「異例づくめ」だった昨季の影響がどんな形で現れるか。投手陣のマネジメントが2021年ペナントレースを左右する〈SLUGGER〉

「異例づくめ」だった昨季の影響がどんな形で現れるか。投手陣のマネジメントが2021年ペナントレースを左右する〈SLUGGER〉

昨季の千賀はイニング数こそ多くなかったが、11月下旬まで投げ続けた。この影響が今季の投球にどう影響するだろうか。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

2021年のプロ野球のペナントレースがいよいよ幕を開ける。

 昨季はイレギュラーのシーズンで、今年も春季キャンプが無観客で開催されるなど不自由なことも多かった。それだけに、制限つきとはいえ、観客を受け入れる「通常営業」の開幕を待ち侘びるファンは多いことだろう。

 ただ、今シーズンも昨年とは違う形で難しい一年になることが想定される。予定ではオリンピックがあるので、7月中旬から約1ヵ月の中断期間が入る。その中で、どうチーム力に厚みを加えていくかがペナントレースのカギになりそうだ。

 意外に忘れがちなのが、イレギュラーだった昨シーズンの影響が今季につながる可能性があることだ。実は、ここが今季を占う上で最大のポイントになるのではないかと思っている。 2020年シーズンは、公式戦の試合数はいつもより少ない120試合。セ・リーグではクライマックスシリーズが行われず、パ・リーグはファイナルステージのみが開催された。そして、日本シリーズの最終日は11月25日と、前年より1ヵ月も遅かった。

 この事実から、以下の2つのことが言える。
・シーズンが短かった分、疲労度が少ない
・シーズンが終わるのが遅かったため、疲労が抜けきれない選手がいる。

 この影響がどう作用するかを考えてみたい。

 まず1点目から。下記は主な先発投手の19〜20年のイニング数の推移だ。

菅野智之(巨人)     +1.0(136.1回→137.1回)
高橋光成(西武)    −3.1(123.2回→120.1回)
山本由伸(オリックス)    −16.1(143.0回→126.2回)
青柳晃洋(阪神)     −22.2(143.1回→120.2回)
美馬学(ロッテ)    −23.2(143.2回→123.0回)
西勇輝(阪神)     −24.2(172.1回→147.2回)
大野雄大(中日)     −29.0(177.2回→148.2回)
二木康太(ロッテ)    −36.0(128.2回→92.2回)
小川泰弘(ヤクルト)    −40.0(159.2回→119.0回)
千賀滉大(ソフトバンク)    −59.0(180.0回→121.0回)

 19年に故障離脱があった菅野以外は軒並みイニング数を減らしている。つまり、シーズンの疲労感が例年より軽減されていることになる。 プロに限らず、2020年は日本球界全体がそれまでで「最も野球をしなかった年」として位置付けられる。プロ・アマ問わず、どのカテゴリーも試合の開催はおろか練習すらままならなかった。その分、疲労が蓄積されなかったことも意味する。

 ポイントになるのはその影響をどう活かすか、マネジメントするかだ。

 メジャーにいる日本人も含め、今年は例年に比べてオープン戦の仕上がりがいい選手が多い。どの選手も体が軽く、キャンプ開始からいい状態で入れているからだろう

 一方で、懸念されるのは、開幕が遅れたことに伴い、シーズン終了もずれ込んだことだ。

 過去2年の主な投手のシーズン最終登板日を比較すると以下のようになる。

大野雄大(中日) 19年:9月30日 20年:11月5日
山本由伸(オリックス) 19年:9月29日 20年:10月20日
則本昂大(楽天) 19年:10月5日 20年:11月3日
千賀滉大(ソフトバンク) 19年:10月19日 20年:11月21日*
菅野智之(巨人) 19年:10月23日 20年:11月21日*
*=日本シリーズ
 どの投手も約1ヵ月遅くなっていることが分かる。シーズンが終わるのが遅くなっても、21年のキャンプインも開幕も例年通り。つまり、オフの時間が短くなっていたことになる。

 今季の開幕投手を務めるソフトバンクの石川柊太がこんな話をしていた。

「結局、時間は変えられない。だから、練習の質を上げたところで1ヵ月足りないっていう事実はあるので、それを取り戻すには質を上げるのではなくて、1ヵ月もらわないと取り戻せない。そこでどうするかというと、スロースタートするしかないと思う」

 スロースタートの考え方はそれぞれだろう。

 5月くらいから一軍で投げ始めるのがスロースタートだという考え方もあれば、スタートは通常通りでも当初は入れ込みすぎないことを目指すのがスローだと捉える選手もいる。それぞれの立ち位置によって異なってくるが、前年の疲れが残ったままスタートしているのだとしたら、自身の体への問いかけは必要になってくるだろう。首脳陣もそのことを踏まえてマネジメントしなければならない。 オフが短いことを受け、キャンプから逆算してきていたか。石川のような考えを持っているかどうかで大きな差が生まれるはずだ。

 試合数が減って昨季の労働量が減ったこと、オフが短く調整が難しかったことを踏まえ、球団が各投手のコンディションをどう見極めていくかがキーになる。
  加えて、今シーズンは9回打ち切りが決定している。延長戦を考慮しなくていいから、ブルペン陣の負担が減ることは間違いない。その中で、投手の運用マネジメントをうまくできたチームは一手先に手先を踏むことができるはずである。

「異例」づくめの2020年から、「通常」に戻る2021年。年間トータルで投手陣をマネジメントできるチームが頂点に立つのではないか。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
 

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