グリフィー親子のキャッチボール、父を亡くした日に解説したスモルツ――「親子の絆」がテーマになった「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」<SLUGGER>

グリフィー親子のキャッチボール、父を亡くした日に解説したスモルツ――「親子の絆」がテーマになった「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」<SLUGGER>

選手たちがトウモロコシ畑から登場する演出は今年も継続。オープニングを飾ったのはグリフィー親子だった。(C)Getty Images

今年も、彼らはやってきた。

 現地8月11日、アイオワ州ダイアーズビルで「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」が行われた。同地で撮影されたケビン・コスナー主演の名作映画にちなむ試合は、昨年に続いて2回目。今回はレッズ対カブスの対戦となった。

「それを作れば、彼は来る」という声に導かれたアイオワの農夫がトウモロコシ畑の中に球場を作ると、1918年のワールドシリーズで八百長を働いて球界から追放されたホワイトソックスの選手たちが現れる……というのが映画のストーリー。この日は、「この映画がメジャーリーガーになるきっかけだった」というほどの“ヘビーユーザー”が出場していた。

 MVPに輝いたこともある強打者ジョーイ・ボトー(レッズ)は試合前日にツイッターを更新し、このように思いを綴った。「僕はこの映画を見て育った。家にはVHSテープのコレクションがあって、そのうちの一つが『フィールド・オブ・ドリームス』だったんだ」

 特に印象に残っているのが、映画のラストでコスナー演じる主人公が、父の幽霊とキャッチボールをするシーンだという。ボトーはこの場面に幼少期の原体験を重ね、「8歳か9歳の頃から、父と一緒にキャッチボールをしていた。今にして思えば、そうしていたのが僕にとってすごく重要なことだったよ。(中略)父は14年前に亡くなった。だからこそ、主人公が父親にキャッチボールをしようと頼む瞬間に共感を覚えずにはいられないんだ」としみじみ回顧している。
  この「親子の絆」は映画のテーマの一つで、事実上、今回のイベントの主題の一つにもなっていた。試合に先立って最初にトウモロコシ畑から登場したのは、ともにレッズに在籍経験のあるケン・グリフィー・シニアとケン・グリフィーJr.の親子だった。

 通算630本塁打で殿堂入りも果たした息子が、通算2143安打の父に向かって、映画のラストシーンと同じように「Hey dad, you want to have a catch?(ねえ父さん、キャッチボールしない?)」と呼びかけ、ファンたちとともにキャッチボールする中で、両軍の選手がトウモロコシ畑から入場。映画のファンにとってはたまらない演出となったことだろう。
  試合はレッズが24歳のルーキー、ニック・ロドーロ、カブスは33歳のベテラン、ドリュー・スマイリーと両左腕が先発。初回、カブスは2死からパトリック・ウィズダムが死球で出た後、この日ならではのレトロユニフォームに身を包んだ4番・鈴木誠也が、左中間へのタイムリー二塁打。カブスはその後もロドーロに連打を浴びせて3点を先制する。

 3回表の守備中、ボトーは一塁を守りながらインタビューに応じ、前日のツイートと同じように映画への思いとともに、「今日がキャリアで最も重要な試合の一つだ」とも語った。これでリラックスできたのか、3回裏には2死から四球で出塁。レッズは2死一、二塁のチャンスを作ったがスマイリーの粘りのピッチングの前に点は奪えずじまいだった。
  7回表終了後のセブンス・イニング・ストレッチには、カブスファンにとってはうれしいサプライズがあった。長年カブスの実況を務め、98年に死去した往年の名アナウンサー、ハリー・キャリーのホログラムが放送ブースから登場。実は、セブンス・イニング・ストレッチで「Take Me Out to the Ball Game」を歌う習わしはこのキャリーが始めたもので、この日はフィールドに彼の歌声がよみがえった。

 直後の7回裏、レッズは無死一、二塁でマット・レイノルズが2点タイムリー二塁打を放って2点差に迫る。だが、この後はカブスの3番手ブランドン・ヒューズが後続を3人でピシャリ。最後はボトーが見逃し三振に打ち取られ、レッズはそれ以上の追加点を挙げることができなかった。

 満月が煌々と輝く下で、試合は9回裏のレッズの攻撃に突入する。昨年は大逆転のドラマが展開されたが、この日はカブスのローワン・ウィックが完璧な投球を見せた。先頭のホゼ・バレロを空振り三振に打ち取ると、続くジェイク・フレイリーはフルカウントからセカンドゴロ。前の打席にタイムリーを放ったレイノルズも、フルカウントまで持ち込む粘りを見せるものの、最後は大きなカーブで空振り三振。3者凡退で試合に終止符を打った。

 実はこの日、もう一つ「父と子」にまつわるエピソードがあった。8回裏、解説者を務めた殿堂入りの名投手ジョン・スモルツが、自身の父がこの日亡くなっていたことを発表したのだ。スモルツは「この試合を解説しなかったら父に怒られるよ」と気丈にも中継に参加。高校生だった頃、父が自分のベースボール・カードを作って周囲に配ったエピソードなどを放送中に語っていた。

 両軍で計8本も本塁打が出た昨年とは異なり、今年は1本もトウモロコシ畑に飛び込む打球は出なかったが、また趣の異なる締まったゲーム展開となった。球場に集まった約8000人のファンは、今年も「夢のフィールド」に酔いしれたことだろう。

構成●SLUGGER編集部
 

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?