“ハマの新スター”牧秀悟の覚醒の要因は?東京五輪の中断期間に得た「慣れ」と「経験」<SLUGGER>

“ハマの新スター”牧秀悟の覚醒の要因は?東京五輪の中断期間に得た「慣れ」と「経験」<SLUGGER>

一時の低迷を経て、牧はいかにして覚醒したのか。ある時期のきっかけが打撃を見直す契機になった。写真:萩原孝弘

打率.314はセ・リーグ3位、ホームランは22本を数え、打点も71。得点圏打率.304とOPS.890は、規定打席到達者の中ではチームトップの成績を残したスーパールーキー・牧秀悟(DeNA)。

 オープン戦から、田中将大(楽天)らパ・リーグの名だたるピッチャーを攻略し、入団時からの目標でもあった開幕スタメンをゲット。オースティン、ソトら核となる外国人が不在だった打線を牽引した。

 だが、相手チームの研究や腰の違和感もあり、「7月の終わり頃、疲れを感じやすくなった」。交流戦終了時点で.294あった打率は、前半戦終了時には.277まで落ち込んだ。同時期に同じルーキーの佐藤輝明(阪神)も苦しんでいだこともあり、驚異のルーキーの勢いもここまでか、の声も聞こえ始めた。

 しかし、牧はここからが違った。後半戦は打率.372と絶好調。近本光司(阪神)に2分7厘差をつけてリーグダントツの数字を残し、10・11月の「大樹生命月間MVP賞」も獲得し、新人王獲得に向けて猛チャージを仕掛けた。

【動画】“長嶋超え”! 怪物ルーキー・牧が二塁打新人記録更新! 牧が再び上昇気流に乗ったターニングポイントは、オールスター&オリンピックの中断期間だった。

 エキシビションゲームでは2ホームランを放ち、ポイントを近くして逆方向へ“引っ張る”持ち前の強い打球も増加。「1か月空いた時期にいい時間が過ごせましたし、バッティングが改善できましたので、後半戦いい感じになった」と好調を取り戻すきっかけを得た。

 リーグ戦再開後、8月21日の巨人戦で代打として登場し、ホームラン。翌日から一時期外されていたセカンドでスタメンの座を再びつかむと、25日には京セラドームでの阪神戦でルーキーでは史上初サイクルヒットを達成するなどインパクトの大きい活躍を見せた。

 この時点で打率も.292まで上がっていたが、実は9月12日には.276まで打率を下げている。ここから首位打者にも届くかという勢いで再び猛チャージをかけたきっかけは、9月14日の東京ドームでのジャイアンツ戦だった。第3打席、田中豊樹の初球のカットボールを左中間へ運ぶ勝ち越しホームランを放ったのだ。
  そして、翌日は戸郷翔征から第1打席で押し出し後の初球を迷いなく振ってのタイムリーヒット、2打席目はツーベース、3打席目にはホームランと、2度目のサイクルにリーチをかける大暴れ。ここから、ピッチャーを見下ろすような、いわゆる“ゾーン”に入ったような雰囲気を漂わせ始めた。

 その後はチームの連敗中も一人気を吐き、10月に入ると19試合出場で打率.452、ホームランは1本ながら11二塁打を量産し、OPSは驚異の1.138。オースティンの故障により10月6日からは4番を任されると、シーズン終了までの15試合をしっかり重責を担い、打率.517、OPS1.297、得点圏打率ジャスト5割の猛打でフィニッシュした。

 好成績の要因について、牧本人はプロの水になじんだことが大きいと分析する。

「一軍にいさせてもらって経験になりました。特に後半戦はずっと使っていただいて、段々と対応できるようになりました。最初に比べて、シーズンの後半になると対戦したピッチャーだったりとか、試合の入り方とかがだんだん慣れてきたのも良かったです」

【動画】“持ってる男”・牧秀悟が球団8000号アーチをかける!「変化球も真っすぐも振りに行って対応できているところもあり、追い込まれてからでもヒットにできたり、インコースをしっかりさばけけたりと、前半戦できなかったことが後半戦できました」

 初めてのプロの世界の終盤戦ということで「身体の疲れはあった」というが、「それ以上にいい感じで試合に臨めていた」と、気力の充実が肉体の疲労に勝ったと振り返っている。

 ルーキーながら内野の要であるセカンドをほぼ守り続け、打率.314、153安打、260塁打、73得点、60長打、猛打賞14回、複数安打37回、1試合4安打4回はいずれも球団新人タイ、そして、プロ野球新人記録を塗り替える35本の二塁打。あの長嶋茂雄の記録を超える快挙は、本人も「一番印象残っている」と振り返る。

 10月23日〜26日には5打席連続二塁打を放ち、イチローらの4連続を更新するこちらも日本記録を達成するなど、“レコードコレクター”の名を欲しいままにした牧。「好きなようにやらせてもらった」ルーキーイヤーを経て、2年目はチームのために「打点王」を目指して驀進していく。

取材・文●萩原孝弘

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