ライバル球団は佐々木朗希をどう打ち崩すべきか? データで探る“令和の怪物”攻略の糸口は――<SLUGGER>

ライバル球団は佐々木朗希をどう打ち崩すべきか? データで探る“令和の怪物”攻略の糸口は――<SLUGGER>

佐々木の投球に今シーズン多くの打者が苦戦を強いられている。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

ロッテの佐々木朗希が休養を経て一軍の舞台に帰ってくる。ふたたび歴史的な投球を期待するファンも多いだろう。ただ相手も選りすぐりの人材が集まるプロ野球。指をくわえて見ているわけがない。

 当然、ライバルたちも佐々木のこれまでの投球を研究し、対策を練っているはずだ。そこで今回は対戦チームから見て、佐々木攻略にどういった攻略の糸口があるのか考えてみたい。

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 まず、前提として共有しておきたいのは、どのような方法をとったとしても佐々木の攻略は極めて困難であるという点だ。彼は対戦打者の半数近くを三振にとっており、打球を前に飛ばすこと自体が難しい。また、それでなおかつ四球を与えることも極めて稀だ。今回攻略の糸口を提示できたとて、その可能性も極めて低いことを前提に話を進めたい。

 さて、ここまで圧倒的な投球を見せる佐々木だが、実は明確な弱点を抱えている。それは走者ありという状況下での投球だ。佐々木は昨季の一軍デビュー戦で5盗塁を許したことが話題となったが、走られるだけでなくシンプルに投球の質を落としているのだ。

 リーグ平均が約20%となるK%(打者に対し三振を奪う割合)について、今季の佐々木は走者なし時に54.8%と異常な高値を記録している。ただこれが走者ありとなると29.0%にまで落ち込む。この29.0%も昨季沢村賞を獲得した山本由伸(オリックス)クラスの値ではあるのだが、佐々木の中では相対的に低い。つけ込む隙であるのは間違いない。

走者なし時    K%54.8%    BB%3.2%
走者あり時    K%29.0%    BB%6.5%
BB%:打者に対し四球を与える割合

 ただこの戦略を採用するにも問題はある。そもそも佐々木から走者を出すのが難しいのだ。ではどうすれば走者を出すことができるだろうか。

 対策として考えられるのが左打者を並べることだ。佐々木は今季右打者に対して1つも四球を与えていないのに対し、左打者には5つ与えている。もちろん左打者に対してもほとんど四球を出さない投手ではあるのだが、右打者に比べると可能がありそうだ。

対右打者    K%50.0%    BB%0.0%
対左打者    K%47.4%    BB%6.6%
■佐々木が左打者に対し四球を与えやすいのはなぜ?

 そして左打者の優位性は打球傾向を見ても感じられる。フェアグラウンドを30度ずつ3等分した打球方向に着目し見ていこう。今季佐々木と対戦した右打者が打球を放った際、引っ張り方向に飛んだ割合はわずか22.7%。右打者は引っ張ることすらできていないのだ。一方で左打者は38.7%を引っ張り方向に飛ばすことができている。右打者と比べると大きな差だ。

右打者    引っ張り22.7%    センター36.4%    逆方向40.9%
左打者    引っ張り38.7%    センター32.3%    逆方向29.0%

 本塁打が引っ張り方向で生まれやすいことからもわかるよう、打球は引っ張り方向に飛ばなければ強い打球になりにくい。左打者は佐々木に対して強い打球を放つポテンシャルは見せていると言えるのではないだろうか。 さらに具体的な投球プロットを使って佐々木の左右別投球傾向を見ていこう。

 注目したいのはストレートの制球だ。図は今季に佐々木がどこに投じられたかを左右打者別に表したものだ。

 これを見ると、佐々木は対右打者に比べ、対左打者でゾーンから大きく外れる投球が増えていることがわかる。左打者に対し比較的四球が多かったのはこれが原因だろう。特に外角へのストレートがゾーンから外れる傾向が強いようだ。
  佐々木のような投手と対戦する場合、打者はある程度球種やコースを絞って打席に立つ必要がある。この投球プロットを見る限り、佐々木と対戦する左打者は外角へのストレートはボール球になると見越し、真ん中から内側に入ってくるストレートを狙い打つのが適切かもしれない。フォークが来たら諦めるくらいの気持ちが必要だ。

 ここまで佐々木の攻略法を提示したが、これらはいずれも強いて言えばというものにすぎない。走者がいる状況であっても佐々木は沢村賞クラスの投手であるし、左打者もそれほど苦手というわけではない。攻略は極めて困難だ。対策が成功したとて1点奪えれば成功というレベルの投手であることを強調しておきたい。

※データはすべて5月1日終了時点

文●DELTA(@Deltagraphs/https://deltagraphs.co.jp/)

【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート5』(水曜社刊)が4月6日に発売。

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