「UZR」とは何なのか。近年注目度が増した守備指標に関する“誤解”と“偏見”を解消しよう<SLUGGER>

「UZR」とは何なのか。近年注目度が増した守備指標に関する“誤解”と“偏見”を解消しよう<SLUGGER>

市民権を得つつある守備指標「UZR」。従来の失策数などから見えなかった“真の守備力”とは何か。メジャーではGG5回のデレク・ジーターが実は守備に大きな欠点があったことも露見したのが話題になった。(C)Getty Images

UZR(Ultimate Zone Rating)というデータを目にしたことがあるだろうか。近年、数多くのメディアなどで紹介されるようになってきた守備指標で、同じポジションの平均的な選手に比べて、どれだけチームの失点を減らす守備を見せたかを示している。

 日本でも少しずつ浸透してきてはいるが、多くの「誤解」がなされている感も否めない。今回は、UZRについてよく俎上に上がる疑問を解消していきたい。

【1】UZRには表れない「守備の上手さ」がある

 よくある疑問の一つとして挙げられるのが、「UZRでは守備の上手さを測ることができないのでは?」というものだ。確かに、従来は守備の名手とされていた選手のUZRの値を見てみると、思いのほか評価が低いのも珍しくない。

 しかしそもそも、UZRは守備の「上手さ・巧拙」を測ろうとしているものではない。UZRが表現するのは「どれだけ失点を防いだか」にある。そもそもの目的が異なるのだから、その結果にズレが生じるのも当然である。手法以前の問題といっていいだろう。
  また、ここで言われる「守備の上手さ」とは何を指すのかという定義の問題もある。

 根本的に、守備の最終目的は少しでも多く失点を防ぐことだ。グラブさばきや捕ってからの早さ、送球の正確さ、あるいはポジショニング。これらはいずれも失点を防ぐための手段に過ぎない。グラブさばきが鮮やかでも、そもそも守備範囲が狭かったり、送球が不安定な選手は多くのアウトを奪えない。そういう意味では、UZRは守備の上手さも内包した評価方法とも言える。

 アウトを多く奪って失点を減らす目的とは別に、「守備の華麗さに価値がある」という主張もあるかもしれない。しかし、それはもはや選手評価とは別次元の話だ。打撃で言うならば、「打率は1割台だがスイングが美しいから優れた打者」と評価しているようなものだろう。守備評価はどれだけ失点を防いだかという視点からは切り離せないことは把握しておく必要がある。その手段として技術論があるのだ。

【2】守備範囲への評価の比重が大きすぎる

 UZRは以下の3要素によって構成されている。①守備範囲 ②失策抑止 ③内野手は併殺貢献、外野手は送球による進塁抑止貢献。この3要素だ。それぞれの分野でどれだけ失点が防がれたかが算出され、その合計がUZRの値となる。この中で、①の守備範囲への評価の比重が大きすぎるのではないか、という意見もある。

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【関連記事】「勝ち星=投手の実力」にあらず。勝利による評価の“限界”とは?【野球の“常識”を疑え!第1回】 実際、失策や併殺、進塁抑止でつく差は誤差レベルであることも少なくない。差がつきやすいのは圧倒的に守備範囲である。たた実は、UZRの設計には、どの要素を重視/軽視するという発想がない。なぜ守備範囲評価の比重が大きくなるのかといえば、併殺や進塁抑止に比べ、打球をアウトにできたかどうかが問われる機会が圧倒的に多いからである。

 プロの、しかも一軍レベルとなると、失策の発生すらかなり稀である。結果として守備範囲によりつく差が大きくなっているのだ。

【3】1シーズンごとの数字のブレが大きすぎる

 UZRで見ると、あるシーズンに優れた値を記録した選手が、翌年には大きく数字を落とすこともある。これについて疑問が呈されることも多いようだ。しかしよく考えてみれば、他の指標も同じことはよくある。

 3割打者が翌年に2割5分まで数字を落とすようなことは野球において日常茶飯事だ。UZRのブレも、打率の変動範囲とほとんど変わりがない。
  また、ブレが小さいから正確というわけではない点も強調しておきたい。

 研究によると、守備力は打撃に比べて選手の身体的なコンディションが反映されやすいことが分かっている。下半身の故障は小さなものであっても、守備範囲に大きな影響をもたらす。故障を負った選手がそれ以降、UZRをどんどん低下させていく例は珍しくない。

 一般的に報道はされていなくても、故障を抱えながらプレーしている選手も多いはずだ。ブレが大きい時は、選手がコンディションに問題を抱えている可能性も検討してみるべきだろう。

【4】数シーズンの数字を見ないと意味がない

 【3】の影響のせいか、UZRは数シーズン見ないと意味がないと言われることもある。しかしUZRが表しているのは、平均に比べて防いだ失点数を示している。出場イニングが少なかろうと、それだけの失点を防ぐ貢献を見せたと考えられる。

 ただ、それによって本人の能力が分かるかどうかはまた別の話だ。短いイニングでも貢献度を測ることはできる一方、選手の能力を測ろうとするならば、数シーズンのサンプルが必要だろう。ただこれも、打率など他の指標でも同様のことである。

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【動画】UZRもダントツ1位。源田壮亮の“たまらん”守備をチェック【5】人間の「主観」によって入力が行なわれている 

 UZRの算出には、どこにどのような打球が飛んだかという打球データの記録が必要になる。これについて「人間の主観」が混ざっているのではないかという批判もある。

 DELTAではこうした入力を手動で行なっているため、打球が飛んだ位置について客観的な記録でないことは確かだ。しかし、できる限り客観的な質に近づくよう、膨大な参考資料を用意したうえで、訓練を受けたスキルの高いスタッフのみで細心の注意を払って記録作業を行なっている。

 また、実はMLBでもこうしたデータ入力はつい最近まで手動で行われていたようだ。もちろん、入力環境はできる限り改善されていくべきだが、日本が特別劣っているというわけではない。
  算出社によって数字が異なるという話もある。これについてはロジックのち外による部分が大きいだろう。平均をリーグ、NPB全体どちらに設定するのか、打球の強さをどのように判定するかなどは各社の「思想」が反映される。

 例えば DELTAでは平均をNPB全体に設定している。これはMLBに比べると試合数が少ないNPBにおいて、打球のサンプルが小さくなりがちな問題を解消するためだ。表向きのデータ以上に注目すべきは、裏側にあるロジックなのかもしれない。

文●DELTA(@Deltagraphs/https://deltagraphs.co.jp/)

【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート5』(水曜社刊)が4月6日に発売。

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