開幕から閑古鳥が鳴くアスレティックスの“歪み”。1試合で2703人しか集められなくても利益を上げられる理由とは?<SLUGGER>

開幕から閑古鳥が鳴くアスレティックスの“歪み”。1試合で2703人しか集められなくても利益を上げられる理由とは?<SLUGGER>

空席の目立つリングセントラル・コロシアム。もはやファンはアスレティックスの試合を球場で見ることに魅力を感じていない。(C)Getty Images

開幕からアスレティックスの観客動員が振るわない。4月18日のホーム開幕戦(対オリオールズ)ですら、収容人員(約3万5000人)の半分程度となる1万7503人にとどまり、20日の同カードでは何とわずか2703人。1980年9月9日のレンジャーズ戦で2443人を集めて以来の低水準だった。4月30日時点での1試合あたりの平均観客動員数は、わずか8356人だ。

 アスレティックスはもともと不人気チームで、コロナ禍の2020年を除く過去5シーズンの観客動員はメジャーワースト5位。加えて対戦相手が低迷中のオリオールズだったという事情もあるが、かつてのパ・リーグのような閑古鳥状態はそれ以外にも理由がある。

 まず一つは、主力選手を大量に放出する“ファイヤーセール”を敢行したことだ。ロックアウトが明けた2日後の3月12日、昨季32登板で12勝4敗、リーグ最高勝率.750を記録したクリス・バシットをメッツへトレード。そのさらに2日後には、昨季39本塁打を放った主砲のマット・オルソンをブレーブスへ、22日にはゴールドグラブ3度の三塁手マット・チャップマンもブルージェイズへ放出し、一気に戦力がダウンしてしまった。スター選手不在の上、マイナーにも若手有望株がほとんどいないので、そもそも見どころが少ないのだ。
  アスレティックスがファイヤーセールを敢行するのは今回が初めてではない。大物FA選手を獲得する資金力がないアスレティックスは、有望な若手を育て上げてチームを強くし、彼らがFA権を取得する時期が近づくと放出して再建モードに入るというサイクルを3〜4年周期でずっと繰り返してきた。今回のファイヤーセールは確かに衝撃的だったが、ファンにとっては何年かに一度の恒例行事という言い方もできなくはない。

 ここまで観客動員が低迷している最大の理由は、簡単に言ってしまえばアスレティックスにその気がほとんどないからだ。

 アスレティックスはもうかれこれ10年近くも新球場建設/本拠地移転を模索してきた。現在の本拠地であるリングセントラル・コロシアムは、24年限りでオークランド市とのリース契約が切れる。オークランド市内に新球場を建設する計画もあるが、球団は州をまたいだラスベガスへの移転に傾いているともいわれる。
  だからなのか、球団は現球場での集客を重視していないようだ。球団はコロナ禍による減収と財政難を理由に、今年からチケット代を値上げ。外野席のシーズンチケットのファンクラブ価格は、19年の456ドルから840ドルへほぼ倍増、加えて駐車場の料金も30ドルへ上がり、ファンから不満が続出していた。球団はPRもほとんど展開していないようで、オークランド周辺の広告やコマーシャルは同じベイエリアに本拠を置くジャイアンツのものばかりだという。

 そもそも、観客がいくら減っても球団には多額の固定収入が保証されている。MLBは今年になって『Apple TV』などで新たに試合中継を開始。アスレティックスが受け取る放映権料収入は約6000万ドルにまで増えたという。
  今回の労使交渉では、一向に戦力を強化しようとしないチームへの対策として年俸総額に下限を設定することも検討されていたが結局は見送られた。このため、アスレティックスは何の障害もなくコストカットに大ナタを振るうことができた。

 ちなみに、アスレティックスの今季開幕時の年俸総額はおよそ4800万ドル(MLB29位)で、昨年(約8400万ドル)の半分程度。マックス・シャーザー(メッツ)一人の年俸(4333万ドル)とほぼ同じで、1位のドジャースの2割にも満たない。

「ファンあってのメジャーリーグ」のはずが、球場で閑古鳥が鳴いていても利益を上げることができる。今季のアスレティックスは、近年のMLBの「歪み」の象徴と言ってもいいのかもしれない。

構成●SLUGGER編集部
 

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