ドジャースで再起を図る筒香嘉智が見本にするべき苦労人2人の「シンデレラ・ストーリー」<SLUGGER>

ドジャースで再起を図る筒香嘉智が見本にするべき苦労人2人の「シンデレラ・ストーリー」<SLUGGER>

マンシー(左)とターナー(右)は昨季のワールドシリーズ優勝にも大きく貢献するなど今やドジャースの中心選手に。2人の存在は、筒香(中)にとっても刺激となるはずだ。(C)Getty Images

ユニフォームの色を濃紺からドジャーブルーに変えて、筒香嘉智(ドジャース)がリスタートを切っている。5月19日(現地)のダイヤモンドバックス戦では4番・レフトでスタメン出場し、移籍後初ヒットと初打点を記録した。

 課題の打撃について、デーブ・ロバーツ監督は「うちのコーチ陣は欠点や修正点を分かっている」と語っていた。この言葉から、ドジャースは「打撃は改善できる」と踏んでの獲得だと伺える。

 しかも、筒香には格好の「お手本」がいる。三塁手のジャスティン・ターナーと一塁手のマックス・マンシーだ。2人とも、筒香と同じように他球団をお払い箱となりながらドジャース移籍後に再生し、今ではチームになくてはならない存在となった。

 今ではチームリーダーも務めるターナーだが、2013年オフにドジャースに加わった時は28歳のユーティリティ内野手だった。それまでは、率はそれなりに残すものの長打力に欠けた選手で、13年終了後にメッツを事実上の戦力外となってドジャースに加入した。

 だが、ターナーは13年のシーズン終盤から新たな打撃フォームに密かな手応えを得ていた。それまで、野球人生を通じて低いライナーを打つよう指導されていたが、チームメイトに紹介された新たな打法に挑戦。大きく足を上げてステップ幅を広め、前でボールを捉えることによって長打量産を狙ったフォームだった。 当時を振り返り、ターナーは「25年間も染みついた習慣を変えるのは簡単なことじゃない」と語っているが、キャリアの瀬戸際に立たされた28歳はすべてを変える覚悟で新しいフォームに取り組んだ。オフの3ヵ月間で2万回のスウィングをこなすと、迎えた14年は109試合で打率.340を記録した。この年は7本塁打に終わったが、翌年は16本、16年は27本と本塁打数が急増。ドジャース打線の中心を担うようになったターナーは、「フライボール革命の申し子」として知られるようになった。

 今季、チーム最多の8本塁打を放っているマンシーは、技術的な変化で開花したターナーとは対照的に、新天地移籍による心境の変化が成功につながった。

 大学時代から強打で鳴らしたマンシーはプロ入り後も順調にマイナーの階段を駆け上がり、15年にアスレティックスでメジャーデビュー。だが、メジャーではなかなか思うような結果が出せず、17年開幕直前に解雇されてしまう。解雇の直前には「毎日フィールドに出ることさえつらかった」という精神状態に陥っていたマンシー。当時まだ26歳だったが、日本や韓国行きも模索しつつ、一時は引退まで考えたという。

 約1ヵ月後にマイナー契約でドジャースに拾われたが、その年はメジャー出場なし。それでもマンシーは辛抱強くチャンスを待った。翌18年の開幕直後に2年ぶりにメジャーの舞台へ上がると、いきなり35本塁打を放つ大爆発。翌年も同じく35ホーマーを記録し、リーグ有数の長距離砲へ成長した。 アスレティックスを解雇された後、打撃投手を務めて練習相手となった父親は、自信を取り戻したことが何より重要だったと振り返っている。MLB.comの記事によると、元々、選球眼には定評のあったマンシーだが、以前はそれを意識するあまり打席で受け身になってしまっていた。ドジャース入団後も「スウィング自体は特に変わっていない」とのことだが、「メンタル面でもっと積極的になった。以前は打つべきボールを打てていなかったけど、しっかり打てるようになった」という。

 筒香がレイズを戦力外となった時、「もうメジャーでは通用しない」「日本に帰ってくるべき」という意見が飛び交った。だが、筒香もまだ29歳。少年時代から目標にしていた夢をあきらめるには早すぎる。もちろん、今後メジャーで成功できるという保証はどこにもないが、同じことはドジャース入団当時のターナーやマンシーにも言えたはずだ。

 2人のノウハウが直接、筒香にも直接はまるかどうかは分からないが、少なくともターナーの「変化を恐れない姿勢」、マンシーの「挫折を経験しても諦めないメンタリティ」は参考になるはずだ。
  18年にMLB.comに掲載された記事で、マンシーはアスレティックスをクビになった後の心境についてこう語っている。「家にいると、自分を変えなければいけないことに気付くんだ。だって、それまでやってきたことが成功していないわけだから」

 ドジャースが筒香獲得のために費やした負担はメジャー最低年俸の日割分のみ。故障者が復帰するまでにしっかり戦力になれると証明できなければ、チームは躊躇なく戦力外に踏み切れる。新天地でも厳しい状況に変わりはない筒香だが、どん底から這い上がって一流選手としての地位を築いた2人から何かを学べるはずだ。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。

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