数々の迷エピソードに彩られた“愛すべき負け犬”【オカモト“MOBY”タクヤが語るカブス愛:前編】<SLUGGER>

数々の迷エピソードに彩られた“愛すべき負け犬”【オカモト“MOBY”タクヤが語るカブス愛:前編】<SLUGGER>

草野球ではファーストを守るMOBY氏。初めてリグリー・フィールドを訪れて“一目惚れ”した。

鈴木誠也入団もあって、日本でも再び注目度が高まっているシカゴ・カブス。「SCOOBIE DO」のドラマーで、日本一熱狂的なカブスファンと言っても過言ではないオカモト"MOBY"タクヤ氏に、MLBでも独特の立ち位置を持つカブスというチームの魅力について語ってもらった(聞き手:久保田市郎/SLUGGER編集長)。

――まずは、カブスファンになったきっかけから改めて教えてください。

オカモト"MOBY"タクヤ 1992年、高校1年生の時にミネソタ州に数週間ホームステイしまして、その時に初めてメジャーリーグの試合を見たんです。

 その後、大学に入って95年に1ヵ月くらいアメリカを旅行して、その時に初めてリグリー・フィールドに行きました。あの正面入り口の看板を見た時に、「うわー、『ブルース・ブラザース』(※)と一緒だ」って。そこで、音楽やコメディも含めて自分が好きなアメリカの大衆文化と野球がつながったというか、リグリーがそういうもののシンボルというかランドマークなんだなと思ったわけです。

※『ブルース・ブラザース』:『サタデーナイト・ライブ』から生まれた人気キャラクターの珍道中を描いた名作。ジェームズ・ブラウン、レイ・チャールズ、アレサ・フランクリンなど超大物ミュージシャンが出演していることでも知られる。
 ――『ブルース・ブラザース』では、主人公の車の免許証の住所がリグリーと同じなんですよね。

 もう一目惚れみたいなもんで、チームが強くないことも知っていたんですけど、「僕はこのチームを好きにならざるを得ない」と。で、実際に球場で試合を見たら、すげえファンの柄が悪くて(笑)。場所はアップタウンなのに、中身は80年代のパ・リーグの球場みたいな。子供がおっさんにピーナッツを投げつけたり。

――住宅地の中に急に球場が現れるあの感じはリグリー独特の魅力ですよね。今は再開発で周辺の雰囲気もちょっと変わったみたいですけど、昔は近くにセブンイレブンやマックとかタコベルがあって。セブンにちょっと危なそうな兄ちゃんがいたり、マックで本当に普通の家族が食事してたり、そういう中にあの球場があるっていうのがすごく魅力で。

 球場のすぐそばに『メトロ』っていう有名なライブハウスがあるんですけど、そこでよくチーム主催のチャリティライブをやっていて、カブスの選手も遊びに来るんです。何か、選手が「近所の有名な兄ちゃん」という感じで、ファンとすごく近いんですよね。 あと、『マーフィーズ』というパブにも選手やコーチが来ることで有名で、去年シーズン途中で移籍してきたフランク・シュウィンデルという選手が、すでに活躍し始めていた8月下旬に初めて行った時には誰にも気づかれなかったのに、数日後にサヨナラヒットを打ってもう1回行ったらもみくちゃにされたらしいです(笑)。

――1988年まで、すべてデーゲームで行われていたというのもすごいですよね。

 やっぱり地元の人たちから言うと、平日のマチネの試合を見に行くのはシカゴ市民として重要なことだから、だったら学校休んで行きなさいってことを言うらしいです、未だに。

――『フェリスはある朝突然に』という映画でも、まさに主人公が高校をサボってリグリーに行きますからね。そういうのんびりムードと「愛すべき負け犬」というイメージがすっごくマッチしているというか。 もう本当に、ただただ愛でてあげたい、っていう感じでしょうか。僕が実際に体験したのはバートマン事件でした。2003年のリーグ優勝決定シリーズ第6戦で、スティーブ・バートマンというカブスファンがファウルボールの捕球を妨害して、その後に大逆転されたっていう事件ですね。昔をたどっていけば1969年の「黒猫の呪い」(※)だったり、「ビリー・ゴートの呪い」(※)もあるし。

※「黒猫の呪い」:1969年、優勝を争うメッツと直接対決した試合で不吉の象徴と言われる黒猫がフィールドに現れ、チームは敗戦。優勝も逃したことから、「黒猫の呪い」と言われるようになった。

※「ビリー・ゴートの呪い」:1945年のワールドシリーズでヤギを連れたファンの入場を断り、恨みを買ったことから勝てなくなったという都市伝説

――MLBのライバル対決だとヤンキースとレッドソックス、ドジャースとジャイアンツが有名で、ここまではよく分かるんですが、カブスとカーディナルスって言われた時に最初は違和感があって。だって、カーディナルスは言ってみればMLBの出木杉くんじゃないですか。 はい。しかも、もう徹底してて、すごく門外不出の参考書みたいな掟があって。あれ通りやったら、とりあえずなんとなくいいことになるから、みたいな。

――「カーディナル・ウェイ」ってやつですね。でも、カブスはのび太ですよね。出木杉くんとのび太くんがどうやってライバルになるんだって思っていたんですけど。まあ、地域的な要素が大きいんですけどね。

 イリノイ州の南部の人たちはカーディナルスファンが多いんですよね。

――それはそれとして、「のび太のイメージのをずっと持って、ずっと愛されているチーム」っていうのが、やっぱりカブスの特色ですよね。 80年代の西武に対する他のパ・リーグみたいな。でも、パ・リーグの場合は、残っているチームがもうなくて。例えばロッテは親会社こそ変わってないけどもチーム名が変わったし、日本ハムは結果的に大成功とはいえ移転しましたよね。他のチームもご存知の通り紆余曲折がありました。それに対しカブスは1876年からずっとシカゴにあって、チーム名も1902年から変わってないわけです。アメリカのプロスポーツの中にものすごいピンポイントで居場所を見つけてしまった感じがあるんですよ。だから、そこがたまらないですよ。

――チームカラーに球場が大きく寄与しているというのも、素晴らしいと思います。

 1914年に完成した頃からあんまり変わらない雰囲気をちゃんと保って、古い魅力をずっと生かしつつ時代に合わせて新しいものも入れて。大型ビジョンができたりして、ちょっと文句を言ってる人はいないことはないけど。
  でも、例えばそこのデザインを担当している球団の映像班の人と知り合いなんですけど、やっぱりめちゃめちゃカブスファンなんすよ、子供の頃から。趣味の良い可愛さというか、チームの雰囲気に合ったデザインをずっと打ち出していて。要は本当に好きな人間しか絡んでこない。もう愛しかないでしょうね、やっぱりあの球場と、このチームのスタッフたちは。

 だから、カープファンと割と共通点があると思いますけどね。甲子園みたいなツタの葉っぱが中と外の違いはあれど球場に茂っていて、ファンも熱狂的、しかも大阪とシカゴが姉妹都市、だからカブスは阪神っぽいって言われますよね。でも僕は阪神よりも広島の方がカブスに似ているのかなと思っていて。 なんか、大都市ではあるんだけど、ニューヨークとLAとは違う立ち位置で。大都市なんだけど「おらが街のチーム」っていう感じがすごいするじゃないですか。ファンの気質が広島っぽいなという感じは、全部じゃないですけどあると思います。

 だから、カープファンの人たちにとってもカブスは応援しがいがあると思いますよ。チームのロゴは圧倒的にカブスと同地区のレッズの方が近い、いやむしろカープがレッズをオマージュしているんですけど……。
(後編に続く)

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オカモト“MOBY”タクヤ:ロックバンド「SCOOBIE DOO」のドラマー。。MLB観戦歴30年以上を誇り、J SPORTS「MLBミュージック」メインMC、SPOZONEでMLB中継の試合解説&実況も務める。SLUGGERでは「ベストヒットMLB」連載中。Twitter:@moby_scoobie_do。

 

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