佐々木朗希ら若手のための投球制限は「過保護」なのか? メジャーでも話題となる“金の卵”を守る育成法の是非<SLUGGER>

佐々木朗希ら若手のための投球制限は「過保護」なのか? メジャーでも話題となる“金の卵”を守る育成法の是非<SLUGGER>

球界屈指のポテンシャルを持つ佐々木。その力を発揮しつつある20歳に対するロッテの采配は世間でも大きな注目を集めた。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

4月のプロ野球で最大の話題は佐々木朗希(ロッテ)だった。

 10日のオリックス戦では、プロ野球新の13者連続奪三振を含むタイ記録の1試合19三振を奪い、28年ぶりの完全試合を達成。7日後の日本ハム戦でも8回までパーフェクトを続けた。

 その試合では、ロッテの井口資仁監督の決断が世間の注目を集めた。2試合連続完全試合という前人未到の大記録が継続中であるにもかかわらず、102球を投じていた佐々木を降板させたのだ。

 この決断は概ね好意的に受け止められた。佐々木はプロ1年目に実戦登板が一度もなく、一軍デビューを果たした昨年も、ほとんど10日以上の間隔を空けて起用されていた。いかに大記録の達成が迫っていようとも、まだ発展途上の逸材を慎重に育成し続ける。そんなマリーンズの方針は、称賛の的になった。

 過去には、才能にあふれた数々の若手投手が酷使で潰されてきた。古くは権藤博に尾崎行雄、比較的最近でも伊藤智仁がそうだ。先発とリリーフが完全に分業された1990年代にあっても、伊藤はルーキーイヤーに1試合193球などという、今思えば常軌を逸した球数を投げさせられ、わずか半年でパンクしてしまった。

 多くの有望投手を襲った“悲劇”から得た反省材料に加え、先発投手は100球前後で降板させるメジャーリーグのスタイルが広く知られた影響もあって、今ではロッテのように若い投手に無理をさせない育成法が標準化した。佐々木と同世代の奥川恭伸(ヤクルト)も、昨年は中10日前後を保って登板することが多かった。
 もっとも、アメリカでは80年代後半頃には「10代のうちは年間200イニングを投げるのは望ましくなく、1試合の対戦打者数も28.5人以下に抑えた方がいい」という指導法が提唱されてきた。

 21世紀に入ると、これがさらに推進された。一般的にも「25歳以下で前年より30イニング以上多く投げると故障や不振の原因になる」という概念が広まり、多くのメジャー球団がこれに則って指導と育成にあたるようになった。

 しかしながら、若手投手を守ろうとする風潮に対して、「今の若い投手たちは過保護になっているのではないか」との意見もなくはない。メジャーの現役投手からもそうした声は上がっている。

 これまでサイ・ヤング賞を3度も手にした大投手マックス・シャーザー(ニューヨーク・メッツ)も、マイナーリーグより多投を強いられる大学野球での経験から「今の育成法が間違っているとは言わない。でも、中6日で120〜130球投げた方が投手は多くのことを学べるんじゃないか。1ヵ月に一度くらいは、そのくらいの球数を投げたっていいと思う」と発言している。

 メジャーでは中4日での先発が基本なので、100球前後で降ろすという理屈が通る。一方、中6日が一般的な日本で、同じように100球で降板するのは休ませすぎだと言われても仕方ない。

 17日の日本ハム戦での佐々木の降板後にも「(続投させたら)なんで怪我をする前提なのか」(岩本勉)、「過保護に育てても長持ちする保証はない」(米田哲也)など疑問視する声は上がっていた。米田に至っては「これでは、佐々木はメジャーに行っても中4日で投げられない」とも言い放ったほどだ。 確かに、佐々木に対していつまでも現状の起用法を続けるわけにはいかない。事実、開幕前に井口監督は投球数について「開幕の頃は100、それ以降は120くらい」と述べている。つまり、徐々に段階を踏んでいき、肉体的に完成したと判断すれば中6日でローテーションの一角を担い、1試合120球以上投げる可能性もあり得るのだ。

 また、佐々木のように160キロを連発するような投手の場合、肉体にかかる負荷が半世紀前の投手たちとは比べものにならないほど大きく、より丁寧に扱う必要もある。ゆえに「最近の投手は弱くなった」とは一概には言えない。

 一方で、メジャーで球数制限が広まりだしたのは、ドラフトで指名された選手の契約金が跳ね上がり始めた頃と時期を同じにしている。選手の健康に対する理解が深まったから、というだけでなく「金の卵」を潰さないようにとの配慮も含まれているわけだ。

 そうして守られた投手は大勢いる。だが逆に、練習量や登板回数が足りないため必要な技術が身につかず、ポテンシャルが十分に引き出されない可能性もある。金の卵を大事にしようとするあまり、孵化に失敗しているかもしれないのだ。
 誰もが米田のように無尽蔵のスタミナを誇り、大きな故障にも見舞われず20年以上第一線で投げられるわけではない。往年の投手でも、現在のような起用法であれば、長く活躍できた者は何人もいたはずだ。

 故障はしない方が本人にもチームにとっても良いのは当然。そんな模範を球界の頂点に立つプロ野球が示すことで、アマチュアでも改革が進めば、早くから若者の才能が芽を摘まれることもなくなる。その点で見ても、「投手を大事に」という方向性自体は正しい。

 とはいえ、だ。人間の肉体はそれぞれ異なる。どの投手にも同じ育成パターンが当てはまるわけではない。キャンプで何百球と投げ込む九里亜蓮(広島)の調整法も間違いだとは言えない。大切なのは指導者が一方的に意見を押しつけず、各投手に合った育成法を見出すことだろう。

文●出野哲也

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