佐々木朗希の完全試合で光った高卒ルーキー・松川虎生の「芸術的リード」。吉田正尚らを牛耳った配球の妙<SLUGGER>

佐々木朗希の完全試合で光った高卒ルーキー・松川虎生の「芸術的リード」。吉田正尚らを牛耳った配球の妙<SLUGGER>

球史の残る19奪三振の圧巻ショーで完全試合を達成した佐々木。彼の快投を引き出した松川もまた、同じく称えられるべき活躍だった。写真:産経ビジュアル

4月10日、ZOZOマリンの地で伝説が誕生した。ロッテの佐々木朗希がオリックスを相手に28年ぶり、史上16人目の完全試合を達成したのだ。しかもそれは、ただのパーフェクト・ゲームではなかった。

・史上最年少20歳5ヵ月での完全試合達成
・プロ野球新記録の13者連続奪三振
・歴代最多タイの1試合19奪三振
・歴代2位の34イニング連続奪三振

“令和の怪物”は、これだけの歴史的偉業を、同日に達成したのだ。もっとも、大記録のうちの一つは初回で潰える可能性もあった。

 1回表、佐々木は2つのアウトをゴロで記録。そこで迎えたのが、昨季両リーグベストの三振率5.5%をマークした天才打者・吉田正尚だった。パワーとアベレージ、選球眼を完備した相手から三振を奪うのは難しい。そう思ったファンも少なくなかったはずだ。しかし佐々木は、いやもう一人の“主役”は違った。

 完全試合達成者として、その名が語り継がれるのはピッチャーだ。それは当然のことで、投手がしっかり投げることができなければ、27者連続でアウトを取ることなどできるはずもない。しかし、この試合を見ていて改めて感じさせられたのが、「ピッチングとは投手と捕手の共同作業」ということだった。

 今回の佐々木の完全試合で、高卒ルーキー・松川虎生が果たした役割を見逃してはならない。
  吉田の場面に話を戻そう。佐々木と松川は、初球に外角速球で見逃しストライクを稼ぐと、続く2球目は同じ軌道からフォークで空振り。早くも相手を追い込んだ。日本的な配球ではここで「1球外す」こともちらつきがちだが、若いバッテリーは違った。2球目よりもフォークをストライクゾーン中央に投げて吉田にスウィングを“選択”させ、空振りを奪ってみせたのだ。

 フォークなど落ちる球で空振りを狙う時、捕手は往々にしてミットを地面に叩くような仕草を見せる。ボールが甘くならないように投手へ意識づけるためだ。しかし松川は一切そうした素振りを見せず、「ゾーンで勝負」という態度を取っていた。

 そしてこれが、試合全体を通じて生きることになる。

 この吉田の三振で、佐々木は26イニング連続奪三振を記録し、2020年の山本由伸(オリックス)を抜いて日本人投手最長記録を樹立した。だが、この快挙を忘れさせるほど、その後は佐々木のギアが上がっていった。2回・3回と三者連続三振を奪い、4回も2者連続。そして日本新記録を懸けて、再び吉田と相まみえた。

 初球、佐々木と松川のバッテリーはカーブでファーストストライクを稼いだのだが、実はこの試合を通じて初球でカーブを投げたのはこの打席だけ。完全に虚を衝かれた吉田は、ただ見送るしかなかった。そして2球目もカーブ。ストレートを狙っていた吉田は大きな空振りで追い込まれた。

 3球目は1打席目と同じフォークを投げるもファウル。この時、松川は吉田が構えに入るまで凝視して狙いを読み解くと4球目、佐々木は先ほどよりも鋭いワンバウンドするような高速フォークを投じて三振を奪い、プロ野球新記録の10者連続奪三振を飾った。

【動画】佐々木が脅威の奪三振ショー! オリックスで見せた“歴史的ピッチング”をチェック
  最終的に13連続奪三振まで伸ばした佐々木だったが、7回に完全試合があと一球で幻に終わるシーンがあった。先頭の1番・後藤駿太を迎えた場面で、カウント3-0となったのだ。3球連続でストレートが外れた後、佐々木は少し間を置くと、松川のサインに首を振った。おそらくこの試合で唯一と言っていい場面だった。

 しかし、次のサインに納得した怪物はストレートでストライクを稼ぐと、続く5球目も速球で力のないライトフライに打ち取って窮地を脱した。そして吉田に3打席目が回ってくる。カウント2-1、不利なカウントになったが、ここで安易に速球を投げずフォークで空振りを奪って2-2。

 5球目、インコースに構えた松川のミットに、完璧に163キロのストレートを投げ込んで見逃し三振に打ち取ってみせた。それまでの2打席は外角へのフォークを決め球としていた中で、内角ストレートはおそらく吉田の頭にもなかったのではないか。もしかしたら松川は、最高の場面で使おうとあえて取っておいたのかもしれない。そう思わせるほどの見事な配球だった。
  感染症対策もあって声は上げられないが、「あと一人! あと一人!」のコールが聞こえてくるほどの感覚すらあった9回2死。オリックスはここで昨季の本塁打王・杉本裕太郎を代打に送った。前日まで17打席連続無安打の不振でスタメン落ちしていた大砲との対戦。ここでも松川のリードが冴える。

 6回の宜保翔から、バッテリーは8人連続で初球にストレートを投げていた。おそらく杉本もそれを読んでいてのだろうが、佐々木と松川が選択したのはフォーク。強振した杉本をあざ笑うかのよう空振りを奪う。2球目もフォークでストライクを稼ぐと、最後も伝家の宝刀フォークで空振り三振を記録し、完全試合を達成したのだった。

「最後まで松川を信じて投げました」

 試合後、佐々木は後輩に感謝の言葉を述べた。振り返れば、試合を通じてほとんど首を振ることがなく、松川のミットをめがけて投げていた姿からは、2歳年下の女房役への揺るぎない信頼感が見え隠れしていた。松川にしても、打者の機微を察知しながら、ストライクゾーンで勝負し続け強気な配球で、結果的に球数を減らすことにも貢献していた。

 20歳の佐々木朗希、18歳の松川虎生による共同作業で生まれた芸術品は、記録にも、記憶にも残る名試合となった。

文●新井裕貴(SLUGGER編集部)

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