“投票疲れ”も障壁に!? トラウトも達成していない「2年連続MVP」を目指す大谷翔平がクリアすべきハードル<SLUGGER>

“投票疲れ”も障壁に!? トラウトも達成していない「2年連続MVP」を目指す大谷翔平がクリアすべきハードル<SLUGGER>

過去の2年連続MVPはミッキー・マントルやバリー・ボンズら錚々たるスターばかり。大谷もレジェンドたちの仲間入りができるか?(C)Getty Images

今年も大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)の活躍には期待できそうだ。オープン戦は13試合で3本塁打。現地時間4月7日のヒューストン・アストロズとの開幕戦では4.2回を4安打1失点、9奪三振と好投。チームは敗れたが見事なピッチングを見せてくれた。昨年に続いてMVPを受賞するのではないかとの期待も高まっている。

 とはいえ、2年連続MVPは両リーグ合わせてもこれまでに13人(14回)しか達成されておらず、ハードルは高い。何しろ現役最高の選手の一人で、MVPを3度受賞しているチームメイトのマイク・トラウトですら達成していない快挙なのだ。

 だが、老舗米メディア『Sporting News』のライアン・フェイガンは「健康であれば他の選手に勝ち目はない。22年だけではなく、23年も、24年もだ」と、二刀流の価値はそれほどまでに高いと主張。また、米スポーツ専門局『ESPN』のデビッド・ショーンフィールドも「打率.276、42本塁打、13勝4敗、防御率2.99」と具体的な数字を挙げてMVPになると予想。その他多くのメディアのMVP予想でも3位以内に挙げられており、ベッティングサイトのシーザーズ・スポーツブックのオッズも1位だった。
 一方で、懐疑的な声もないわけではない。米放送局『CBS Sports』のマット・スナイダーは「昨年のように健康状態を維持したまま、投打ともハイレベルのパフォーマンスを保てるだろうか」と体力面の不安を示唆。これはスナイダーに限らず多くの人が心配している点で、ジョー・マッドン監督も「問題になるのは健康面だけ」と述べている。

 昨年まではナ・リーグの球場だと半強制的に休養を取れたが、両リーグでDH制が採用され、出場機会の増加が見込まれる。体調面の管理は今まで以上に注意が必要になるだろう。成績もさることながら、これが連続MVPの最も重要な条件であるのは言うまでもない。 スナイダーは加えて「投票者は同じ選手を続けて選びたがらない傾向がある」点、いわゆる”ボーター・ファティグ(投票疲れ)”が障害になるかもしれないとも指摘した。これはあながち穿った見方とも言えない。投打二刀流のインパクトがどれだけ絶大であっても、「大谷にとっては当たり前」と見なされれば、昨年と同程度の成績では物足りなく思えてしまうかもしれないのだ。

 NBAロサンゼルス・レイカーズに、ラッセル・ウエストブルックという選手がいる。得点・リバウンド・アシストの3部門すべてで1試合平均10以上を記録する「トリプルダブル」と呼ぶが、ウエストブルックは16−17シーズンにこれを達成。史上2度目のレアな記録とあってMVPに選ばれた。

 ところが、彼はその後も何度もトリプルダバブルを達成し、すっかり「当たり前」になってしまった。その結果、4度目のトリプルダブルを記録した昨年はMVP投票で11位に甘んじている。大谷の場合、仮に今季40本塁打を放ったとしても「昨年より6本も減少した」と見られてしまう可能性がある。

 こうした懸念を吹き飛ばすには、3つの方法がある。1つはもちろん、昨年を上回る活躍をすることだ。打撃なら本塁打王獲得、50本の大台到達、30本塁打&30盗塁達成などが考えられる。また、打撃成績が多少下がったとしても、投手としてタイトルを獲得したり、シーズン200奪三振をクリアする、といった分かりやすい活躍があれば、やはり確率は高まるだろう。ノーヒット・ノーランを成し遂げ、同じ試合でホームランを放つというような、大谷にしかできそうもない芸当も、かなりの強いインパクトを与えるはずだ。
 2つめは、エンジェルスが地区優勝ないしはプレーオフ進出を果たすこと。MLBでは日本ほどチーム成績がMVPの投票結果を左右しないけれども、プラス材料になるのは間違いない。日本ハムでMVPになった16年、リーグ優勝を決めた試合で1安打完封勝利を収めたことを記憶している人もいるだろうが、このような大一番での活躍は強烈な印象を与えるだろう。

 そして最後は、WAR(MLB最低辺の選手と比べてどれだけ勝利を増やしたかを示す総合指標)の数値をさらに向上させることだ。昨年は投打合わせて9.0(Baseball Reference版)でMLB1位。もし10の大台を突破できれば、受賞はほぼ確実になると言ってもいい。WARの概念が広く知られるようになった15年以降でこの数字を超えたのは、16年のトラウトと18年のムーキー・ベッツ(当時レッドソックス/現ドジャース)のみで、2人ともその年のMVPに輝いている。

 もちろん、大谷がどれだけ活躍しても、他の選手が同等以上のインパクトを残す可能性もある。だが少なくとも、シーズンを通じて健康を保ち、今季も我々を驚かせる活躍を見せてくれれば、それだけで2年連続MVPの確率は大きく高まる。史上14人目の快挙達成で、“大谷伝説”の第2章を飾ることに期待したい。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
 

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