【西尾典文が選ぶ『最もすごいストレートを投げた高校生5人』】“令和の怪物”佐々木に加えて意外な顔ぶれが<SLUGGER>

【西尾典文が選ぶ『最もすごいストレートを投げた高校生5人』】“令和の怪物”佐々木に加えて意外な顔ぶれが<SLUGGER>

東北の高校生2人、佐々木(右)と風間(左)の球威は数字以上にずば抜けていた。写真:徳原隆元(佐々木)、滝川敏之(風間)

 長年アマチュア野球を見ていると、「これまで見た選手のなかで誰が一番凄かったですか?」という質問をよく聞かれる。投手や野手、カテゴリーによっても異なるため絞るのはなかなか困難だ。

 しかし、ここではテーマとカテゴリーに分けてランキング形式で5人ずつ紹介していきたいと思う。対象は現在の記録をとるスタイルでアマチュア野球を見始めた2001年秋以降の選手とした。今回は「本当にストレートが速かった投手」の高校生編だ。 

5位:泉正義(宇都宮学園→02年ドラフト4位ヤクルト) 

 中学時代から140キロ近いスピードで評判となり、1年夏には早くもリリーフとして甲子園で登板した泉。故障などから一時は野球部を離れていた時期もあったが、3年時には復帰してエースとして活躍した。

 その投球を実際に見たのは2002年夏の栃木大会、対佐野日大戦だった。 後日の報道によると、この日は自己最速の150キロには及ばなかったというが、軽く投げているようでも打者の手元で浮き上がるようなボールの勢いは素晴らしいものがあった。

 また、最近では珍しくない150キロという数字も、当時では規格外のもの。プロでは故障に苦しんで登板できず、わずか3年間での現役生活に終わったが、高校3年夏に見せていたストレートは今でも色褪せてはいない。

4位:甲斐拓哉(東海大三→08年ドラフト1位オリックス) 

 泉と同様に中学時代から大器と評判だったのが甲斐だ(ソフトバンクの正捕手とは別人)。初めて投球を見たのは3年春の長野県大会、対地球環境戦。メリハリのあるフォームから投げ込むストレートは最速148キロをマークし、評判に違わぬ豪腕ぶりを見せつけていた。

 甲斐の凄さは最速だけでなくアベレージの高さだ。 続く北信越大会の対金沢戦でも初回から9回までコンスタントに145キロ以上を記録し、最後まで球威が落ちなかったのだ。ちなみに、この試合では最速149キロをマークしている。

 いかにも投手らしい体格でフォームに目立った欠点がなく、球筋が安定していたことも高く評価した理由である。プロではわずか4年間の在籍で一軍登板は一度もなかったことが、今でも不思議でならない。 

3位:風間球打(ノースアジア大明桜→21年ドラフト1位ソフトバンク) 

 近年では150キロ以上をマークする投手は珍しくなくなった。しかし、昨年の風間が見せたインパクトは指折りだった。最初に見た1年春の東北大会では最速136キロのまとまりのある投手という印象だったが、2年夏には豪腕に変貌し、最終学年ではさらにストレートに磨きがかかっていた。 

 とくに素晴らしいのが、ボールの角度。長いリーチを真上から振り下ろし、183センチという身長以上に上からボールが来るように見える。3年夏の甲子園は天候不順の影響もあって難しい投球となったが、それでも内角を突くボールなどは迫力十分だった。ソフトバンクの充実した施設でしっかり鍛えれば、近いうちに160キロ超えも期待できるだろう。 
 2位:菊池雄星(花巻東→09年ドラフト1位西武) 

 歴代ナンバーワンの高校生左腕と言えば、やはり菊池になるだろう。1年夏に出場した甲子園では正直そこまで凄みを感じなかったが、3年春のセンバツでは別人のような力強さに驚かされたのをよく覚えている。あわやノーヒットノーランだった鵡川戦も素晴らしかったが、とりわけ圧巻だったのが、2回戦での明豊戦。今宮健太(現ソフトバンク)との対戦だ。 

 内角さばきが上手い今宮に対し、あえてその内角の速いボールで真っ向勝負を挑み、完璧に詰まらせたピッチングは見事というほかになかった。右打者は特に向かってくるボールを速く感じると言うが、菊池のクロスファイアーはサウスポーらしい角度も抜群で、打者が思わず天を仰ぐような空振りになるシーンも多かった。 
 1位:佐々木朗希(大船渡→19年ドラフト1位ロッテ) 

 1位は、まったく迷うことなく佐々木を選んだ。高校2年夏に154キロを投げた試合にも驚かされたが、3年春の練習試合で156キロ、3年夏の岩手大会で160キロとその後も順調にスピードアップ。最初に見た時のインパクトが強いと、2回目以降は期待の高さから物足りなく感じるケースも多い。 

 しかし、佐々木の場合はそういったケースが一切なく、常に新鮮な衝撃を与え続けてくれた。スピードガンの数字だけでなく、伸びやかなフォームと安定した球筋も圧倒的なものがあり、すべてのカテゴリー、すべてのポジションの中でも衝撃を受けた選手という意味では、間違いなく歴代ナンバーワンの選手である。 

 他にも内竜也(川崎工)、山口俊(柳ヶ浦)、辻内崇伸(大阪桐蔭)、鶴直人(近大付)、佐藤由規(仙台育英)、藤浪晋太郎(大阪桐蔭)、安楽智大(済美)、今井達也(作新学院)、石川翔(青藍泰斗)、吉田輝星(金足農)、奥川恭伸(星稜)、山下舜平大(福岡大大濠)などのストレートも強く印象に残っているが、当時の突出度とインパクトから5人を選んだ。

 また、大谷翔平(花巻東)については、160キロをマークした3年夏の岩手大会を現地で見ていないということで今回はランクインしていない。現時点で高校時代に160キロを超えたのは大谷と佐々木の2人だが、近年のスピードアップを考えると彼らを超える投手の登場も十分に期待できるだろう。 

文●西尾典文 

【著者プロフィール】 
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。 

【動画】"令和の怪物"・佐々木の圧巻ストレートがこれだ!
 

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