11失点の藤浪晋太郎 欠陥フォームを修正できるかは“運次第”という指摘

■自己管理にも問題


 YAHOO!ニュースのトピックスは9月5日、デイリースポーツの「阪神・藤浪、ベンチで涙 球団ワーストの11失点『崩れてチームに迷惑を…』」の記事を掲載した(註:全角数字を半角にするなど、デイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)。

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 記事の冒頭を、引用させていただく。

《阪神の藤浪晋太郎投手が4回2/3を9安打、自己ワーストの11失点で降板。球団史上でも、1人の投手による11失点はワーストの記録となった》

《押し出し四球を含む6四球に、2失策と野手のミスも響いた登板。逆転優勝に向け、チームとして負けられない一戦で、苦しい投球となってしまった》

 藤浪は1994年4月生まれの26歳。その経歴を改めて振り返ると、20代という若さにもかかわらず、既に“天国と地獄”の両方を味わっていると言える。

 2012年、春のセンバツと夏の甲子園でともに優勝を果たした。春は全5試合で球速150キロ以上を計測。夏は決勝戦で史上最速の153キロを記録し、史上最多タイの14奪三振と圧巻の“投手ショー”を見せた。

 ドラフト会議は阪神、オリックス、ヤクルト、ロッテの4球団から1巡目指名を受けた。クジを引き当てたのは、当時の和田豊監督(58)だった。


■コロナにも感染


 プロ入り後の成績は表にまとめてみた。ご覧いただこう。

 13〜15年は絶好調、16〜19年は絶不調と、くっきり明暗が分かれている。特に不振にあえぐようになってからは、四死球の多さが物議を醸すようになった。

 17年4月のヤクルト戦では9四死球。畠山和洋(37)に対する死球では、両チームによる乱闘騒ぎに発展した。

 同年8月の広島戦では、2回に大瀬良大地(29)、4回に菊池涼介(30)に死球。京セラドームの広島ファンは騒然となった。この試合では7四死球を記録した。

 更に今年はグラウンドの外で不祥事を起こした。女性を含む十数人で会食して新型コロナウイルスに感染。退院・復帰後も遅刻を問題視されて2軍に降格となったのだ。

 7月23日の広島戦で初登板。好投に甲子園のファンは惜しみない拍手を送ったが、6回に逆転満塁ホームランを被弾してしまう。


■弱いメンタル


 7月30日のヤクルト戦では10三振を奪いながら、7回4失点(自責点1)。8月5日の巨人戦も8回4失点。15日の広島戦でも6回6失点と4連敗を記録してしまう。

 8月21日には対ヤクルト戦で7回途中4失点。692日ぶりの勝利となった。いよいよ藤浪復活か、と野球ファンの期待は高まった。

 29日の広島戦は勝ち負けこそ付かなかったが、4回2/3を5四死球4失点と低調な内容だった。再びファンの不安が募る中、9月5日の巨人戦で11失点と屈辱の敗北を喫してしまったわけだ。

 一体、藤浪はどうしてしまったのか、阪神OBの広澤克実氏に取材を依頼した。

「アマチュア時代から、プロに入って最初の3年間まで、藤浪くんは挫折というものを全く知りませんでした。彼を初めて叱ったのが当時の金本監督だったとの報道もありました。私が昭和の野球人だからかもしれませんが、藤浪くんが逆境に弱い、プロ野球選手としてはメンタルが弱いことに、不振の一因があるのではないかと考えています」

 ちなみに広澤氏はヤクルトに入団後、土橋正幸(1935〜2013)、関根潤三(1927〜2020)、そして野村克也(1935〜2020)の3氏のもとでプレーした。


■失敗した新人育成


 土橋氏と野村氏の怖さは有名だが、温厚なイメージの関根氏も、広澤氏によると「優しいところもありますが、要所要所では怖かった」という。

「藤浪くんは今年、遅刻を理由に2軍に降格されました。これは昨日今日の問題ではないそうです。関係者から聞いた話では、もともと彼は時間管理や挨拶ができないという問題があって、首脳陣が2軍降格を決断したのも、これまでの経緯があるから、とのことでした。時間厳守と挨拶といえば、社会人の基本でしょう。藤浪くんが新人の頃から、どういう教育を阪神が行っていたか、よく分かるエピソードだと思います」

 とはいえ、藤浪自身がフォームの改造など、何とかして復活しようと努力を重ねてきたことも事実だ。

「新人の頃より、今年のほうが直球のスピードは速いでしょう。リリースポイントの位置を調整し、死球を減らすことにも成功しました。しかし皮肉なことに、荒れ球が少なくなると、バッターは落ち着いて藤浪くんと対戦できるようになったのです。また藤浪くんは全盛期、アウトコース低めでバッターを打ち取っていました。その勝負球が、今年はストライクとボールがはっきりしています。死球の恐怖が減少し、ボール球を見分けることが容易となり、バッターが精神的な面で優位に立てるようになっています」(広澤氏)


■藤浪は崖っぷち


 11失点を喫した件の巨人戦も、藤浪の短所と長所が明確に現れたという。

「どれほど藤浪くんが不調に苦しんでいても、依然としてスライダーは超一流のキレがあります。あの試合でも、巨人打線が完璧に打ち崩したわけではありません。要所要所では打者を打ち取る場面もありました。結局、いつもの悪癖である四球で自ら苦境を招き、最終的には味方のエラーにも足を引っ張られてしまいました」(広澤氏)

 藤浪はトンネルを抜けたのではないかと希望を抱いた虎ファンも多かっただろうが、今も五里霧中というのが正直なところだろう。

 広澤氏の指摘を続けよう。

「私は打者なので、投手出身の野球解説者の方々に『どうしたら藤浪は復活できますか?』と聞きまくったことがありました。走り込みやメンタルの改造など、本当に様々な意見を指摘してもらいました。その中で私が『なるほど!』と感心するものもありました。藤浪くんの不調は純粋に技術的な問題で、フォーム改造を行えば、日本球界を代表するピッチャーに復活できるというものです」

 非常に技術的な問題で説明が難しいのだが、その中で1点だけ具体例を挙げれば、藤浪は1本足で立つ時、ボールを持った右腕が背中側に出てしまう。足と並行になっているのが基本中の基本だから、藤浪は実のところ、かなり変則的なフォームで投げているのだ。

「プロ入り前から藤浪くんは今の変則フォームで投げ、勝ち続けてきたのでしょう。修正は並大抵のことではないはずですが、私は投手出身の野球解説者に聞きまくることで、『この人なら修正が可能だろう』と思えるOBに出会いました。ただ、今の日本球界は球団の雇用するコーチが、がっちり選手を囲い込んでいます。藤浪くんの復活を実現するピッチングコーチに巡り会うことができるかは、運も大きく関係するでしょう」(広澤氏)

週刊新潮WEB取材班

2020年9月8日 掲載

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