鈴木誠也と大谷翔平――日本が誇る強打者の“渡米前2年間”を徹底比較! データから「共通点」「相違点」を解き明かす<SLUGGER>

鈴木誠也と大谷翔平――日本が誇る強打者の“渡米前2年間”を徹底比較! データから「共通点」「相違点」を解き明かす<SLUGGER>

日本球界でも飛び抜けた存在感を放っていた鈴木(左)と大谷(右)。写真:THE DIGEST写真部

2021年、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)はMLBの歴史に名を刻んだ。そして今年、新たに日本球界のスーパースターが海を渡ろうとしている。鈴木誠也(シカゴ・カブス)である。16年から広島の3連覇に大きく貢献し、東京五輪でも4番を務めた日本球界最強打者だ。

 奇しくも、鈴木と大谷は27歳の同い年。DELTAの協力のもと、日本最後の2年間を徹底比較。大谷と鈴木の「共通点」と「相違点」を解き明かしていく。

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※データ提供:DELTAGRAPHS
プロ野球のデータ収集、セイバーメトリクスを用いた分析を行う組織。客観的、統計的な視点から野球に関するさまざまな考察を発表している。アナリストによる分析論考集『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート5』が4月6日に発売。

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■打撃1:両者とも総合的な打力は高いレベルで拮抗

 今回は大谷、鈴木ともに渡米直前2シーズンのデータで比較する。これは大谷が22〜23歳、鈴木が26〜27歳にあたるシーズンだ。この期間は鈴木の完成度が十分高まった時点であるのに対し、大谷はまだ発展途上の段階にあたる。その意味では、鈴木が勝るのは当然だ。今回は優劣をつけるためではなく、鈴木のメジャーでの活躍を占う参考として成績を見ていく。

 はじめに両者の打撃総合力について比較しよう(画像)。打率・出塁率・長打率で見ると、2人が日本球界で圧倒的な成績を残し、渡米していると分かる。渡米直前2シーズンにおいて、2選手はともに打率3割、出塁率4割をクリアし、長打率は6割近くに到達。鈴木に至っては昨季、3部門ともリーグ1位の成績を残した。

 リーグ平均の野手を100とした時の打撃傑出度を表すwRC+で見ると、大谷が173で鈴木が175と、ともに平均的な野手の1.7倍以上の攻撃力を発揮。総合的な打力についてはそれほど差はなかったようだ。鈴木は大谷と同等の攻撃力を有する打者として、MLBに挑むことになる。■打撃2:選球眼含めた打撃技術は鈴木に軍配。大谷のパワーは日本時代から突出

 次に両者の具体的な打撃スキルの比較をしてみよう。まずはコンタクトスキルだ。コンタクト率を見ると、大谷の69.7%に対し、鈴木は80.6%と大きく上回っている。コンタクト率のNPB平均は80%弱で、スラッガータイプの打者は平均を下回ることも多い。空振りを恐れず強振するためだ。しかし鈴木の場合、本塁打を数多く放ちながらも高いコンタクト率も実現している。

 このコンタクトスキルの差は三振率に直結している。大谷はリーグ平均の20%を大きく上回る26.3%。「三振を恐れない長距離打者」という表現が当てはまる。実際、渡米後もその傾向は加速しているが、日本時代からある意味で”メジャーっぽい”打者だった。

 それに対して、鈴木の三振率はわずか15.4%。本塁打王争いの常連であることを考えると驚異的だ。鈴木に関してはむしろ、「コンタクトヒッターに長打力のオプションがついた打者」という表現が適切かもしれない。
 続いて選球眼はどうだろうか。鈴木はこの分野でも超一流の能力を発揮している。そもそも鈴木はスイングの頻度が非常に少ない打者である。大谷のスイング率がNPB平均に近い43.4%だったのに対し、鈴木はわずか35.9%(画像内表C)だ。

 このスイング率の低さは、ボール球に手を出さないことにもつながる。鈴木のボール球への同率は19.7%で、昨年はセ・リーグベストの数字だった。そして、優れた選球眼によって鈴木は多くの四球を獲得しており、四球率は15.2%の高率。大谷もNPB平均(約9%)を上回る12.7%を記録しているが、やはり鈴木の選球眼はかなり高レベルにあることは間違いない。

 ちなみに、大谷はボール球スイング率がリーグ平均より悪い31.0%と、決して優れた選球眼の持ち主とは言えない。しかしそれでも多くの四球を獲得できたのは、長打力によるところが大きい。投手は大谷の長打を恐れ、くさいボール球で勝負することが多かった。一方の鈴木は長打力もありながら、さらにハイレベルな選球眼も備えている打者だ。MLBでも多くの四球が期待できるのではないだろうか。 両者の真骨頂であるパワーはどうだろう。ただ、日本での最後の2年間は打席数に大きな差があるため、本塁打数での比較は適切ではない。全打席における本塁打の割合を表す本塁打率で比較しよう(画像内表D)。

 この期間、大谷が4.9%の割合で本塁打を放っていたのに対して鈴木は6.0%で、上回っている。長打率−打率で算出し、純粋な長打力を示すISOでも、大谷の.244に対し鈴木は.283で勝っている。

 大谷はMLBで本塁打王を争ったほどの打者だ。その大谷を長打系指標で上回ったということは、鈴木にも同じ活躍を期待できるということだろうか。しかし、ここで改めて注意したいのが、両者がこの成績を残した年齢だ。鈴木が26〜27歳と打者として完成度が十分高まったタイミングであるのに対し、大谷は22〜23歳と未熟な時点での成績だった。

 当時の大谷が打者として未完成だったことはデータからもうかがえる。この期間に放った打球がフライ打球割合を比べると、鈴木の56.0%に対し、大谷はほぼリーグ平均レベルの42.3%にとどまっている。フライは長打の源泉といってもいい。

 どれだけパワーがある打者でも、フライを打てなければ、つまり打球に上向きの角度をつけられなければ、長打を多く放つことはできない。NPB時代の大谷は長距離打者であるにもかかわらず、その源となるフライをそれほど打てていなかった。
 ただ、大谷が鈴木を大きく上回る長打指標もある。HR/FBだ。この指標は、放ったフライが本塁打になった割合を表している。先ほど長打発生の源としてフライ割合を挙げた。HR/FBはその次の段階、上がったフライがどれだけ本塁打になっているかを示し、スタンドに運ぶ能力、いわばパワーを探る指標だ。

 これを見ると、大谷の値は19.1%。打ったフライの20%近くをスタンドインさせていたことになる。NPB平均はおおむね7〜8%で、鈴木の15.8%が低いわけではないが、大谷の数字がより突出していた。

 当時の大谷はフライを打つ能力こそ秀でていなかったが、フライをスタンドに運ぶ能力については図抜けたものを持っていたようだ。ちなみに、大谷はメジャーでフライを多く放つ打者に変化している。もともと持っていたパワーに、フライを打つ能力も備わったことで本塁打を量産したと考えられる。

 こうして見ると、鈴木に大谷ほどのパワーポテンシャルがあるとは考えづらい。NPBにおいて大谷以上のパワーを示しているからといっても、鈴木も同じように本塁打王を争うことができると想定するのはやや非現実的かもしれない。
 ■打撃3:鈴木は150キロ以上の速球にも高い対応力を発揮

 鈴木はこれまでとは異なる環境でプレーすることになる。新たな環境で目に見えて大きな変化となりそうなのが投手の球速だ。昨シーズンのセ・リーグのストレート平均球速は145.4キロだったが、MLBは93.5マイル(約150.5キロ)で、日本の“大台”が標準レベルになる。

 では、両者はNPB時代にスピードボールにどのような対応を見せていたのだろうか。ここでは、日本時代からの対応が課題とされていた筒香嘉智も対象として比較していく。

 3人のスピードボールへの対応力には大きな差がある(画像)。大谷は150キロ未満の速球には打率.434だったのに対し、150キロを超えると.217と大きく成績を落としていた。一方、「150キロ以上が打てない」と言われてメジャーでも苦戦していた筒香は150キロ未満/以上にかかわらず打率は.250を上回る程度。球速にかかわらず、そもそも速球を苦手にしているように見える。
 一方の鈴木は球速帯にかかわらず打率.320以上とさすがの好成績。長打についても、大谷が23打数で1本も出ていなかったのに対し、鈴木は65打数で5本塁打、長打率も.600と打ちまくっている。コンタクト率も150キロ未満の92.4%と遜色ない数字(89.4%)を残しており、改めて対応能力の高さがうかがえる。

 コンタクト率を見ると、筒香が69.2%/82.3%と150キロ以上にはやはり苦しんでいたようだが、大谷はむしろ150キロ以上に87.0%、未満に78.5%と当てること自体はできていた。大谷はメジャー1年目のオープン戦で不振に苦しみ、開幕直前に足を高く上げないフォームに変更。これが功を奏し、すぐさま好成績を残した。

 もしかするとこのアジャストがスピードボールへの対応を可能にしたのかもしれない。鈴木はNPBにおいて、すでにスピードボールに対応できているため、当時の大谷ほどの大きなアジャストは必要ないかもしれないが、少なからず環境の変化への対応は求められるはずだ。そしてそれが、MLBでの成功のカギを握ると言っても過言ではないだろう。
 ■走塁:盗塁数では見えない鈴木の走力

 大谷も鈴木も走塁がメインの武器ではないが、2人とも素晴らしい走力を備えている選手だ。大谷は2021年シーズンに26盗塁を決め、投げる・打つに加え、走塁でも優れた選手であることを印象づけた。

 ただ、NPB時代の2016〜17年はわずか7盗塁(画像内表F)。投手でのパフォーマンスに気を遣ってか、それほど積極的に走っていなかったようだ。これにより、盗塁による得点貢献を示すwSBは0.0となっている。一方、盗塁以外の走塁による得点貢献を示すUBRは3.7の好成績を残した。

 鈴木も16年、17年にそれぞれ16盗塁。19年には25盗塁を記録したが、20年は6盗塁、昨年は9盗塁と自重傾向にあった。ここ2シーズンのwSBは-0.2、UBRは0.8とともに平均レベルにとどまっている。

 盗塁や走塁指標は平凡だったものの、走力に衰えが見られるわけではない。打ってから一塁に到達するまでのタイムで見てみよう(画像内表G)。計測に成功した一塁到達タイムを選手ごとに上位10件を取り出してその平均をとると、鈴木は4.02秒。

 これは右打者12球団全体6位の数字となっている(10件以上計測に成功した打者を対象)。上位には俊足で鳴らす選手がずらり並んでおり、鈴木のスピードがうかがえる。主たる武器ではないが、走塁も鈴木の強みになる可能性は十分にある。
■守備:強肩は本物だが、ライト線の守りに不安?

 大谷はNPB時代に野手としてほとんど守備についていない。そのため、ここでは鈴木のライト守備を単独で見ていく。

 まず、鈴木のライト守備がNPBでどのレベルと評価されているのか、同ポジションの平均的な守備力の選手に比べてどれだけ失点を防いだかを表すUZR(Ultimate Zone Rating)で比較を行う(画像内表H)。2020〜21年で見ると、鈴木の値は11.4。2シーズンで平均的なライトより11.4点多く失点を防いだと評価されている。NPB全体では3位。1、2位と僅差の好成績をマークしている。内訳を見ると、一般的に差をつけづらい進塁抑止の項目で優れた数値を記録しており、鈴木の肩の強さがうかがえる。

 守備範囲はどうだろうか。ここでは鈴木がどういった打球に対し、強み・弱みを見せていたか守備範囲指標を使って図示する(画像内図A)。エリアが赤くなるほど平均より多く失点を防いだ、青くなるほど失点をより多く喫したと考えることができる。

 これを見ると鈴木は全体的に優れた値をマークしていることが分かる。特に定位置近辺は満遍なく失点を防いでいるようだ。定位置から後方で赤いエリアが目立っており、より得意としているようにも見える。青が目立つのはライト線。このエリアの守備において、鈴木は明確に他のライトより失点を増やしてしまっている。原因は定かではないが、MLBでのプレーにおいて注目したいポイントの一つである。

文●大南淳(『DELTA』)

※『SLUGGER』2022年5月号より転載

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