竜の若大将は長打力向上を目指すも不発。新天地で振るわなかった“北のジャイアン”【セ6球団の“逆MVP”】<SLUGGER>

竜の若大将は長打力向上を目指すも不発。新天地で振るわなかった“北のジャイアン”【セ6球団の“逆MVP”】<SLUGGER>

中田は巨人移籍後も34試合で打率.154、3本塁打とまったく振るわなかった。写真:産経新聞社

12月15日にMVPが発表され、セ・リーグは村上宗隆(ヤクルト)、パ・リーグは山本由伸(オリックス)が受賞した。では、不振や故障などでファンやチームの期待を最も裏切った“逆MVP”を選ぶとしたら一体誰になるだろうか。セ・リーグ6球団から一人ずつピックアップした。

▼ヤクルト:木澤尚文
 日本一になっただけあって、大きくチームの足を引っ張った選手も、ひどく期待外れだった選手も見当たらない。強いていえば内川聖一とバンデンハークの元ホークスコンビかもしれないが、ここ数年の成績からすれば、期待度も正直それほど高くはなかった。

 というわけで、厳しいかもしれないが期待通りではなかったという点でルーキーの木澤を選んだ。大卒ドラフト1位で即戦力との触れ込みで入団しながら一軍登板なし、二軍でも防御率6点台。10月のフェニックスリーグでは4.1回15失点と大炎上した。他球団のドラ1にも一軍の戦力にならなかった者はいたが、前評判との落差は一番大きかった。
 ▼阪神:チェン

 年俸2億1000万円の2年契約で阪神がチェンを獲得した時点から、いぶかしむ声は聞かれた。20年はロッテで4試合投げただけ、すでに35歳、しかもゴロ系投手とあって、内野守備に不安のある阪神で高額年俸に見合う働きができるのか? と思われていたのだ。

 それでもなお、登板自体が5月までの2試合だけとは懐疑派の想定をも下回るもの。肩を痛め、後半戦は二軍でも投げずじまいだった。スアレス、ガンケル、アルカンタラらが活躍したので、どのみち外国人投手枠は一杯。戦力面でマイナスになることはなかったとはいえ、費用対効果は最悪だった。

▼巨人:中田翔

 日本ハムで出場停止処分を受けていた中田を、巨人がトレードで獲得したのは8月20日。その時点で47勝33敗、勝率.588だったが、加入後は14勝29敗で.326と急降下した。もちろん、その全責任が中田にあるわけではない。だが、本人の成績も34試合で打率.154、3本塁打、OPS.571。これでは起爆剤どころか、燃焼中のエンジンの消火剤だった。

 獲得した経緯の不透明さなどに批判が殺到し、チームを取り巻くムードが悪化したことを考えても、2球団での“逆MVP”はやむなし。来季こそ心機一転、復活してほしい。
 ▼広島:クロン

 外国人選手の目利きに定評がある広島だが、今季はほぼ全員が不振だった。中でも一番期待外れだったのがクロン。マイナーリーグで抜群の成績を残した強打者であるだけでなく、キャンプでも熱心に練習に取り組んでいて、性格面では間違いなく優良外国人だった。

 ところが肝心のバッティングは、変化球攻めに対応できず三振の山を積み重ねた。首脳陣から指導されたダウンスウィングも試みたものの、結果が出ないまま退団が決定。130打数で8二塁打、6本塁打はそこまで悪くなかったけれども、たった6四球の選球眼が命取りになった格好だ。
 ▼中日:高橋周平

 中日打線が歴史的な貧打に苦しんだ最大の要因は高橋の不振にあると言っても過言ではない。前年は初の3割をクリア。さらなるステップアップをとパワー向上を目指して臨んだシーズンだったが、終わってみれば137試合でわずか5本塁打。打率も低迷し、OPSは.662と低迷した。

 おまけに得点圏でも打率.190はリーグワースト2位、21併殺打はワーストと、とことん苦しんだ。「体を開きたくないと意識しすぎて前に突っ込んでいた」ことに気がついたのは、シーズンも押し詰まってからだったらしいが、コーチ陣も含めて「もっと早く気づいてほしかった」というのがファンの総意だろう。

▼DeNA:上茶谷大河

 ほぼ総崩れだった今季のベイスターズ先発陣の中でも、最も期待外れだったのが上茶谷だ。開幕ローテーション入りしながら、4月の4先発で防御率10点台。24日の阪神戦は1回6失点と大炎上し、早々に二軍落ちとなった。その後もファーム暮らしが長引き、5〜9月は1試合投げただけ。シーズン初、そして唯一の勝利は10月8日になってからだった。

 昨年は右ヒジ痛で11試合の登板に終わったこともあり、ケガをしにくい投球フォームを取り入れたものの、球威自体が落ちてしまいサイドスロー気味に修正するなど、試行錯誤したままで終わってしまった。

 文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
 

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