「巨人」は過去4年“くじ運”に見放されて…こんなに違う12球団のドラフト戦略

「巨人」は過去4年“くじ運”に見放されて…こんなに違う12球団のドラフト戦略

佐々木朗希の交渉権を獲得したときのロッテ・井口監督

 2020年のプロ野球ドラフト会議も目前に迫り、連日各球団の動向や有力選手についての報道が多い時期となった。実力や将来性のある選手に人気が集まるのは当然だが、それでも球団によって方針や傾向の違いは見えてくるものである。そこで今回は過去数年間の指名結果から、12球団のドラフト戦略にどのような違いがあるのかを分析した。

 まず、ポジションに関係なく、その年の目玉となる選手を真っ先に指名する“ナンバーワン戦略”を掲げているのがソフトバンクと日本ハムだ。2015年の高橋純平、2016年の田中正義、2017年の清宮幸太郎はこの両球団がいずれも競合しており、高橋と田中はソフトバンク、清宮は日本ハムが引き当てている。一昨年と昨年は判断が分かれ、両球団とも抽選を外しているものの、いずれも入札が集中した選手を指名しており、その方針は変わらない。今年は今のところ日本ハムが、“大学生のナンバーワン投手”を指名するというところまでは公言しており、早川隆久(早稲田大)か伊藤大海(苫小牧駒沢大)に向かうものとみられる。一方のソフトバンクは野手の世代交代が課題なだけに、大学球界屈指のスラッガー、佐藤輝明(近畿大)などのスケールのある打者に向かう可能性が高そうだ。

 この2球団に続いて同様の戦略を見せているのがロッテだ。かつては8球団が競合した小池秀郎を引き当てながらも入団拒否の憂き目にあい、一時は抽選を避けるような指名が多かったが、ここ数年は積極的に目玉選手に入札している。その結果2016年は佐々木千隼、2017年は安田尚憲をいずれも“外れ1位”の抽選で引き当て、過去2年間は藤原恭大、佐々木朗希の指名を早々に公言して見事に当たりくじを引いてみせた。今年も地元千葉出身の大学ナンバーワンサウスポー早川の1位を公言しており、抽選を恐れない姿勢は健在だ。

 巨人も最近は一番人気の選手に向かうことが多いが、過去4年間はことごとくくじ運に見放されている。2016年は田中、佐々木を外して内野手の吉川尚輝を指名。2017年には清宮、村上宗隆を外して大学生投手の鍬原拓也、2018年も根尾昂、辰己涼介を外してまたしても大学生投手の高橋優貴を指名している。昨年は奥川恭伸を外し、最終的には同じ高校生右腕の堀田賢慎に落ち着いたが、その前には社会人の宮川哲に入札しており、同じポジションや年齢に関係なく選手の序列をつけて、その順に繰り上げていっているように見える。今のところ吉川以外は手放しで喜べるほどの結果が出ていないだけに、外した時の戦略には再考の余地がありそうだ。

 一方で独自路線の色が強いのが西武だ。過去5年間で1位入札が重複したのは2017年の田嶋大樹と昨年の佐々木朗希だけで、いずれも抽選を外している。かつては菊池雄星、大石達也と2年連続で一番人気を引き当てているが、ここ数年は確実に獲得できる選手に向かっているように見える。また、地方リーグの大学生を積極的に指名していることも特徴的だ。

 過去5年間だけ見ても多和田真三郎(富士大)、川越誠司(北海学園大)、本田圭佑(東北学院大)、呉念庭(第一工業大)、国場翼(第一工業大)、中塚駿太(白鴎大)、与座海人(岐阜経済大)、斉藤誠人(北海道教育大岩見沢校)、粟津凱士(東日本国際大)、佐藤龍世(富士大)と10人もの選手を地方大学から指名している。これは最近始まったことではなく、これ以前にも秋山翔吾(八戸大)、山川穂高(富士大)、佐野泰雄(平成国際大)、外崎修汰(富士大)などを獲得してチームの戦力としている。全国的な知名度は高くなくても素材の良い大学生を即戦力としてではなく数年後の戦力として獲得する方針は一定の効果を生んでいると言えそうだ。

 西武と同様に比較的抽選を避けながら、徹底した大学生、社会人の上位指名でチームを作ってきたのがDeNAだ。過去5年間で1位指名が重複した回数は2回と西武と並んで最少であり、今永昇太、東克樹、森敬斗の3人を単独指名している。また、親会社がDeNAになった2012年から昨年までの8年間の上位指名の選手16人のうち、昨年の1位である森を除いた15人が大学生、社会人となっている。また範囲を3位までの24人に広げても、高校生は3人しか指名していない。いかに早く使える選手を重視してきたかがよく分かる。この中から先述した今永、東以外にも三嶋一輝、井納翔一、嶺井博希、山崎康晃、石田健大、倉本寿彦、神里和毅、上茶谷大河、大貫晋一などが一軍の戦力となっている。暗黒時代を脱するための方法としてはある程度結果に繋がったと言えるが、今後もこの方針を続けて優勝を狙えるかは疑問が残るところだ。

 ここ数年で方針の転換が見られているのがオリックスと中日である。オリックスは阪急時代から社会人出身の選手を中心にチームを作っており、1968年には山田久志(富士鉄釜石)、加藤秀司(松下電器)、福本豊(松下電器)と社会人出身の選手三人が後に揃って名球会入りするという史上最高と言われる指名を見せている。その流れは球団がオリックスになってからも大きく変わることはなく、現在の主力選手も社会人出身が多い。しかし、一昨年は小園海斗を外しても同じ高校生ショートの太田椋を指名。昨年も石川昂弥を外した後に一度は社会人左腕の河野竜生を指名したが、それも外した後は高校生路線に切り替えている。いまや投手陣の大黒柱となった山本由伸の成功が与えた影響であると考えられ、太田や同学年の宜保翔、昨年の1位である宮城大弥などが一軍の戦力になりつつある。近い将来、今までにないオリックスが見られることも期待できそうだ。

 中日は落合博満GM時代の4年間にオリックスを彷彿とさせる社会人中心路線を敢行。その中から阿部寿樹、木下拓哉、福敬登などが戦力とはなったものの、世代交代が思うように進まず、落合GMの退任以降は高校生の上位路線に舵を切り、根尾昂、石川昂弥を2年続けて引き当てて見せた。この二人はまだ二軍暮らしだが、チーム内に新しい風をもたらしたことは間違いない。今年も地元愛知に高校ナンバーワン投手である高橋宏斗(中京大中京)がいるだけに、この方針を継続するかに注目だ。その他では、昨年阪神が1位から5位までを高校生で占めるというこれまでにない指名を見せて会場を沸かせた。結果が出るのはまだまだ先だが、画期的な取り組みだったことは間違いない。

 今回は主に1位指名を中心に取り上げたが、2位以降の指名にもそれぞれの特色はあり、水面下では様々な駆け引きも行われている。果たして今年大きく方針を転換してくる球団はあるのか。そのような点にも注目しながらドラフト会議を見ると、より楽しさが増すことになるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月21日 掲載

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