ヤクルト連覇を手繰り寄せた「記憶に残る5試合」。開幕戦の大逆転勝利、高津監督の“哲学”が見えた一戦、大ベテランの奮闘<SLUGGER>

ヤクルト連覇を手繰り寄せた「記憶に残る5試合」。開幕戦の大逆転勝利、高津監督の“哲学”が見えた一戦、大ベテランの奮闘<SLUGGER>

56号、最年少での三冠王。村上宗隆は“村神様”と崇められる存在に。彼を含めて今季のヤクルトは「名場面」ばかりだった。写真:滝川敏之

ヤクルトが球団史上2度目のセ・リーグ連覇を飾った。143試合それぞれに思いはあるが、その中でも「記憶に残る5試合」をピックアップ。節目の試合なのか、それとも偉大な記録が生まれた試合を取り上げるのか――2016年から神宮球場でのヤクルト戦を全試合観戦している筆者が、迷いに迷って選んだのがこの5試合だった。

●7点差をひっくり返す開幕戦の大逆転勝利
【3月25日/阪神8-10ヤクルト@京セラドーム大阪】

 連覇へ向けていざ行かん、と意気揚々と迎えた開幕戦。先制したのはいいものの、小川泰弘がノックアウトされて5回を終えて1対8。いくらなんでも7点ビハインドは重すぎる。誰しもが1年前のことを思い出したのではないだろうか。今年も阪神に敗れてシーズンが始まるのか……と。とはいえ、去年も開幕三連敗から日本一を達成したのだから、負けるのも悪くないか──。

 ポジティブな言い訳を思いついたのを見計らったように反撃が始まった。6回に長岡秀樹の適時打で1点を返すと、7回には濱田太貴が追撃弾。8回にはサンタナ、9回には山田哲人と再びサンタナが一発を放って合計4発。終わってみれば、期待の若手、助っ人、そしてキャプテンが噛み合って10対8の大逆転勝利。日本一を成し遂げたチームの底力を見た。
 ●敗れはしても、高津監督の“哲学”が垣間見えた一戦
【3月29日/ヤクルト3-5巨人@神宮球場】


 開幕カードを3連勝して迎えた本拠地開幕戦の先発は、エースへの歩みを始めた奥川恭伸だった。しかし、4回1失点でまさかの緊急降板。6回には勝ち越しを許し、その後の反撃も及ばず敗戦した。嫌な負け方ではあったものの、“新しい息吹”を感じたのも事実だった。

 7回1死一、二塁から古賀優大に代打・濱田太貴を起用。そしてネクストには、次なる代打の準備として内山壮真が入った。期待の若手の波状攻撃に心が踊る。濱田は倒れるも、内山は適時打を放った。去年の代打は川端慎吾と宮本丈で鉄板だったが、今年は若い選手も次々に投入。高津臣吾監督の目指す「勝利と育成」を目の当たりにした神宮球場での初戦だった。とはいえ、この試合が奥川の2022年シーズン最初で最後の登板になるとは思ってもいなかったが……。

●40歳コンビが躍動! 今季初勝利&初本塁打でWお立ち台に
【4月23日/ヤクルト1-0阪神@神宮球場】


 スワローズが誇る“おじさんコンビ”で勝利をもぎ取った。今シーズンまだ勝ち星のなかった石川雅規は初回に満塁のピンチを招くも無失点で切り抜けると、以降はゼロを積み上げていく。打線も沈黙していたが、4回に青木宣親が今季第1号となるソロ本塁打を放ちって先制に成功。石川は6回を無失点で抑え、その後は継投策で虎の子の1点を守りきった。

 二人が登ったお立ち台では、青木が「石川爺さんのために頑張った」と話せば、石川は「青木おじさんが打ってくれたので勇気をもらった」と返す仲の良さに笑みがあふれる。苦しんでいた両ベテランが初勝利、そして初本塁打を同日にやってのける。盆と正月が一緒に来たようなナイスゲーム。ベテランの力は偉大だった。

【動画】“村神様”が王貞治超えの56号! 最終戦で三冠王も手に●“村上様”が降臨。チームの危機を救う3打席連続ホームラン
【7月31日/阪神2-4ヤクルト@甲子園球場】


 2位・阪神との3連戦は2連敗で第3戦。試合前の時点でゲーム差は9と、数字だけを見れば安泰と言える状況だったが、コロナから復帰した選手たちがいつ本調子になるのか不透明な中では不安もよぎった。そして、この試合も6回を終えて0対2のビハインドとなり、好投手が揃う阪神も7回から継投へ。3連敗がちらつく中、不穏な空気を振り払ったのが村上宗隆だった。

 7回に1点差に迫るソロ本塁打を放つと、9回には同点弾。そして延長11回には、3打席連続となる勝ち越し2ランを叩き込んでチームを救ってみせたのだ。翌日に村上は2打席連続本塁打を放ち、5打席連続本塁打のプロ野球記録を達成。ヤクルトファンだけでなく、プロ野球ファンの間に”村神様”の呼び名が一気に浸透していった。

【動画】“村神様”が王貞治超えの56号! 最終戦で三冠王も手に
 ●小川で始まり小川で終わる。今季を“象徴”する形で連覇達成
【9月25日/ヤクルト1-0DeNA@神宮球場】


 後半戦に入ってから先発崩壊が叫ばれる中、チームを救ったのは「ライアン」こと小川泰弘だった。勝負どころの8月下旬からDeNA戦での登板はこれが3試合目。過去2戦はいずれも白星(6回3失点、7回無失点)とさすがの投球で、好調ベイスターズの前に立ちはだかった。

 そしてこの日は、勝てば優勝の大一番の先発マウンド。相手エースの今永昇太の凄まじい投球に負けじと、小川も6回無失点とエースの姿を見せる。7回からは石山泰稚、清水昇、マクガフが締める魂の継投でバトンをつなぐ。迎えた9回裏、1死二塁から丸山和郁 が左中間を破ってサヨナラ勝ちで優勝を決めた。小川の大炎上から始まった今シーズン。奥川と高橋奎二の二枚看板が不在の勝負どころを小川が支え、そして最後も小川で決めた。「やっぱりエースは小川なんだな」。そう感じながらセレモニーからのビールかけを見守っていた。

文●勝田聡

【著者プロフィール】 
かつた・さとし。1979年生まれ、東京都出身。人材派遣業界、食品業界で従事し30代後半で独立。プロ野球、独立リーグ、MLBなど年間100試合ほど現地観戦を行っている。2016年から神宮球場でのヤクルト戦を全試合観戦中。
 

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