仰木監督が見出した元ドラ1、MLB通算601セーブの殿堂入りクローザー。根尾昂の指針となり得る「投手転向の成功例」<SLUGGER>

仰木監督が見出した元ドラ1、MLB通算601セーブの殿堂入りクローザー。根尾昂の指針となり得る「投手転向の成功例」<SLUGGER>

殿堂入りクローザーのホフマン(右)や、現役でも屈指の実績を持つジャンセン(左)はじめ、MLBではクローザーに転向した野手の成功例には枚挙にいとまがないが……。(C)Getty Images

中日の立浪和義監督が根尾昂の投手転向を発表した。

 野手から投手へのコンバートは、日本では数少ないがまったくないわけではなく、アメリカではむしろ盛んに行なわれている。ここでは過去にあった日米における成功例をそれぞれ見ていこう。

 NPBの投手コンバートについて特筆すべき名伯楽が、1994年から2001年までオリックスの指揮を執った仰木彬監督だ。この百戦錬磨の名将の下では、実に3人の選手が投手転向した。その第1号が嘉勢敏弘だ。

 嘉勢は北陽高でエース兼4番として活躍し、高校通算52本塁打。同年夏の甲子園ではベスト16入りに貢献した。94年のドラフトではオリックスだけでなく近鉄も1位で入札するなど、プロ入り時の期待度では根尾に近い部分があった。

 外野手として入団した嘉勢。だが、当時のオリックスには、レフト田口壮、センター本西厚博、そしてライトにイチローと不動の外野トリオが君臨しており、なかなか割って入る隙間がなかった。そこで仰木監督は97年の春季キャンプで嘉勢に“二刀流”挑戦を言い渡した。
  大谷翔平(エンジェルス)のように投打両方では大成できなかった嘉勢だが、投手登録に変更となった2001年にはリーグ最多の70試合に登板して防御率3.21の好成績を収めた。投手としては6シーズンで通算136試合に登板し、防御率4.84という成績を残した。

 さらに仰木は、00年にプロ9年目の内野手・萩原淳も投手転向させている。こちらは嘉勢と異なり、高校でも投手の経験がなかったが、その後9年で270登板。02年には一時クローザーも務めて10セーブを挙げるなど、かなりの実績を挙げている。2人ほど大成はしなかったが、仰木は翌年にも三塁手として入団した今村文昭を投手に転向させた。

 現役選手でも、プロ入り後に野手から投手に転向した選手が2人いる。19年には、台湾出身の張奕(オリックス)が外野手から投手へ転向。当時は育成選手だったが、このコンバート直後に彼は支配下登録を果たした。日本ハムの姫野優也も、21年に同じく外野手から投手へ登録を変更。二軍初登板でいきなり最速154キロを計時して話題となった。 MLBでは、日本以上に「野手→投手」の転向例は多く、とくにリリーフ投手としてのケースが目立つ。

 最大のヒットは、殿堂入りも果たしたトレバー・ホフマンだ。遊撃手としてプロ入りした彼は、野手としてはメジャー昇格の見込みなしと判断され、プロ3年目に投手に転向。その後、必殺チェンジアップを習得してパドレスで長くクローザーとして活躍し、セーブ王に2度輝いた。10年には史上初の通算600セーブを達成。通算601セーブは今もマリアーノ・リベラに次いでMLB歴代2位を誇る。

 02年にクローザーとしてエンジェルスを世界一に導いたトロイ・パーシバルも、プロ入り直後に捕手から投手へ転向した選手だ。歴代13位の通算358セーブを挙げるまでになった。現役では、名門ドジャースで球団歴代最多368セーブを挙げ、現在はブレーブスに所属しているケンリー・ジャンセン(ブレーブス)もプロ3年目までは同じく捕手。09年の第2回WBCにはオランダ代表の正捕手として出場したが、その年の途中に投手へ転向。1年足らずでメジャー昇格を果たすなどすぐ才能を開花させた。
  また、アンソニー・ゴーズ(ガーディアンス)は外野手として5年のメジャー経験がありながら、16年に投手へ転向。昨年はアメリカ代表として東京五輪に出場し、左投手として大会ベストナインに選出。直後に、32歳にして投手としてメジャー復帰を果たした。

 先発投手としても成功した選手もいる。80年代のブルージェイズで活躍したデーブ・スティーブは、プロ入り直後に外野手から投手へ転向し、豪速球とスライダーを武器に通算176勝を挙げている。90〜00年代にレッドソックスで活躍したティム・ウェイクフィールドは、もとは一塁手だったが打撃がさっぱりで投手をあきらめ、ナックルボーラーとしてメジャー通算200勝を挙げるまでになった。

 立浪監督は根尾について、「将来的には先発を目指してほしい」と語っているが、これまでの野手→投手の転向例を見る限り、日米ともリリーフとしての成功例が多い。果たして中日の逸材は今後、どのような道をたどるのだろうか。

構成●SLUGGER編集部

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