない令和の巨象(足が象並みに太いので)、これからも応援せずにいられません。

 かつて東北楽天ゴールデンイーグルスの監督をなさっていた故野村克也さん(84没)が現ニューヨーク・ヤンキース所属の田中将大投手のことを「まーくん神の子不思議な子」と表現していましたが、さながら「和真は神の子みんなの子」と表現したくなってしまいました。

 みんなの子とは、原辰徳監督が巨人岡本を産み、内田順三打撃コーチ(当時)・二岡智宏打撃コーチが水をやり、高橋由伸前監督が見事に開花させたという意味で用いさせていただきました。もちろんご本人の弛まぬ努力あってこそではあるのですが。

 この大輪はこれから何年も花を散らすことはないでしょう。

 令和初の3冠王、期待しております。

徳光正行
1971年12月生まれ。茅ヶ崎市出身。日本大学芸術学部在学中よりミュージシャンを目指すが、父の病により断念。その後、司会業やタレント業に従事する。また執筆活動にも着手し『伝説になった男〜三沢光晴という人〜』『怪談手帖シリーズ』などを上梓。4月27日に岩井志麻子氏との共著『凶鳴怪談』を出版。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月24日 掲載

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