「25年ぶりのリーグ制覇」に向け躍進するオリックス。2014年に2厘差で優勝を逃した投打のベテランの想い

「25年ぶりのリーグ制覇」に向け躍進するオリックス。2014年に2厘差で優勝を逃した投打のベテランの想い

準備の大切さを若手に説くオリックスの比嘉幹貴。写真:北野正樹

オリックスが、25年ぶりの優勝に向け10月12日から本拠地・京セラドーム大阪で2位・ロッテとの直接対決に臨む。現在のゲーム差は2.5。優勝に向け負けられない試合が続く。

 その瞬間を心待ちするベテランがいる。24年間、優勝から遠ざかっているオリックスが、最も優勝に近づいた2014年のメンバーだ。2位ながら優勝マジックが点灯し、首位・ソフトバンクとの直接対決となった10月2日、ヤフオクドーム(現PayPayドーム)でオリックスは延長10回、サヨナラ負けを喫し歓喜のソフトバンクナインを見るしかなかった。
 
 このシーズン、優勝したソフトバンクの勝率5割6分5厘に対し、オリックスは5割6分3厘。80勝62敗2分けで、勝ち数ではソフトバンク(78勝60敗6分け)を上回ったものの、わずか2厘差で涙を飲んだ。

 この試合に出場し、現在も選手としてチームに在籍するのは、野手でT-岡田、安達了一、後藤駿太、投手では比嘉幹貴、平野佳寿の5選手。

「すごく悔しかったし、忘れられない出来事」と語るのは、延長10回1死満塁から登板し、ソフトバンク・松田宣浩にサヨナラ打を浴びた比嘉だ。

 場面を7年前に戻す。ソフトバンク・大隣憲司、オリックス・ディクソンの先発で始まった試合は、ソフトバンクが2回に先制。オリックスも7回に追いつき、1-1のまま延長戦に突入。10回、ソフトバンクはオリックスの6番手、マエストリから3四球などで1死満塁とし、松田が代わった比嘉の外角低めの球を左中間にはじき返してサヨナラ勝ち。3年ぶり18度目のリーグ優勝を果たした。
  当時、プロ5年目だった比嘉は、松田との対決について「自分の中ではその時、その時、やるべきことをして結果が出たんで、その後も変わらずしっかりと準備することだけは心掛けている。正解は分からないですけど」と、後悔はしていないという。

 そして「あの打席に関しては、意図していない凄く甘い球がファウルになったり、まあまあ狙ったところに投げた球が打たれたりしたんで、野球って難しいなって感じた。理想は思ったところに投げて抑えることだが、逆球でアウトを取れたりすることもあり、野球は難しい」と続けた。

 松田の打席で野球の難しさを知らされたのは、3球目とサヨナラ打の4球目。初球は捕手の伊藤光が構えた外角低めへボール。2球目の内角への128キロでファウルを打たせ、3球目は外角低めを狙った130キロが真ん中付近へ。松田は打ち損じたのかファウルで救われたが、テレビの解説者が「(松田は)少し力が入るんでしょうね。ど真ん中に近い」というほどの甘い球だった。しかし、カウント1-2からの4球目、外角低めへの131キロを左中間にはじき返された。 
  失投しても打たれないこともあるが、狙い通りにいい球を投じても打たれてしまう。データ解析が全盛でも、人知を超えた勝負の世界がそこにはある。比嘉が辿り着いたのは、「しっかりと準備をして試合に臨み、悔いを残さないようにしよう」と、基本を再確認することだった。

 山本由伸や宮城大弥ら若い投手が躍進を支える今季のオリックス。首位争いに臨む心構えを若い投手から聞かれることが多いというが、比嘉の答えは「普段通りでいいよ」とシンプルだ。「ピッチャーのやることは、優勝争いをしていても変わらない。1アウトを取りに頑張っていくだけ。そのためにはいつも通り、しっかりと準備をして臨みましょう、ということ。それしかないんじゃないですか」。38歳、自身の経験からの答えだ。
 
 今季、2塁を守る守備の名手、安達はプロ3年目で経験したあの試合を「もうあんな経験はしたくないと思った日」と振り返る。「2番・遊撃」で先発出場。5打数2安打とチームに貢献したが、松田のいた2塁付近に集まり歓喜の声に包まれるソフトバンクの選手を呆然と眺め、ベンチに引きあげる左翼手・坂口智隆(現ヤクルト)に右腕を引っ張られ、ようやく重い脚を引きずった。 
  毎年、目標は「優勝」。国指定の難病「潰瘍性大腸炎」の兼ね合いで、フル出場が難しくなり、昨季オフには「僕を追い越す選手が出てこないと、このチームは強くならない」と若手の台頭を熱望した安達。今季は、2年目の紅林弘太郎が開幕から遊撃の定位置をつかみ、自身は2塁に回った。追い出された形にも「若い選手が出てきて、ポジションを固定することが出来ているから強くなってきた。こんなに早く実現するとは思わなかったが、僕としてはすごくうれしいですね」と、チームのためにライバル関係を超越して喜ぶ。

 ともに、入団以来、Aクラスは14年(2位)の一度だけ。比嘉は「優勝を経験するために現役を続けてきた。この世界に入ったのだから、優勝したい。やるしかない」。安達も「いつまで試合に出られるか分からないので、出ている間に優勝したい」と、7年ぶりにつかんだチャンスを逃すつもりはない。

文●北野正樹(フリーライター)

【プロフィール】きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。関西運動記者クラブ会友。

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