チームが苦しむなかで2軍で送るもどかしい日々。阪神・藤浪晋太郎は“現状”に何を想うのか?「1軍に呼ばれるまで――」

チームが苦しむなかで2軍で送るもどかしい日々。阪神・藤浪晋太郎は“現状”に何を想うのか?「1軍に呼ばれるまで――」

鳴尾浜球場で鍛錬を重ねている藤浪。彼はチームが不振に喘ぐなかで戦力になり切れていない現状に何を想うのか。写真:産経新聞社

もどかしい日々を送っていることは間違いない。勝負……いや、キャリアの行く末をも左右しかねない1年は消化不良と言わざるを得ない発進だ。阪神タイガースの藤浪晋太郎は今、ファームの本拠地・鳴尾浜球場で黙々と汗を流している。
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 なぜここにいるのか――。再調整や2軍降格ではなく、4月中旬に自身2度目の新型コロナウイルスに感染し、1軍のローテーションから無念の離脱。隔離期間を終えて、ファームで実戦登板を重ねてはいるが、その間に高卒3年目の西純矢が台頭し、新助っ人のアーロン・ウィルカーソンが開幕前の予想とは裏腹に思わぬ掘り出し物になるなど、先発陣はきっちり6人揃ってそれぞれ好調をキープ。ローテーションに藤浪の入り込む余地がない状況である。

 現状は、他の選手の不振やアクシデントに備えてスタンバイする“入れ替え要員”の立場と言える。

「チャンスが巡ってこないのはしょうがないので、1軍に呼ばれるまで良い準備をできたらなと思います」
  復帰後最長の6回を投げて1失点だった5月18日のウエスタン・リーグの中日ドラゴンズ戦後、本人は気丈にそう話した。ファームの打者を圧倒的な球威の直球とキレ味鋭い変化球で圧倒する様を見ていれば、やはりもどかしい。コールアップの声はいつ届くだろうか、と。

 期せずして訪れた“幕開け”のマウンドで勝負の10年目シーズンは始まった。プロ7年目で初の開幕投手に内定していた青柳晃洋の新型コロナ感染を受け、矢野燿大監督は「晋太郎(藤浪)でいこうかなと思っている」と代役に指名。昨年に続き2年連続で大役を担った。

 3月25日、オープニングゲームとして京セラドーム大阪で行なわれた昨年セ・リーグ覇者ヤクルト・スワローズ戦は立ち上がりに先制点を献上したものの、打線の大量援護にも後押しされて7回6安打3失点にまとめた。守護神のカイル・ケラーが9回に逆転を許して自身初の開幕戦勝利、昨年6月13日以来となる白星は幻となったが、近年とは一味違う姿を春先から見せてきた藤浪に、日を待たずして勝利の女神は微笑むかに思われた。

 しかし、その後も2戦続けて5回を投げきれずに降板。今季4度目の登板となるはずだった4月14日の中日戦はローテーション生き残りをかけたマウンドだったが、コロナ感染が判明し今に至る。“変革の春”を過ごし逆襲への機運は一気に高まっていた。2月の沖縄・宜野座キャンプ、2022年初実戦となった紅白戦の先発マウンドでインパクトを与えたのは直球ではなく“新球”。初回にメル・ロハスJr.を空振り三振に切った内角へ切れ込む109キロのカーブだった。

「打者の頭にない球。ちょっと遊んでやろうという気持ちが良い方向に出た」と意図を明かした梅野隆太郎のサインではあったものの、昨年1軍では2球しか投げていない球種だ。本人も「相手の頭にチラつくと思う。カーブがあるっていうだけでも違ってくる」と直球、カットボール、スプリットに頼るこれまでのスタイルからの脱却を図る意思を込めていた。

 最速162キロを誇る直球、鎌を振り下ろすような軌道を描くカットボールを持ちながらもここ数年、藤浪が意識しているのは「緩急」だ。カーブの他にも、カットより遅く、曲がり幅の大きいスライダーの精度向上を課題に挙げてブルペンでも投げ込んできた。

 加えて、今春のキャンプ中には長年、試行錯誤を繰り返してきたフォームに関しても「立ち返れる場所がある」と確かな手応えを得ていた。「緩急」とともに繰り返してきたのが、「脱力」や「力まない」というワード。力んで上半身が前に突っ込めば、腕の振りが窮屈になって操作性が失われる。制球が乱れるメカニズムを理解しているからこその「立ち返れる場所」だった。
  キャンプ後のオープン戦では崩れる試合もあったが、翌週の試合では修正する姿も披露。期待感を抱かせての開幕だったが、ここまで1軍での3登板では、計11四死球を記録するなど、結果は芳しくない。

 チームは開幕9連敗を喫するなど大きく出遅れ、今もリーグ最下位に低迷。巻き返しへ背番号19の力も必要になってくるが、本人は4月の段階で「(チーム状況は悪いが)自分のできることを自分がするしかないと思うので。勝つチャンスをできるだけ作れたら」と気負うことはなかった。

 立場として今は、1軍のローテーションを奪い取り、守っていかなければいけない。チームのことよりも、いまだ未勝利の10年目の“第一歩”を記すことが先になる。層の厚い1軍の先発陣を見れば、昨年もあったリリーフ起用の可能性もゼロではない。それでも、藤浪は「自分の中ではそれはないですね。あくまで先発でいきたいというのがあるので」と言葉に力を込めた。

 今オフに「自分のエゴで」と口にした先発1本で勝負する決意は変わらない。シーズンは3分の1を消化し、交流戦も始まった。決して容易くない競争の中で昇格のチャンスをつかむことができるか。先発として帰ってくる――。今こそ、藤浪晋太郎の地力と真価が問われる。

取材・文●チャリコ遠藤

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