なぜ失策数で守備を評価すべきでないのか。UZRが照らす“真の名手”とは【野球の“常識”を疑え!第4回】<SLUGGER>

なぜ失策数で守備を評価すべきでないのか。UZRが照らす“真の名手”とは【野球の“常識”を疑え!第4回】<SLUGGER>

「守備力」を捉えるには失策数では不十分。守備の目的から見える本質を探ろう。写真:徳原隆元

「守備力が高い」という表現から何をイメージするだろうか。軽やかなグラブさばき、捕ってからの早さ、正確な送球……。いずれも、守備の名手にとって欠かせない要素だ。しかし、そもそも何をもって「守備力が高い」とされるべきなのだろうか。そして、データによる守備評価はどのようなアプローチでこれに迫ってきたのだろうか。

 従来、守備はグラブさばきなどの技術論、あるいは失策や守備率といったデータによって評価されてきた。しかし、これらはいずれも、単体の評価基準としては十分ではない。守備の目的はあくまで「アウトを取り、それによって失点を防ぐこと」にある。グラブさばきなどの技術はあくまでその手段であって。アウトを獲得したという結果につながることで初めて意味を持つ。

 データに目を向けると、失策や守備率はミスをどれだけ犯したかを測る、いわば減点法の考えに立脚している。打球に追いつけなかった選手も、追いついたが失策を犯してしまった選手も、アウトを獲得できなかったという点では同様だ。にもかかわらず、失策は後者にマイナス評価を与える。従来の評価方法は、「失点を防ぐ」という守備本来の目的にフィットしていないのだ。

 では、どのようにして守備の評価を行うべきなのだろうか。減点法よりも適切なのが加点法だ。アウトを取ることが目的なのであれば、そのアウトの数を数えればいい――こうした発想で1970年代に生み出されたのが「レンジファクター」という指標だ。

  レンジファクターはそれぞれの野手が9イニングあたりに獲得したアウト数を表す。これなら、失策では測りきれなかった守備範囲の広さにもアプローチが可能で、失策に比べてより守備本来の目的に沿った考え方と言える。
  この減点法から加点法への転換が、守備評価発展の契機となった。レンジファクターは単純にアウトを数えるだけで、その難易度を考慮しないという課題があったのだが、その後はその欠点を補う指標が次々と登場。近年ではUZR(Ultimate Zone Rating)やOAA(Outs Above Average)といった、さらに精度の高い守備指標が誕生し、広く活用されている。

 この中で、今回は「UZR」について見ていこう。UZRは同じポジションの平均的な選手が同じだけ守った場合に比べ、守備でどれだけ失点を防いだかを表す指標だ。例えば、今季の源田壮亮(西武)は881イニングで遊撃を守り、UZR13.3を記録している。これは、平均レベルの遊撃手が守っていた場合に比べ、源田はチームの失点を約13点減らしていることを意味している。

 UZRは、フィールドを細かく分割して打球データを取得し、難易度を考慮した上で算出する。そのため、従来の公式記録からだけでは算出できない。だが、UZRについて本当に注目すべきは、別のところにある。そして、それを理解することが、実は守備の本質を、ひいては野球の本質を理解することにつながる。

【動画】“源田たまらん”! 西武・源田壮亮の圧倒的守備をチェック ポイントは2つ。一つは、UZRが得点・失点の単位で表現されていることだ。野球は両チームの得点の多寡で勝敗が決まるスポーツである。前述したように、技術や失策の少なさは、失点を防ぐための手段に過ぎない。UZRは個々のプレーを得点価値に変換するセイバーメトリクスの手法を用いて、失点への影響を直接測ることに成功した。まず、この点で従来型よりも優れた指標と言える。

 もう一つは、相対評価になっていることだ。そもそも、野球は相対関係で決まるスポーツである。例えば、ある打者が30本塁打を放ったと聞くと、素晴らしい成績と感じるかもしれない。しかしその打者が、どの打者も平均で50本塁打を放つような打高投低のリーグに所属していれば、価値は相対的に低くなる。また当然だが、試合は得点の大小という相対関係で勝敗が決まる。

 このように、野球における価値は相対的な比較の中でしか生じない。UZRが表しているのは、同ポジションの平均的な選手との比較で、まさに相対的な評価だ。UZRについてはフィールド上を細かく分けて算出する計測方法に注目されがちだが、得点の単位で、かつ相対的に表現されていることに本質的な意味があると言っていいだろう。
 
 こうした守備評価の発展により、これまであまり評価されていなかった名手が発掘されることもある。近年、その代表例とされるのが安達了一(オリックス)だ。安達はオリックスで長年ショートを務めていたものの、ゴールデン・グラブ賞とは縁がなかった。得票数でも、今宮健太(ソフトバンク)に大差をつけられることが多かった。
  しかしUZRで見た場合、安達の評価は一変する。安達は2014年に遊撃でUZR23.3、15年には22.7と極めて高い守備力を発揮した。UZRで見た場合、15年前後の安達は間違いなくプロ野球界で最高の好守を誇る遊撃手だった。

 それだけではない。守備を含めた総合評価で見た場合、14年の安達はパ・リーグのMVP争いに絡んでもおかしくなかったほど貢献度が高かった。同年のオリックス躍進について、安達の貢献は実は極めて大きかったのだ。にもかかわらず、その貢献が正当に評価されているとは言い難い。

<2014年遊撃手UZRランキング>
安達了一(オ)23.3
今宮健太(ソ)19.4
坂本勇人(巨)16.2
堂上直倫(中)8.6
山崎憲晴(De)5.0
大引啓次(日)2.8
森岡良介(ヤ)-1.0
A・エルナンデス(中)-5.7
西田哲朗(楽)-9.1
鳥谷敬(神)-11.4
鈴木大地(ロ)-11.9
渡辺直人(西)-13.4 
※500イニング以上を守った遊撃手を対象

 従来型の評価や指標では、安達の素晴らしさにはスポットライトが当たらなかった。しかし、方法によってこれほどまでに選手評価は変わってくるのだ。もちろん、データによる評価が絶対ではないが、守備本来の目的から考えてより適切なアプローチを行っているのは確かだろう。

 また、UZRのような守備データは実際の野球観戦と縁遠いものではない。なぜ安達が、源田がUZRにおいて高く評価されるのか。データを把握した上でフィードバックしながら観戦すると、どんなプレーが失点を防ぐのか、新たな視点で守備について考えることができるはずだ。

文●DELTA(@Deltagraphs/https://deltagraphs.co.jp/)

【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート5』(水曜社刊)が4月6日に発売。

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