甲子園で輝いた“未来のドラフト候補”に刮目せよ!強烈な印象を残した興南・生盛は必須。バランスの優れた愛工大名電・有馬も見逃せない【投手編】
2022年08月30日 06時00分THE DIGEST

圧倒的な存在感を放った生盛(左)と有馬(右)。今後どのような成長を見せてくれるか。写真:滝川敏之
ドラフトの目玉となるような候補は少なかったという声が多かった今年の夏の甲子園。しかし過去を振り返っても、その時点ではそれほど高い評価を得ていなくても、大学や社会人を経て大きく成長してプロ入りを果たした例は少なくない。そんな現時点では進学や社会人入りが予想されている“未来のドラフト候補”となりそうな選手をピックアップして紹介したいと思う。今回は投手編だ。
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●生盛亜勇太(興南)
1回戦で5点差を逆転される悔しい敗戦で早々に甲子園を去ったが、残したインパクトの大きさでは指折りだった。ストレートは立ち上がりからコンスタントに140キロ台中盤をマークし、自己最速となる148キロを記録。細身だが躍動感あふれるフォームで体重移動にスピードがあり、腕の振りも鋭く、ミットに突き刺さるようなボールは勢い十分だった。
まだ体つきは細く、少し沈み込む動きがあるのも気になったが、そのあたりが改善されれば楽に150キロを超える可能性も高い。変化球も緩いボールを上手く使えるようになれば更にストレートが生きてくるはずだ。大学進学とのことだが、順調にいけば4年後のドラフト戦線を賑わせる存在となる可能性は高いだろう。
●有馬伽久(愛工大名電)
有力候補が少ないと言われた3年生サウスポーの中で、最も強い印象を残したのがこの有馬だ。準々決勝の仙台育英戦では疲れからか早々に降板となったものの、4試合全てに先発し、実に41年ぶりとなるチームの夏の甲子園3勝に大きく貢献した。
バランスの良いフォームで楽に腕が振れ、サウスポーらしいボールの角度があるのが持ち味。大きいカーブとブレーキのあるチェンジアップで緩急をつけるのも上手く、愛工大名電の先輩である東克樹(DeNA)の高校3年時と比べてもすべてにおいて上回っている印象を受ける。まだ少し細く、スタミナ面にも課題が残るが、大学でしっかり鍛えれば、4年後には東のように上位指名でのプロ入りも十分に狙えるだろう。
【PHOTO】「夏の甲子園2022」ベストショットを一挙公開!
●山田悠希(山梨学院)
チームメイトでプロ志望と言われている榎谷礼央に注目が集まっていたが、この夏のピッチングでより光っていたのは山田だった。山梨大会では3試合、13回を投げて失点0、21奪三振と好投。甲子園でも初戦で天理に敗れたものの、先発して6回を投げて2失点としっかり試合を作った。
体はそれほど大きくないが、下半身のバネが抜群で、躍動感あふれるフォームが持ち味。高い位置から縦に鋭く腕が振れ、リリースの感覚も良いので上背以上にボールの角度があり、高めに抜けるボールもほとんどなかった。大きい変化のボールがないのと、外角が多いのは課題だが、安定感は申し分ない。大学であればどのリーグでも早くから戦力になる可能性は高そうだ。
●渡辺和大(高松商)
浅野翔吾の注目度が高かった高松商だが、投手で主役となったのがエースの渡辺だ。特に素晴らしかったのが投手戦となった3回戦の九州国際大付戦。強力打線を相手に長打を1本も許さず、6回以降の4イニングはパーフェクトの快投で1失点完投とチームを勝利に導いた。
体の近くで縦に腕が振れ、左右に体が振られないのでコーナーにしっかり投げ分けることができる。ストレートも力を入れると140キロを超え、内角の厳しいコースに狙って投げられるのも大きな持ち味だ。総合力では今大会に出場した3年生サウスポーでも1、2を争う存在であり、ストレートの力強さが出てくれば将来のプロ入りも見えてくるだろう。
●上山颯太(三重)
昨年は2年生ながら樟南を完封。今年は初戦で横浜に競り負けたものの、8回途中まで被安打わずかに4という好投とさすがのピッチングを見せた。174センチ、73キロと投手としては小柄な部類に入るが、フォームの流れがスムーズで引っかかるようなところがなく、コンスタントに140キロを超えるストレートは勢い十分。球筋が安定しており、内角も外角も厳しいコースに速いボールを投げることができる。
更に100キロ台のカーブで緩急をつけるのが上手く、数字以上にストレートを速く見せることができていた。チェンジアップもブレーキは申し分ないだけに、スライダーが打者の手元で変化するようになれば更に幅も広がるはずだ。この1年間は故障にも苦しんだだけに、大学ではしっかり体を鍛えてさらなるスケールアップを目指してもらいたい。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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●生盛亜勇太(興南)
1回戦で5点差を逆転される悔しい敗戦で早々に甲子園を去ったが、残したインパクトの大きさでは指折りだった。ストレートは立ち上がりからコンスタントに140キロ台中盤をマークし、自己最速となる148キロを記録。細身だが躍動感あふれるフォームで体重移動にスピードがあり、腕の振りも鋭く、ミットに突き刺さるようなボールは勢い十分だった。
まだ体つきは細く、少し沈み込む動きがあるのも気になったが、そのあたりが改善されれば楽に150キロを超える可能性も高い。変化球も緩いボールを上手く使えるようになれば更にストレートが生きてくるはずだ。大学進学とのことだが、順調にいけば4年後のドラフト戦線を賑わせる存在となる可能性は高いだろう。
●有馬伽久(愛工大名電)
有力候補が少ないと言われた3年生サウスポーの中で、最も強い印象を残したのがこの有馬だ。準々決勝の仙台育英戦では疲れからか早々に降板となったものの、4試合全てに先発し、実に41年ぶりとなるチームの夏の甲子園3勝に大きく貢献した。
バランスの良いフォームで楽に腕が振れ、サウスポーらしいボールの角度があるのが持ち味。大きいカーブとブレーキのあるチェンジアップで緩急をつけるのも上手く、愛工大名電の先輩である東克樹(DeNA)の高校3年時と比べてもすべてにおいて上回っている印象を受ける。まだ少し細く、スタミナ面にも課題が残るが、大学でしっかり鍛えれば、4年後には東のように上位指名でのプロ入りも十分に狙えるだろう。
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●山田悠希(山梨学院)
チームメイトでプロ志望と言われている榎谷礼央に注目が集まっていたが、この夏のピッチングでより光っていたのは山田だった。山梨大会では3試合、13回を投げて失点0、21奪三振と好投。甲子園でも初戦で天理に敗れたものの、先発して6回を投げて2失点としっかり試合を作った。
体はそれほど大きくないが、下半身のバネが抜群で、躍動感あふれるフォームが持ち味。高い位置から縦に鋭く腕が振れ、リリースの感覚も良いので上背以上にボールの角度があり、高めに抜けるボールもほとんどなかった。大きい変化のボールがないのと、外角が多いのは課題だが、安定感は申し分ない。大学であればどのリーグでも早くから戦力になる可能性は高そうだ。
●渡辺和大(高松商)
浅野翔吾の注目度が高かった高松商だが、投手で主役となったのがエースの渡辺だ。特に素晴らしかったのが投手戦となった3回戦の九州国際大付戦。強力打線を相手に長打を1本も許さず、6回以降の4イニングはパーフェクトの快投で1失点完投とチームを勝利に導いた。
体の近くで縦に腕が振れ、左右に体が振られないのでコーナーにしっかり投げ分けることができる。ストレートも力を入れると140キロを超え、内角の厳しいコースに狙って投げられるのも大きな持ち味だ。総合力では今大会に出場した3年生サウスポーでも1、2を争う存在であり、ストレートの力強さが出てくれば将来のプロ入りも見えてくるだろう。
●上山颯太(三重)
昨年は2年生ながら樟南を完封。今年は初戦で横浜に競り負けたものの、8回途中まで被安打わずかに4という好投とさすがのピッチングを見せた。174センチ、73キロと投手としては小柄な部類に入るが、フォームの流れがスムーズで引っかかるようなところがなく、コンスタントに140キロを超えるストレートは勢い十分。球筋が安定しており、内角も外角も厳しいコースに速いボールを投げることができる。
更に100キロ台のカーブで緩急をつけるのが上手く、数字以上にストレートを速く見せることができていた。チェンジアップもブレーキは申し分ないだけに、スライダーが打者の手元で変化するようになれば更に幅も広がるはずだ。この1年間は故障にも苦しんだだけに、大学ではしっかり体を鍛えてさらなるスケールアップを目指してもらいたい。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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