幻惑投法で大谷翔平に挑んだ“ナスティ・ネスター”。ヤンキースを支える苦労人左腕の「適応能力」と熱い想い<SLUGGER>

幻惑投法で大谷翔平に挑んだ“ナスティ・ネスター”。ヤンキースを支える苦労人左腕の「適応能力」と熱い想い<SLUGGER>

今季のメジャー最大級のブレイクを果たしているコルテス。果たして彼はいかにして成り上がったのだろうか。(C)Getty Images

好調チームからは得てして「ラッキーボーイ」あるいは「嬉しい誤算」と呼べる選手が出てくるものだ。今季のヤンキースでは、ネスター・コルテスがそれにあたるのだろう。

 現在27歳の左腕は今季初めて先発ローテーションに定着。最初の13試合で6勝3敗、防御率2.31と見事な数字を残し、特に6月中旬までは1点台の防御率を保って一躍ブレイクを果たした。

「序盤戦の彼の投球は特別だった。多くの武器を持っていて、とても賢い。だから、どんな状況でも力が出せているのだろう」

 ヤンキースのアーロン・ブーン監督も目を細めてそう語る通り、コルテスはここまで52勝18敗と驚異的なペースで勝ち続けるチームに大きく貢献してきた。

 スター軍団の中で、まだその名前になじみがないというファンもいるに違いない。13年のドラフト36巡目でヤンキースに指名されてプロ入りしたコルテスだが、17年オフはルール5ドラフトで、出戻りした18年オフは40人枠外となるなど、ヤンキースを2度去っている。その間、オリオールズやマリナーズにも所属したが結果を残せず、メジャー最初の3シーズンは計42試合で防御率6.72と平凡な成績にとどまった。
  再建中のチームですら居場所がなかった苦労人が、今ではオールスターの先発候補にまで挙げられるようになっている。そんな経緯を振り返れば、通称“ナスティ(エグい)・ネスター”は今季前半戦のMLB最大級のサプライズだといっても大袈裟ではあるまい。

「(今季の活躍に)自身でも驚いているとまでは言わないが、ここまでの好成績が残せると思わなかったというのが正直なところだ。安定した成功を目指してこれまで練習を続けてきた。このままハイレベルの投球を続けていきたい」

 そう謙虚に語るコルテスに躍進の具体的な要因を問うと、制球の向上を真っ先に挙げていた。「インサイド、アウトサイドの両方に上手に投げ分けられていることが成功へのカギだった」という本人は言う。

 20年後半から21年にかけて4シームにバックスピンをかけるため握りを変え、スライダー、カッターも身に付けたのが大きかったという報道もある。それらの球種の精度が上がったためか、初球ストライク率やボール球スイング率が急激にアップしたというデータも残っている。
【動画】大谷も苦笑いの“幻惑”ぶり! 赤丸急上昇中のコルテスとの対戦をチェック
  状況に応じて上手に適応する能力も武器になっているのだろう。コルテスの名は知らなくとも、昨年6月に大谷翔平(エンジェルス)に対して変則モーションで挑んだ投手といえば思い出すファンも多いかもしれない。

 ヤンキー・スタジアムでの2試合で計3本塁打を放つなど絶好調だった大谷を打席に迎え、コルテスは軸足をバタバタとさせ、さらに超スローに足を上げる変則モーションやスーパークイック投法、極端なサイドスローといったフォームを駆使。あの手この手でタイミングを外し、大谷をセンターフライに打ち取ってほくそ笑んだ。

「2日連続での対戦だったから、アプローチを変えなければいけないと思った。オオタニは本当にいい打者だから、間を置かずに対戦する時には、何か別のことをしなければいけないと考えたんだ」

 そんな言葉からは、自身を過信せず、あらゆる手を尽くして打者を打ち取ろうとするコルテスの真骨頂が見えてくるようだ。

 今年6月2日、再びニューヨークで迎えた大谷との対決では、ほぼ正攻法で勝負して3打数1安打。試合後に「いい球を投げてもヒットは打たれた。彼はそれだけの打者だから、単打だったら構わない」と笑う姿からは、大谷へのリスペクトと、メジャーの先発投手として身につけ始めた自信が感じられた。
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  もちろん、コルテスの好調がこのまま続くかどうかは分からない。事実、直近3先発中2先発で自責点4と調子は少々下降気味だ。これまで、18年の115イニングが最多のコルテスが今季すでに74イニングとハイペースで投げてきたことの反動も気になるところ。

 そんな懸念を捨てきれない一方で、これまで創意工夫でしぶとく生き残ってきたコルテスなら、また適応の道を見つけるという期待感もある。一見するとメジャーの主戦投手には見えない小柄な技巧派。ユーモラスな髭も特徴的な“ナスティ・ネスター”は、こんな熱い想いを胸に抱いてマウンドに立っている。

「僕は身長に恵まれているわけではないし、今の多くの好投手たちのように100マイルの速球も投げられるわけでもない。世界中には僕のように体格に恵まれない多くの子どもたちがいるはずだ。そういう条件は選んだわけではなく、生まれ持ったもの。僕が成功すれば、そんな子どもたちを勇気づけられると思う。諦めずに努力を続ければ、何かを成し遂げられるものなんだ」

 キューバで生まれ、7歳の時にアメリカに移住した左腕は真のサバイバーだ。この苦労人左腕が活躍を続け、ポストシーズンの先発を任されるようなことがあれば、世界中にポジティブなメッセージを送り届けることができるはずである。

文●杉浦大介

【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。

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