ビッグボスのパフォーマンスが不要になる日――清宮、万波ら若手が台頭する日本ヘムの期待<SLUGGER>

ビッグボスのパフォーマンスが不要になる日――清宮、万波ら若手が台頭する日本ヘムの期待<SLUGGER>

清宮(左)、万波(右)ともまだまだ粗削りだが伸びしろは十分。最近の日本ハムはかなり魅力的なチームになってきた。写真:産経新聞社

いろいろな意味で“正常”に近づいてきたようだ。

 開幕当初から、日本ハムのビッグボス采配は奇妙奇天烈なものだった。クローザーを任せる予定のルーキーを開幕投手としてマウンドに送り、全然当たりの出ていない控え捕手を先発4番に起用、ランナー三塁の場面でヒットエンドラン敢行……。

 チーム成績にも、そんな選手たちの戸惑いが表れていたようだったが、よりオーソドックスな用兵・戦術をとり始めてからは調子も上向いている。9勝19敗と大きく負け越した3・4月から一転、5月はここまで12勝11敗と勝ち越し。最下位脱出も見えてきた。

 もう一つ正常化してきたのが、チームをめぐる報道の内容だ。開幕前、というより就任直後から、ファイターズ関連のニュースはビッグボス一色。選手にスポットライトが当たることは、北海道以外では皆無に近い印象すらあった。もともと日本のプロ野球では、必要以上に監督に目が向けられがちなのだが、それでもなお違和感を与えていた。

 だが5月に入って、少しずつ変化が生じている。4割近い高打率をキープし続ける松本剛を筆頭に、その逆に低打率でも時折ものすごい打球を飛ばし、ここ一番でも結果を出す万波中正、中継ぎとして戦力になった吉田輝星も注目を集めている。そして清宮幸太郎も、まだ物足りなさは残すものの、嵌った時の打球はさすが――と、その能力を見直され始めている。

【動画】天才スラッガーがようやく本領発揮!清宮、今季2度目の1試合2本塁打 もっとも清宮にしろ、万波にしろ取り上げられるのは良い場面ばかりではない。5月25日のヤクルト戦では、清宮がダブルスチールに失敗。一死一・三塁での三塁走者であり、捕手が投手でなく二塁へ送球したとただちに判断できれば、セーフになるタイミングだったが、見極めが遅すぎて本塁憤死。

 本人はリクエストを望んでいたようだが、ビッグボスに拒否されたあげく「あんなミスをしたら一生、上に上がっていけない」と突き放された。作戦そのものの是非はともかく、判断が悪かったのは事実で翌日はスタメン落ち。その理由は「彼本人にも、チームにも分からせたい。引き締めるために」だった。

 万波は27日の巨人戦で、ライト前ヒットをトンネル。同点のタイムリーエラーをやらかし、試合後には悔し涙を浮かべた。その前日には、2試合続けてヤクルトにサヨナラ本塁打を打たれていた北山亘基が3連投、何とか勝ち試合の最後を締めくくって、やはり涙していた。「昨日は北山君、今日は万波君。明日は誰かな? 泣き虫集団、いいね」と指揮官は語っていた。

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【関連記事】開幕1か月の「ブレイク野手」は? “4割打者”・松本は危険フラグも、三森と石川は今後も活躍をキープか<SLUGGER> いずれもビッグボスのコメントが大きく取り上げられているので、今なお「新庄頼み」の報道が続いているようにも思える。けれども、実際にはニュースの主役となっているのは選手たちである点が、開幕当初と大きく違う。清宮だけでなく「万波」「北山」という名前自体が、たとえネガティブな話であっても報道価値を持つようになったのだ。

 それは言うまでもなく、彼ら自身がそうした扱いにふさわしい結果を出し、ファンの関心を惹いているから。新庄ネタでなければ記事にならない、とメディアが考えていた段階からは確実に前進している。

 これこそ、日本ハム球団が本来望んでいた方向性だろう。ファンが目当てにしているのは選手の活躍、チームの勝利、もしくは負けても納得のいく戦いをしてくれること。「2億円のフェラーリ」で球場入りするようなパフォーマンスはあくまで添え物なのだ。

【動画】天才スラッガーがようやく本領発揮!清宮、今季2度目の1試合2本塁打
 
 もちろん新庄監督自身、そのことはよく分かっているに違いない。現役時代、メジャーリーグから日本ハムに加入した当初も、話題の大半を占めていたのは彼自身だった。そして、チームの強さや、他の選手たちに注目が集まるようになったのを見届けるかのごとくフィールドを後にした。

 同じように、ビッグボスの発言やパフォーマンスが不要になる日こそ、理想とするチームが出来上がるのだろう。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

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