“格差”が交流戦を面白くする!セ・12年ぶりの勝ち越しに見た「リーグ間対決」の機運【豊浦彰太郎のベースボール一刀両断!】<SLUGGER>

“格差”が交流戦を面白くする!セ・12年ぶりの勝ち越しに見た「リーグ間対決」の機運【豊浦彰太郎のベースボール一刀両断!】<SLUGGER>

山本(左)の広島戦での快投や、佐藤(右)の西武戦での驚異の打棒など、今年は見どころの多い交流戦となった。写真:田口有史(山本)、山手琢也(佐藤)

2年ぶりの開催となった今季のセ・パ交流戦は、49勝48敗11分で12年ぶりにセ・リーグが勝ち越した。

 16年目を迎えた今年の交流戦は面白かった。佐々木朗希(ロッテ)の甲子園でのプロ初勝利や、佐藤輝明(阪神)の1試合3発、山本由伸(オリックス)の完全試合あと一歩の快投など数々の印象的なシーン。加えて、パ・リーグの終盤の追い上げで、セ・リーグ12年ぶりの勝ち越しが最後まで実現するかハラハラしながら戦況を見守った人も多かっただろう。

 私見だが、今年のセには例年以上の執念が感じられたと思う。巨人の原辰徳監督が8日のオリックス戦で見せた“9人継投”などは、その一例だろう。前回までは、「セとパのどちらが勝ち越すのか?」ということは、主として冠スポンサーのCMテーマでしかなかった。多くのファンにとっては、あくまで贔屓球団の動向こそが大事であり、普段とは異なる相手と戦うことこそが第一の意義だった。しかし、今回は少なくとも以前に比べて、「セか? パか?」の空気は強まったと思う。
  交流戦は、2004年の球界再編騒動を経て、その翌年からスタートしたものだ。オリックスと近鉄の合併計画に端を発したこの騒動は、1リーグ制移行も取り沙汰されるなど、球界を大きく揺るがせた。選手会が史上初のストライキを断行するまで事態が紛糾したこの問題は、新球団・楽天の加入で従来通りの2リーグ12球団制が維持されることで決着を見たが、交流戦はその副産物として誕生した。

 MLBでは、1994~95年の労使紛争によるファン離れ打開策として1997年に始まったア・リーグとナ・リーグの交流戦(インターリーグ)が、プロモーションとして大いに成果を挙げていた。日本でも04年の再編以前から、人気でセに水をあけられていたパ・リーグが交流戦を強く望んでいたが、「人気の巨人戦が減る」という理由で、セ・リーグが拒否し続けていた。だが、球界再編騒動の影響を懸念して、セもようやく重い腰を上げたのだ。
  いざ始まってみると、交流戦は予想通りファンの支持を集めたが、セが勝ち越したのは、これまでは09年の一度だけ。DH制の有無の影響かは分からないが、ずっとパ・リーグ優勢の状態が続いた。すると、主にセ・リーグの側から「交流戦はそろそろ終わりにしていいのではないか」という声も上がるようになった。

 しかし、セの負け続けの傾向が日本シリーズでも同様となり、「セ・パ格差」が取りざたされるようになってからは話が変わってきた。特にここ2年、日本シリーズではソフトバンクが巨人をいずれも4連勝で一蹴。これによって、セの側に「これではマズイ」という機運が相当高まったと言えるだろう。

 09年以降、両リーグはコミッショナー事務局の下に統合され、リーグ会長職も廃止されたが、運営面では依然として足並みが揃っているとは言えない。11年の東日本大震災後の開幕日程に関する不協和音、昨年のコロナ禍でのクライマックスシリーズ開催の有無はその代表例だ。しかし、両リーグに対抗意識が残っていることは、ファンにとって必ずしも悪いことばかりではない。
  交流戦の成績はそのままペナントレースにも反映されるが、これ自体を切り取って順位を競うのはMLBにはないNPB独自のものだ。彼の地では13年に両リーグ15球団制となり、毎日いずれかの球団がインターリーグを行なうようになった。その結果、コンテンツとしてのインターリーグの魅力は、ヤンキース対メッツのようなご当地対決を除いて衰退した。功罪合い半ばするとは言え、両リーグにまだ対抗意識が残っているNPBでは、一定期間に集中して開催し、順位を競う交流戦は大事にすべき企画だろう。

 昭和の昔、プロ野球の構成は「巨人とそれ以外」であり、パ・リーグに至っては存在自体がブルースだった。「黒い霧事件」の影響で骨抜きになった西鉄も、日本シリーズで王貞治(巨人)に被弾しうずくまった山田久志(阪急)も、ロッテのジプシー移動も、「10.19」もブルースそのものだった。

 しかし平成に入ると、パは球団配置の劇的な変更により、地域密着型のビジネスモデルを構築した。イチローやダルビッシュ有、大谷翔平などの世界的スターも輩出し、セと対等に近い人気を誇るようになった。そんな経緯も踏まえると、「パが圧倒し、危機感を持ったセが目の色を変える」図式となった交流戦は一層魅力的になったと感じる。

文●豊浦彰太郎

【著者プロフィール】
北米61球場を訪れ、北京、台湾、シドニー、メキシコ、ロンドンでもメジャーを観戦。ただし、会社勤めの悲しさで球宴とポストシーズンは未経験。好きな街はデトロイト、球場はドジャー・スタジアム、選手はレジー・ジャクソン。
 

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