野村克也が「天才」と認めた巧打者、大学球界屈指の打力見せた松坂世代のスラッガー【本当に長打力があった社会人・大学生5選】

野村克也が「天才」と認めた巧打者、大学球界屈指の打力見せた松坂世代のスラッガー【本当に長打力があった社会人・大学生5選】

のちに日本代表の4番も務めた村田。この球史の残る強打者の素質は、大学時代から図抜けていた。(C)Getty Images

長年、アマチュア野球を見ているとよく聞かれるのが、「これまで見た選手のなかで誰が一番凄かったですか?」という質問である。

 投手や野手、カテゴリーによっても異なるため、一概に絞るのは困難ではある。だが、テーマとカテゴリーに分けてランキング形式で5人ずつ紹介していきたい。対象としたのは、現在の記録をとるスタイルでアマチュア野球を見始めた2001年秋以降の選手たちだ。

 今回は「本当に長打力があった打者」の社会人・大学生編をお送りする。

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5位:草野大輔(Honda熊本)

 楽天では野村克也監督(当時)に天才と言われた打撃の持ち主だったが、社会人時代はその長打力も特筆すべきものがあった。初めてプレーを見たのは2002年の都市対抗野球。社会人野球はこの年から金属バットの使用が禁止されたために木製バットを折ってしまう選手が続出するなかでも、草野は特大の一発を放ち、その長打力に驚かされたのをよく覚えている。

 この年から4年連続出場した都市対抗(2004年と2005年はJR九州の補強選手として出場)では、毎年のように東京ドームのライトスタンドへアーチをかけた。29歳という年齢でドラフト指名を受け、4年目の2009年には打率.305をマーク。プロ通算本塁打は26本と目立つ数字ではないが、長打を狙えばもっとホームランが増えた可能性は高いだろう。
4位:岩本貴裕(亜細亜大)

 広島商ではエースで4番として活躍し、3年夏には甲子園にも出場。亜細亜大進学後に外野手に転向し(3年秋以降は投手としても登板)、東都一部通算16本塁打の成績を残した。

 強く印象に残っているのが2年春の東洋大戦での一発だ。試合は1回途中からリリーフした永井怜(元楽天)が見事な投球で亜細亜大打線を抑え込み、東洋大が1点リードのまま9回もツーアウト。そこで打席に入った岩本のあたりはレフトへの力ないフライに見えたが、そのままスタンドまで届く同点ソロとなったのだ。

 スタンドにいた誰もが試合終了を確信したはずで、打たれた永井の呆然とした表情はスタンドからもよく分かるほどだった。プロでは2年目に14本塁打を放ったものの、その後は目立った成績を残せなかったが、大学時代に見せていたパワーは色褪せはしない。

3位:村田修一(日本大)

 2000年以降にプロ入りした大学卒の選手では、阿部慎之助(中央大→巨人/406本)に次ぐ通算360本塁打を誇るのが村田だ。東福岡では投手だったが、日本大進学後に野手に転向。3年秋にシーズン最多タイ記録となる8本塁打を放って一気に注目を集めたが、印象深いのは、大学生活最後の試合となった4年秋の東洋大戦だ。

 プロ入り前最後の試合であったため、多くのスカウトと報道陣が見つめるなかで、村田は2本のホームランを放ち、大学通算本塁打数を20本の大台に乗せてみせた。豪快にフルスイングして飛ばすというよりも、コースに逆らわずに合わせるようにして逆方向へも軽々とスタンドインさせてしまう。その打撃はとても大学生とは思えないものだった。プロでも1年目から25本塁打を放っているように、球史に残る大学生スラッガーだったのは間違いない。2位:渡部健人(桐蔭横浜大)

“おかわり三世”として期待がかかる巨漢のスラッガーを2位とした。高校時代から東京都内では評判の強打者だったが、本格化したのは大学最後となった4年秋のシーズン。10試合で8本塁打、23打点という驚異的な成績を残してチームの優勝に大きく貢献。そして強烈な印象を残したのがリーグ戦後に行なわれた横浜市長杯の中央学院戦だ。

 2回裏の第1打席に放った打球はレフトスタンド最上段へ着弾する特大ホームランとなったのだが、その打球の勢いと飛距離は今まで見たどのホームランよりも凄いものだった。この大会でのホームランは結局この1本だけだったが、その後の試合でも鋭い当たりと長打を連発し、ドラフト1位での指名を納得させる活躍だった。

 プロ1年目の昨年は二軍で19本塁打を放つなどその長打力を発揮している。それだけに、今年は一軍でも特大アーチを量産してくれると期待したい。
1位:西郷泰之(三菱自動車川崎→三菱ふそう川崎→Honda)

 社会人のホームランバッターと言えば、やはり西郷がナンバーワンになるだろう。5位の草野のところでも触れたが、金属から木製になっても変わらぬ長打力を発揮し、都市対抗で放ったホームランは歴代最多タイの14本。体格は大柄だがそのスイングは力感に溢れているというよりも元々決められたスペースにバットを通しているような印象を受ける。ホームランはパワーだけでなく技術で打つという認識を与えるようなバッティングだった。

 35歳を過ぎてもチームの中軸としてホームランと長打を放ち、都市対抗優勝6度が示すように、チームの勝利に対する貢献度の高さも光った。所属チームの休部により移籍こそしたが、高校を卒業して社会人球界で25年にわたって第一線でプレーし続けたのは見事という他ない。

 他の候補としては林稔幸(SUBARU)、多幡雄一(Honda)、松田宣浩(亜細亜大)、神戸拓光(流通経済大)、吉田正尚(青山学院大)、大山悠輔(白鴎大)、岩見雅紀(慶応大)、佐藤輝明(近畿大)などの長打も印象深い。

 スラッガーというと、ポテンシャルへの期待もあり、どうしても高校生に注目が集まりやすい。だが、近年は吉田、大山、佐藤など大学卒の強打者も活躍している。それだけに、今後も大学、社会人で大きく開花する長距離砲が出てくることを期待したい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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