巨人「菅野」と日ハム「西川」、メジャー再挑戦の不安要素 過去の例で検証すると

巨人「菅野」と日ハム「西川」、メジャー再挑戦の不安要素 過去の例で検証すると

俊足を生かす1番バッターの日本ハム・西川(2020年6月13日)

 1995年に野茂英雄が海を渡ってからほぼ毎年のように日本人選手がメジャー・リーグに移籍しており、今年のオフも有原航平(前日本ハム)がレンジャーズに移籍することになった。その一方で、有原と同様にポスティングシステムでの移籍を目指していた菅野智之(巨人)と西川遥輝(日本ハム)は交渉がまとまらず、チーム残留となった。

 米国では、年々FA選手の契約成立に時間がかかるようになり、このオフは、さらに新型コロナウイルスの影響もあって交渉期間が限られているポスティングシステムでは有利な条件が得られなかったとされる。菅野、西川ともに順調にいけば、今シーズン中に海外FA権を取得する見込みだが、もう一年日本でプレーするうえで気持ちを立て直すことは容易ではないだろう。過去にもポスティングが不成立だったケースはあるが、再チャレンジに成功した例はあるのか。また、菅野と西川が望むような契約を得るために、クリアすべき課題はどのあたりにあるのか、探ってみたい。

 まず、過去にポスティングシステムを申請しながら不成立となったのは7人いるが、申請した年と翌年の成績を並べてみた(所属、年齢は当時)。

大塚晶文(近鉄:30歳)
2002年:41試合2勝1敗22セーブ 防御率1.28(近鉄)
2003年:51試合1勝3敗17セーブ 防御率2.09(中日)
※2003年オフに再度ポスティングシステムでパドレスへ移籍

入来祐作(日本ハム:33歳)
2005年:28試合6勝7敗0セーブ0ホールド 防御率3.35
2006年:メジャー登板なし
※ポスティングシステム不成立後、自由契約となり、メッツと契約

三井浩二(西武:35歳)
2008年:23試合1勝1敗0セーブ3ホールド 防御率7.50
2009年:19試合0勝1敗0セーブ5ホールド 防御率6.23
※2009年シーズン終了後戦力外

岩隈久志(楽天:29歳)
2010年:28試合10勝9敗0セーブ0ホールド 防御率2.82
2011年:17試合6勝7敗0セーブ0ホールド 防御率2.42
※2011年オフ海外FA権を行使してマリナーズへ移籍

中島裕之(西武:29歳)
2011年:144試合168安打16本塁打100打点21盗塁 打率.297
2012年:136試合155安打13本塁打74打点7盗塁 打率.311
※2012年オフ海外FA権を行使してアスレチックスへ移籍

真田裕貴(横浜:27歳)
2011年:53試合2勝0敗0セーブ3ホールド 防御率4.22(横浜)
2011年:1試合0勝0敗0セーブ0ホールド 防御率なし(巨人)
※2011年シーズン終了後に自由契約

菊池涼介(広島:29歳)
2019年:138試合143安打13本塁打48打点14盗塁 打率.261
2020年:106試合102安打10本塁打41打点3盗塁 打率.271
※2020年から4年契約を結び広島に残留

 入来は日本ハムを自由契約となったうえで、その年にメッツと契約。大塚は再びのポスティング、岩隈と中島は海外FAで翌年オフにメジャー移籍を果たしている。7人中4人が最終的にメジャー球団との契約に成功していることを考えると、菅野と西川も再チャレンジが成功する可能性は十分にありそうだ。特に期限が短いポスティングではなく、海外FA権を取得見込みというのは、2人にとっては大きなプラスである。

 しかし、その一方で、翌年もNPBの球団でプレーした6人の成績を見ると、不安要素が出てくる。大塚以外の5人は出場試合数が減少しているのだ。特に投手3人の成績下降は著しく、岩隈以外の2人はオフに戦力外となっている。

 また、中島と菊池はそこまで大きく成績を落としたわけではなく、菊池にいたっては昨年、セカンドでは史上初となるシーズン失策0の偉業を達成している。だが、気になるのが盗塁数の減少である。中島の7盗塁はレギュラー獲得後では当時最低の数字であり、菊池の3盗塁はキャリア最少となっている。このあたりはプレーに対する意識の変化が表れていると言えそうだ。

 最後に、菅野と西川がクリアすべき点について考察してみたい。まず、菅野にとって大きなネックとなるのが来年で32歳となる年齢の問題である。斎藤隆(ドジャースなど)、上原浩治(レッドソックスなど)はさらに高い年齢で海を渡りメジャーで大活躍したが、菅野とは異なり、ともにリリーフ投手だった。先発で長く成功した例は今のところ見当たらない。菅野の昨年の投球を見ていても急激に衰えることは考えづらいが、好条件での契約を勝ち取るためには昨年34歳でキャリア最高とも言えるピッチングを見せたダルビッシュ有(パドレス)のように、さらなる進化した姿を見せることが必要になるのではないか。

 西川については、ネックとなるのが守備と長打力だ。プロ入り直後に右肩を手術した影響でスローイングに強さがないのは大きな弱点だが、守備範囲についてもここ2年間は狭くなってきている。長打力がここから爆発的に伸びることは考えづらいだけに、まずは守備範囲の改善に取り組むべきだろう。

 加えて、必要なのが持ち味である盗塁のさらなるレベル向上だ。過去の中島、菊池の例では、チーム残留となった年の盗塁数が大きく減少しているが、西川の最大の武器とも言える部分だけに、キャリアハイの数字を叩き出すくらいの活躍が求められるだろう。

 投手では前述した斎藤、野手では新庄剛志(メッツなど)のようにアメリカでのプレーは難しいのではないかと言われながら、活躍した例はある。菅野、西川とも今回の経験をバネにして、メジャーから高評価を受けるような活躍を見せてくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班

2021年1月19日 掲載

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