「ジャッジは甘い球が多いから打てる」は誤り。他の誰よりも“誤審”と戦いながら三冠王も狙う凄み<SLUGGER>

「ジャッジは甘い球が多いから打てる」は誤り。他の誰よりも“誤審”と戦いながら三冠王も狙う凄み<SLUGGER>

「ジャッジは甘い球が多いから本塁打が多い」のは本当なのか。さまざまなデータで浮かんだ“実態”とは?(C)Getty Images

さらに言えば、ジャッジは“ジャッジ”=審判の誤審に苦しめられている選手の代表格でもあることも忘れてはならない。実は、ジャッジはストライクゾーンから外れた球をストライクと判定されたのが89球あり、こちらもメジャー最多。全投球における割合3.4%も2位と、球界で最も“誤審”の被害に遭っている選手の一人なのだ。

 確かに、ジャッジのホームランのハイライト映像を見ると、甘い球が多い印象はある。しかし、先にも述べたように、投球の4割以上はストライクゾーンのギリギリを攻められている。厳しいコースの球を優れた選球眼でしっかり見極め、失投をすかさず仕留める集中力と技術力。真に称賛すべきは、ジャッジのそうした卓越性だろう。
  今回、改めて明らかになった事実があるとすれば、ジャッジは決して甘いボールばかりを投げられているわけではなく、投手だけでなく審判とも戦いながら歴史的な好成績を残しているということだ。ロジャー・マリスが持つ本塁打のア・リーグ年間記録(薬物使用疑惑者を除けば実質的なMLB記録とも言える)に加え、三冠王にも迫ろうとしているのは、改めて驚異と言う他ない。

構成●新井裕貴(SLUGGER編集部)

【動画】ジャッジが“甘い球”を仕留めて60号の大台に到達!

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【関連記事】大谷翔平は「異次元からやってきた」。MVP論争に米放送局が指摘した指標で表せない“価値”とは?「ジャッジは入れない」 現地9月20日、ヤンキースのアーロン・ジャッジは本拠地で行われたパイレーツ戦の9回にソロ本塁打を叩き込み、ベーブ・ルース、ロジャー・マリス、マーク・マグワイア、サミー・ソーサ、バリー・ボンズに次いで史上6人目のシーズン60号を達成した。

 さらにこの時点で打率.316とし、本塁打、打点(128)と並んで打撃3部門でリーグトップに立った。2012年のミゲル・カブレラ(タイガース)以来、史上16人目の三冠王も視野に入り、大谷翔平(エンジェルス)とのMVP争いでも大きなリードを得たように見える。

【動画】ジャッジが“甘い球”を仕留めて60号の大台に到達!

 ジャッジが歴史的な活躍を見せる一方で、大谷も規定打席&規定投球回という前人未到の偉業を達成する可能性を残している。チームが低迷しながらも2年連続のMVPも狙えるとあって、大谷への(日本での)注目度も昨年同様に高まっているが、これが“大谷のライバル”ジャッジへのある種、不当な評価にもつながっているように思う。
 「ジャッジが達成したことは過去にも誰かが達成している。本塁打数もメジャー記録は狙えない」「ジャッジは投手をしていない」「ジャッジのWAR(勝利貢献度)は1位でも、二刀流の評価が正当に反映できていない」といったコメントが散見される。そして数日前、データ会社『Codify』のあるツイートが波紋を呼んだ。

 同社のアカウントは20日、「投手は今季アーロン・ジャッジに654球を真ん中付近(the heart of zone)に投じている。これより多く投じられた打者は8人のみ。(中略)ジャッジの本塁打のうち41本がこのゾーンで記録されている」とつぶやいた。

 これを受け、日本の複数のスポーツメディアは「ジャッジには“甘い球”が多いから本塁打を量産できている」とした記事を掲載した。まるで、ジャッジにMVPを取らせたいがためにわざと甘いボールを投げている、という風に解釈できなくもない。
  振り返れば昨年も、大谷が後半戦に極端な四球攻めに遭った際、「アジア人にホームラン王を取らせたくないから」という論調もあった。これに対しては、また別の記事(【大谷翔平の「四球攻め」は“差別”ではなく“必然”の選択。偉大すぎるゆえの苦しみ】)で説明しているが、端的に言えばエンジェルスで最高のバッターである大谷とわざわざ勝負する必要がないからだ。

 話を戻そう。果たしてジャッジは「甘い球」が多いから好成績を残せているのだろうか。

 件のデータ会社の投稿には続きがある。真ん中付近にボールが来た割合のMLB平均は26.0%だが、ジャッジはそれを下回る24.9%だというのだ。ジャッジは主に2番、9月以降は1番を打つことが増えている。20日時点の636打席はリーグ4位と、まずボールを投げられる回数自体が多いのだ。
  もっとも、全盛期のイチローがそうだったように、早いカウントから振っていく選手であれば、投げられる球の総数は少なくなる。しかしジャッジは違う。1打席当たりの投球数4.25はリーグ最多。内実を見ると、初球スウィング率(31.9%)はメジャー平均より高い一方で、ボール球スウィング率(23.0%)は平均以下にとどめており、優れた打席アプローチの良さによって球数を投げさせることができているわけだ。

 打席数も多い、かつ多くの球数を投げさせれば必然的に甘い球が増える可能性も高くなるわけで、件のツイート記事にある「真ん中付近に投じられた球の多さ8位」というのも納得だろう。

 また、こんなデータもある。先の「甘い球(Heart)」と異なり、逆にストライクゾーンの「ギリギリ(Shadow)」にボールを投じられた総数はメジャー全体5位の1129球。当たり前だが、当然ジャッジも厳しい攻めを受けているわけだ。さらに『Codify』は、「甘い球ゾーン」の広さのランキングも掲載しており、こちらでジャッジは1位になっている。身長201cmの大柄な体格から「甘い球のゾーン」が広く取られていることも、個数上昇につながっているようだ。

【動画】ジャッジが“甘い球”を仕留めて60号の大台に到達!
 

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