ストライクゾーンの“朝令暮改”に物申す…監督より年長審判に判断できるか

■プロ野球選手が引退を判断する主たる理由とは?


 人がやることに誤りはつきものだから、スポーツ選手は誤審から逃れられないということになるわけだが、事故を避けるべく自動運転もあるくらい時代なんだし、微妙なプレーにはビデオ判定なりAIを活用すれば良いのでは? というのが大勢の意見ではないだろうか。早い回と終盤では明らかにエリアが変わっているように映る、”ストライクゾーンの朝令暮改”に不満を漏らす徳光正行が綴る。

 これは今シーズンに限ったことではないのですが、プロ野球の審判の誤審というか「ストライクかボールか」のジャッジメントの曖昧さが気になって仕方がありません。

「リクエスト制」が導入されて「アウト・セーフ」の誤審訂正は可能になった(それでも1試合2回しか出来ない)ので、そちらは改善傾向にあるのですが……。実際、私のようにやきもきしながら野球観戦をなさっている方も多いのではないでしょうか?

 我々は「今のはストライクだろう、いや、ボールだろう」とか騒いでいれば良いのですが、野球を生業にして家族を支えている選手にとっては、その1球がもしかすると失職に繋がることだってあるわけです。

 ちなみに、ストライクゾーンとは「本塁ベース上」で、「打者の膝頭の下を通る地面と水平の線」と「打者の肩とズボンの上端の中間部分(みぞおちぐらいになります)を通る地面と水平の線」で挟まれた空間である、とルールでは定められています。

 ところで、怪我は別として、プロ野球選手(この場合は特に打者)の引退の原因は、何だと思われますか? 加齢による体力の衰えからくる初動動作の遅れもさることながら、主として動体視力の低下であると伺ったことがあります。

 仮にそういう衰えた状態で、150キロを超える直球に10種類前後もある変化球、そして球の出所を見えにくくする投球術を駆使されたら、判断はかなり厳しくなってくるでしょう。そして屋外のナイトゲームという条件が加わればさらに見えなくなるようです。

■球審は中腰の辛い姿勢で長ければ5時間くらいジャッジを続ける


 ここで少し余談ですが、実際に私も毎年最低1度はバッティングセンターに行き120キロの球で動体視力の衰えを測ることにしています。30代の頃、40代前半、そして48歳の今を比較してみますと、全然打てないというか見えなくなってきております。

 話を戻しまして、なぜ私がこの加齢による動体視力の低下にこだわるかと申しますと、特に1軍の試合をさばく審判団の年齢というのが、選手はおろか監督やコーチと同年齢もしくは上だったりするのが気になるからです。

 球筋が見えなくなって引退する選手の年齢よりもはるかに年上の方々が、その球筋を見極めジャッジするというのは、無理筋ではないでしょうか? 審判団を非難するつもりではありません。むしろ、身体的能力の低下があって当たり前だという前提でジャッジングを考えるべきではないかと申し上げたいのです。

 しかも審判というのは、体調不良等の例外を除けばプレイボールからゲームセットまでずっと同じ方が務めます。選手以上に長時間グラウンドに立ち、球審は中腰の辛い姿勢で長ければ5時間くらいジャッジを続けるのです。

 そういう状況ですから、判断が鈍るのも当然でしょう。観ている側からすると、早い回と終盤ではストライクゾーンが変わってきているように思えてしまい、故意ではないにせよ、どちらかのチームに有利に試合を作っているように見えてしまうこともあるのです。

「審判は試合をさばく立場であって作る仕事ではない!」なんて声に出したくなってしまうこともあります。じゃあ両チームに平等であれば、ストライクゾーンが狭すぎたり広すぎたりしても良いのか? というとそうでもないのですが。

■AI審判導入、一択で


 しかも解説者の方なんかが、「今日の審判は低めを取らない傾向がありますね」だとか「今のはストライクゾーンです」とか、当たり前に言っているのもいかがなものかと思ってしまいます(特に江川卓さんが口にする)。とはいえ現役時代には、審判のストライクゾーンの傾向を見極めて、そちらに寄せていく工夫もなさっていたことでしょう。

 もちろん、そういった努力には敬意を評しつつも、テレビでバックスクリーン側から野球を観戦していると、「ルールが定まっているのにそんな曖昧なこと言って、それってスポーツなの?」とも思いますし、現役の選手だってそんなのやってらんねーよ!となっても仕方ないかもしれません。

 となると最善策はなんなのか? 間違いなくAI審判導入ではないでしょうか? 全面的にAI審判にしてしまい、審判の皆様の職を奪おうと言っているわけではありません。あくまでも手助けをする道具として使うのはいかがでしょうかという話であります。

 現に野球発祥の国アメリカ(MLB)では「Automated Ball-Strike System(ABS)」というものの開発を進めております。「ロボット審判システム」と言えばわかりやすいかと思います。

 投手が投げたボールを「TrackMan」という名のレーダーシステムが捕捉してストライクとボールを瞬時に判断。イヤホンを着けた審判に転送しますと、審判はそれを参考にしながら、打者のスイングなどを総合的に見て、ジャッジするという仕組みになっているそうです。

 このABSはMLBと提携している独立リーグのアトランティック・リーグで2019年シーズン後半に導入されて、アリゾナ・フォールリーグ(毎年オフシーズンに行われるMLB傘下の教育リーグ)でも使用されると、一定の成果を示したそうです。

■2021年にマイナーリーグのトリプルA(2軍に相当)で採用も


 そしてこの結果を受けて、MLBは2020年中にMLB傘下のマイナーリーグの一つであるフロリダ・ステートリーグ(4軍に相当)で試験運用することを検討していて、これがうまくいけば2021年にマイナーリーグのトリプルA(2軍に相当)で採用するとも報じられています。

 さらに昨年12月には、MLB審判協会が、今後5シーズンの労働契約の一環として、ABSの開発とテストに関してMLBと協力することに合意したと報じられました。

 サッカーやラグビー、そしてテニスなどでもすでにビデオ判定は活用されておりますし、選手もファンも納得するジャッジメントですっきりとした結果が出ることに越したことはありません。

 まして野球に至りましては今後競技人口の減少が必至とされているわけですから、曖昧な部分を減らせば、少しでもその傾向の歯止めになるのではないかと思うわけでございます。

徳光正行(とくみつ・まさゆき)
1971年12月生まれ。茅ヶ崎市出身。日本大学芸術学部在学中よりミュージシャンを目指すが、父の病により断念。その後、司会業やタレント業に従事する。また執筆活動にも着手し『伝説になった男〜三沢光晴という人〜』『怪談手帖シリーズ』などを上梓。4月27日には岩井志麻子氏との共著『凶鳴怪談』を出版。現在YouTube「徳光ちゃんねる」でも活躍中。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月11日 掲載

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