「9回打ち切り」が招くクローザー酷使の可能性――監督に求められるブルペン運用のマネジメント力<SLUGGER>

「9回打ち切り」が招くクローザー酷使の可能性――監督に求められるブルペン運用のマネジメント力<SLUGGER>

4月2日~4日の阪神対中日戦は、継投をめぐる両チームの指揮官の判断の是非が論議を呼んだ(写真は阪神の矢野監督)。写真:産経新聞社

ペナントレースが開幕して1週間を過ぎた。

 今季の特徴として顕著なのは、指揮官の勝負手が早まっていることだ。特に、DH制度がないセ・リーグは調子が上がりきらない先発投手を早々に諦めるケースが目立つ。代打や代走、守備固めも含め、選手交代が活発なシーズンになっている。

 なぜ、勝負手が早まるのか。それは、今シーズンは9回で打ち切りすることが決まっているからだ。

「9回から先を見なくていい」。言葉にすればそうなるのだが、それによって指揮官たちが選択するのが「9回から逆算する」戦い方だ。

 12球団、どのチームにも勝ち試合の最後を締めくくるクローザーがいる。日本語にすると「守護神」だ。リードして9回を迎えれば、監督は試合を締めてくれる「守護神」を迷いなくマウンドに送り出す。

 一方、相手はクローザーが出てくるまでに勝負をつけたいという気持ちで試合に臨んでくる。そのつばぜり合いがあるから、勝負手が早くなるのだ。
  開幕から1週間を終えて見えてきたのは、「9回をマネジメントする」ことで特定の投手に負荷がかかる可能性だ。

 先ほども書いたように、今季は9回で打ち切りとなる。つまり、9回を迎えた時点で同点の場合は、最終イニングを抑えれば負けることはない。この状況で「クローザー」(守護神)を起用するチームが多いのだ。現時点では漆原大成(オリックス)、松井裕樹(楽天)以外のクローザーが、チームがリードしていない状況での登板を余儀なくされている。

 勝利を締めるはずの役割のクローザー(守護神)がセーブ・シチュエーションはおろか、勝利につながらないかもしれない試合の最後を託される。これからも同じ起用が続けば登板過多につながり、シーズン終盤に疲れが蓄積することがあるかもしれない。

 「引き分け」をいかにマネジメントしていくか、クローザーをどう運用ししていくかが、2021年のカギになる。

 クローザーの起用で賛否両論が渦巻いたのが4月2~4日の阪神対中日の3連戦だった。この3連戦では、今季ならではのリリーフ起用の難しさが浮き彫りになった。
  1戦目から終盤の投手起用で違いが生まれた。

 試合は序盤に3点をリードした阪神が試合を締めに向かっていた。先発の藤浪晋太郎が6回を1失点。7回を岩貞祐太が無失点で切り抜け、勝利の方程式に向かった。

 ところが、8回、阪神はセットアッパーを担う岩崎優をこの日は選ばず、加治屋蓮に託した。おそらく、岩崎が前日の広島戦で31球を投げていたことを受けての決断と思われる。

 だが、これが裏目に出る。加治屋は2安打を浴びてピンチを招くと、7番・木下拓哉に右翼オーバーの適時打を浴びて逆転を許した。9回の小野泰己も打たれ、阪神は3対6で敗れた。

 この敗戦に矢野燿大監督への非難が殺到したが、翌日は真逆のことが起きた。

 中日・柳裕也、阪神・青柳晃洋の投手戦が展開され、7回を終えて0対0。8回、矢野監督は青柳が一人の走者を出してピンチを迎えると岩崎を投入、前日に登板しなかった岩崎は後続を断った。そして9回には抑えのスアレスがマウンドに上がり、0に抑えて敗戦の可能性を消した。
  一方、中日は柳が8回までを投げ切ると、9回にはクローザーの祖父江大輔ではなく、福敬登を起用した。祖父江が前節2試合に登板していたことを懸念したのだろう。連投を避ける選択したのだが、阪神がベンチに右の代打を残していたため、これが裏目にあった。

 阪神は9回裏に2つの四球で2死一、二塁のチャンスをつかむと、代打・山本泰寛がセンターオーバーのタイムリーを放ちサヨナラ勝ちしたのだ。

 祖父江を出すべきだった――。前日とは打って変わって、今度は中日の与田剛監督に批判が押し寄せたわけだが、ここに今シーズンのポイントがある。

 ただ、引き分けになるかもしれないゲームにまで勝ちパターン継投を強いれば、いつか歪みが出る。リリーバーの負荷をどこまでマネジメントできるかが、シーズン終盤になってチームの順位を左右するような気がしてならない。

 指揮官によって、クローザーの起用法はそれぞれだ。セーブ・シチュエーションにのみ起用する指揮官もいれば、5点差以内でも投入する監督もいる。さらに同点、1点ビハインドでも反撃を期してクローザーを投入するケースもある。

 その決断によってゲームの趨勢が大きく変わる。それほど、現代野球はクローザーありきの時代になっている。

 9回で打ち切りとなり、勝負手が早くなってきている中で、それぞれの指揮官はどうマネジメントしていくのか。シーズンの大きなポイントになるに違いない。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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