エンジェルスへの恨み節も…途中解任された“元名将”ジョー・マッドンは時代に追い去られた存在なのか<SLUGGER>

エンジェルスへの恨み節も…途中解任された“元名将”ジョー・マッドンは時代に追い去られた存在なのか<SLUGGER>

かつて名将の名を欲しいままにしていたマッドンだが、エンジェルスに勝利をもたらすことはできなかった。(C)Getty Images

俳優や歌手と同じように、監督にも「旬」があるようだ。

 現地6月8日、エンジェルスはジョー・マッドン監督を解任した。前日に球団史上ワーストタイ記録となる12連敗を喫したばかり。5月24日時点では地区首位に1ゲーム、貯金10だったチームの急失速の責任を問われた形だ。ペリー・ミナシアンGMがマッドン監督の自宅を訪れて直接解任を伝えたという。

 マッドン監督と言えば、つい5年ほど前までは球界屈指の名将と謳われていた存在だった。長年エンジェルスでコーチを務め、2006年にデビルレイズ(現レイズ)の監督に就任。08年、就任2年目にして万年最下位だったチームを球団史上初のリーグ優勝に導き、一気に名声を得た。

 大胆な守備シフトを敷いたり、複数のポジションをこなすスーパーユーティリティを使いこなしながら猫の目のようなラインナップを組むなど固定観念に囚われない采配は多くのフォロワーを生み、セイバーメトリクスに明るい現代的な指揮官というイメージも手伝って一躍“時代の寵児”となった。 2014年オフにはカブスの監督に就任すると、16年にチームを108年ぶりのワールドチャンピオンに導き、3度目の最優秀監督賞にkが焼いた。その後も17〜18年とプレーオフに進出したものの、19年限りで解任。20年からエンジェルスの指揮を執ったが、最初の2年間は負け越し。勝負の3年目を迎えていた。

 もっとも、現在のチームの苦境の原因をマッドンに押し付けるのは無理がある。マイク・トラウトが大スランプに陥ったことも、テイラー・ウォードやアンソニー・レンドーンが故障離脱したことも監督の采配とは一切関係ない。シーズン序盤は好調だったノア・シンダーガードやマイケル・ロレンゼンの失速も、大谷翔平の投打にわたる不振もだ。そもそも、開幕時点の下馬評を考えれば、27勝29敗という現在の成績はそこまで驚くべきでもない。今回、マッドンはスケープゴートにされたという見方が正しいだろう。

 ただ、裏を返せば、スケープゴートにされたという事実こそが、マッドンの地位が低下していたことを象徴しているとも言える。今季は3年契約の最終年だったが、23年以降の契約を更新されないまま開幕を迎えていた。通常、フロントから全幅の信頼を得ている監督は常に翌年の契約を確保されている。 もう一つ気になることがある。解任直後、マッドンは『ジ・アスレティック』のケン・ローゼンタールとのインタビューでこんなことを言っていた。

「私はアナリティクス(データ分析)が大好きだ。だが、無理強いされるのはごめんだ。(略)近頃は、フロントオフィスにあまりにも多くのことがコントロールされている」

 トニー・ラルーサ(ホワイトソックス)ならともかく、マッドンの口からこのようなコメントが出たのは正直驚きだ。
  現在のMLBではフロントオフィスが選手起用や戦略について基本方針を定るチームが多い。今や監督の主たる責務はフロント、選手両方と良好な関係を構築しながらチームをまとめることだ。デーブ・ロバーツ(ドジャース)やケビン・キャッシュ(レイズ)、アレックス・コーラ(レッドソックス)が評価されているのも、戦略家だからというよりはそうした面に優れているためだ。

 そう考えると、時代がマッドンを追い去ってしまったと言ってもいいのかもしれない。

「もちろん、私はまた監督をしたい。とても得意だからね」

 ローゼンタールとのインタビューで、マッドンは最後にそう語っていた。68歳の“元名将”に、再びメジャーリーグで指揮を執るチャンスはめぐってくるだろうか。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)

 

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