「彼には強い信念がある」イチローが太鼓判を押す21歳の新星。“グリフィー2世”がマリナーズの未来を変える【現地発】<SLUGGER>

「彼には強い信念がある」イチローが太鼓判を押す21歳の新星。“グリフィー2世”がマリナーズの未来を変える【現地発】<SLUGGER>

マリナーズの未来を担う期待の若手ロドリゲス(写真)。5月末にはジャスティン・バーランダー(アストロズ)からも一発を放った。(C)Getty Images

開幕から低空飛行が続くマリナーズで、一人気を吐く若者がいる。21歳の黄金ルーキー、フリオ・ロドリゲスだ。チームの将来だけでなく、球界屈指のスーパースターへの成長が期待されるドミニカンの素顔を、地元紙『シアトル・タイムズ』紙の記者が記した。

 フリオ・ロドリゲスはいつも笑顔を浮かべながらプレーしているように思える。たとえ調子が最悪の時でも(もっとも、プロのキャリアでそんな風になったことはほんの数えるほどしかないが)、ポジティブな材料が一つでもあれば無邪気な顔立ちにメガワット級の笑みが灯る。ロドリゲスの笑顔は彼がフィールドで感じる喜びを象徴し、周囲を明るくする。

「どうしても笑顔が出てしまうんだ」と彼は言う。「僕はとにかくプレーするのが好きなんだ」

 21歳にして、彼はマリナーズのセンターを守るという唯一の夢を実現させた。

「楽しい子だ」とスコット・サーバイス監督は今年、『ベースボール・アメリカ』誌の2022年度プロスペクトランキングで全体2位に選ばれたロドリゲスについて語った。

「彼がもたらす喜びと興奮は周りにもいい影響を与えているよ」
  マリナーズにはかつて、同じようにずば抜けた才能としびれる笑顔を兼ね備えたセンターフィルダーがいた。ケン・グリフィーJr.だ。彼はフランチャイズの歴史を変え、スーパースターのイメージも一変させた。

 まだメジャーリーガーになってから2か月しか経っていないロドリゲスとグリフィーJr.と比べるのはフェアではない。だが、天性のタレント、パワーのポテンシャル、カリスマ、マリナーズファンにもたらした大きな興奮と、類似点は無視できない。

 メジャーデビューから最初の49試合で、ロドリゲスは打率.269/出塁率.320/長打率.419に加えて8二塁打、6本塁打、24打点、13四球、60三振、そしてリーグ最多の14盗塁を記録した。

 そして、グリフィーJr.はメジャーデビューから最初の49試合で、打率.291/出塁率.351/長打率.494、8二塁打、9本塁打、22打点、16四球、34三振、8盗塁を記録している。ロドリゲスは、本塁打王を3度、ゴールドグラブを10度獲得した殿堂入りを果たした英雄とに負けぬスタートを切ったことになる。

 16歳でドミニカ共和国からマリナーズに入団し、マイナーの階段を駆け上がっていくなかで、常に強靭な肉体とパワーのポテンシャルが評価されていた点を考慮すると、リーグ最多の盗塁数を記録しているのは驚きでもある。 だが、ロドリゲス自身は常にすべてを兼ね備えた選手になりたいと思っていた。過去2年のオフシーズンは、元NFLのランニングバックだったトレーナーのヨー・マーフィーの指導の下、センターのレギュラー獲得を目指してタンパでスピードと走塁のトレーニングに取り組んでいた。脂肪を落として筋肉をつけ、俊敏性を高めた。今や彼はマイナーも含めてマリナーズで最も足が速い選手の一人となった。

「この2年間、きちんと準備をして、チャンスを生かすことができたからこそ、僕は今ここにいる」とロドリゲスは言う。「自分自身の成長について言えば、それが一番大きかったと思う」

 グリフィーJr.と比較され、マリナーズではアレックス・ロドリゲス以来の超大物ルーキーと騒がれているロドリゲスだが、もう一人のマリナーズのレジェンドとの関係もまた、彼の大いに成長を助けた。

 2021年のスプリング・トレーニング以降、ロドリゲスとイチローはユニークな関係を育んできた。それは、ワームアップでのキャッチボールや打撃練習中の競争から始まった。打撃練習でロドリゲスが自分の打球に惚れ惚れしていると、打撃投手を務めていたイチローがわざと速い球を投げたり、変化球を織り交ぜたりしてからかった。
 「直接会うまで、彼があんなにフレンドリーな人だとは思っていなかった」とロドリゲスはイチローについて言う。「自分の世界にこもっている人なんだと思っていた。でも、見てもらえれば分かる通り、僕らと一緒に雑談したり、ふざけ合ったりしてくれるんだ」

 ロドリゲスが初めてイチローと会ったのは19年のスプリング・トレーニングだった。当時、イチローは現役最後の舞台となる日本での開幕シリーズに供えていた。未来のホール・オブ・フェイマーの打撃練習を目の当たりにしたロドリゲスは、おそるおそる記念撮影を頼んだ。

 思慮深く分析し、簡単には人を褒めないイチローだが、ロドリゲスの向上心、活力、日々の準備への献身には感服している。

「あれほどの才能を持った選手がきちんと試合への準備を怠らず、毎日全力を尽くし、自分の限界へ向けて努力を続けられるか?」。イチローは通訳のアレン・ターナーを介して語った。「彼にはそれができるだけの強い信念があります」

 6月4日(現地)、ロドリゲスが5月のア・リーグ月間最優秀新人に選ばれたことが発表された。21歳156日での受賞は球団史上最年少。1977年の球団創設以来、一度もワールドシリーズ出場を果たしたことがないマリナーズの未来を変えるのはこの男しかいない。

文●ライアン・ディビッシュ
 

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