故障を乗り越えて大輪の花を咲かせた5球団競合右腕・佐々木千隼の決意<SLUGGER>

故障を乗り越えて大輪の花を咲かせた5球団競合右腕・佐々木千隼の決意<SLUGGER>

故障を乗り越え、プロ5年目で大ブレイクを果たした佐々木。写真:産経新聞社

Perfumeの『FLASH』が、ZOZOマリンにこの男が登場する合図だ。静かなイントロから徐々に盛り上がっていく曲調が、自然と球場のムードを盛り上げる。今や、彼がマウンドに上がればマリーンズファンはチームの勝利を確信するまでになった。

「8回の男」として定着した佐々木千隼のことだ。

 今シーズンの佐々木の投球は見事の一言に尽きる。前半戦では31試合に登板して4勝0敗12ホールド、防御率1.06。セットアッパーとして勝利の方程式にも加わり、初のオールスターにも選ばれた。

 好調の要因について本人は、「何なんですかね……」と少し考え込んでから、「真っすぐが変わったというか、良くなったっていうのと、フォアボールが少なくなったところかなと思います」。また、キャンプで投球フォームを微調整したことを明かした上で、「フォームとボールのギャップでバッターが差し込まれたりしてほしいなと思って投げています」と話した。
 「真っすぐが良くなった」「フォアボールが少なくなった」「バッターが差し込まれている」――これらの言葉は、数字上でも裏付けられる。ここまで、ストレートの被打率は1割台、9イニング平均の与四球数は2.37で、プロ1年目の5.06と比べると見違えるほど改善されている。また、本人は「打球内容はそんなに意識していない」と話すが、ゴロ率も55%近くに達し、プロ5年目で最も高い数字となっている。

 27歳にして自己最高のシーズンを送っている佐々木だが、入団してからここまでの道のりは、まさに紆余曲折だった。16年のドラフト1位で桜美林大から入団。外れ1位では史上初の5球団が競合したことで、大きな注目を浴びた。1年目は開幕ローテーション入りを果たして4勝を挙げたが、2年目に右ヒジを故障して手術を受けた。その後2年間も一軍での登板数はほとんどなく、昨季までの4年間で通算わずか27登板、6勝。5球団競合のドラフト1位としては、寂しい数字だった。

 球宴選出が決まった際の会見で、佐々木はこの4年間を振り返って「ほとんどが苦しいというよりつらい」、「自分が思うようなパフォーマンスを出せなかった」と正直な心情を吐露した一方で、「ちょっと気楽にやろう」と思うようになったとも語っていた。その心境の変化について聞くと、「そんなに深く考えなくなったというか、もうちょっと余裕をもっていこうという感じになった」と淡々と話しながら、「気持ちと成績とは別」と付け加えた。あくまでも、開花の要因は技術的な進歩ということだ。
  先発から中継ぎに役割が変わったことで、マウンドに立つ心持ちも変わったのかも聞いてみた。

「役割によって気持ちは変えない方がいいと思っています。何回に投げるかだとか、ビハインドで投げるかとかでは(気持ちは)変わらないです。先発だと1点取られても次の回、次の回というのがありますけど、(リリーフは)1イニングだけなんで、そこの違いかなと思います」

 ただ、先発と中継ぎでは当然、試合への準備は変わってくる。

「先発だと投げる日が決まってて、そこに向かって上げていくんですけど、中継ぎはいつでもいけるように準備しないといけないので、まったく別です。先発も中継ぎもどっちも大変です」

 初のオールスターでは、平良海馬(西武)に「ブルペンでの準備の仕方とか、シーズン中の過ごし方」について聞いたという。自身がこれから取り入れようと思ったことはあったかと尋ねると「活かしていけるというか……僕に出来ることじゃなかったんで」という答えだったが、リリーフという役割について貪欲に学ぼうとする姿勢が見えた。
  後半戦が始まっても、佐々木の勢いはとどまるところを知らない。8月14日のオリックス戦、8回裏2点リードの場面で登板すると三者凡退に抑えて勝利に貢献。20、21日には2日連続で勝ち投手となって6勝とし、早くも過去4年間の合計と同じ数に達した。

「怪我をしないで、少しでも優勝に貢献できるように頑張りたいと思います」と語る佐々木。「怪我をしないで」の部分に重みを感じたのは、これまで故障に悩まされてきたことを思えば気のせいではないはずだ。

 苦しみ抜いた4年間を経て、かつてのゴールデン・ルーキーが大輪の花を咲かせている。

取材・文●村岡範子

【著者プロフィール】
むらおかのりこ。1983年生まれ。軟式野球チームの監督だった父の影響で小学2年からプロ野球ファンになる。大学上京後、チアリーダーとなり、Jリーグクラブの公式チアリーディングチームのメンバーを務める。2018年から二軍観戦にハマり、可能な限り球場へ足を運ぶ。19年にスポーツサイトでNPB担当ライターを経験し、現在はフリーで活動中。

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