過去10年で「最も成功」したドラフトは? 2人のMVPを輩出した西武、山本由伸を4位指名したオリックスも忘れがたい<SLUGGER>

過去10年で「最も成功」したドラフトは? 2人のMVPを輩出した西武、山本由伸を4位指名したオリックスも忘れがたい<SLUGGER>

過去10年で最も成功したドラフトは何年のどの球団なのだろうか。上位いずれも共通しているのはMVP受賞者を輩出している点だ。写真:THE DIGEST

10月20日に迫る今年のプロ野球ドラフト会議。ここでの指名が今後の球団の趨勢を大きく左右するが、果たして2012年から21年までの過去10年のドラフトで最も成功/失敗した指名は「どの年のどの球団」なのだろうか。今回は最高の指名となったトップ5を紹介する。

ベスト1位:2013年西武
1位 森友哉(捕手)←大阪桐蔭高
2位 山川穂高(内野手)←富士大    
3位 豊田拓矢(投手)←TDK
4位 金子一輝(内野手)←日本大藤沢高
5位    山口嵩之(投手)←トヨタ自動車東日本
6位    岡田雅利(捕手)←大阪ガス    
7位    福倉健太郎(投手)←第一工業大

 MVP選手を同時に2人獲得できたのだから、これ以上に理想的なドラフトはない。1位の森友哉(大阪桐蔭高)は19年、捕手としてはパ・リーグ54年ぶりの首位打者となり、2位の山川穂高(富士大)は前年の18年に47本塁打でタイトルを獲得して、それぞれMVPに輝いた。同一年の1・2位指名が2年続けてMVPになったのは、1975・76年の阪急(68年2位加藤秀司・1位山田久志)以来だった。

 しかも森は単独指名。超高校級捕手との評判で、本来なら競合クラスだったところ、松井裕樹(桐光学園高→楽天)、大瀬良大地(九州共立大→広島)らの好投手に人気が集中したのも西武にとって幸運だった。その後も森は21年に打率リーグ2位、山川は今季3度目の本塁打王に輝くなど活躍を続けている。また、6位では信頼度の高い控え捕手に成長した岡田雅利(大阪ガス)も指名している。
 ベスト2位:2017年ヤクルト
1位    村上宗隆(捕手)←九州学院高    
2位    大下佑馬(投手)←三菱重工広島    
3位    蔵本治孝(投手)←岡山商科大    
4位    塩見泰隆(外野手)←JX-ENEOS    
5位    金久保優斗(投手)←東海大付市原望洋高    
6位    宮本丈(内野手)←奈良学園大    
7位    松本直樹(捕手)←西濃運輸    
8位    沼田拓巳(投手)←石川ミリオンスターズ    

 清宮幸太郎(早稲田大→日本ハム)のクジを外したことが、ここ10年で最高レベルの大成功をもたらしたのだから、何が幸いするか分からない。もちろん、村上宗隆(九州学院高)は外れ1位でもヤクルト以外に巨人と楽天も入札したくらいの逸材だった。とはいえ、三冠王と本塁打の日本人新記録を同時に達成するほどの大打者に成長するとは、誰も想像していなかっただろう。

 村上だけでも大成功と言っていいが、4位では塩見泰隆(JX-ENEOS)も獲得。こちらも21年に正中堅手に定着してベストナインに選ばれると、今季もオールラウンドの働きでチームを牽引する存在になっている。6位の宮本丈(奈良学園大)も貴重な控えとなり、21年の優勝には2位の大下佑馬(三菱重工広島)と5位の金久保優斗(東海大市原望洋高)も貢献。スワローズ繁栄の基になったドラフトとなった。ベスト3位:2016年オリックス
1位    山岡泰輔(投手)←東京ガス    
2位    黒木優太(投手)←立正大    
3位    岡﨑大輔(内野手)←花咲徳栄高    
4位    山本由伸(投手)←都城高    
5位    小林慶祐(投手)←日本生命
6位    山﨑颯一郎(投手)←敦賀気比高    
7位    飯田大祐(捕手)←Honda鈴鹿    
8位    澤田圭佑(投手)←立教大学    
9位    根本薫(投手)←霞ヶ浦高

 大学球界最高の投手だった田中正義(創価大→ソフトバンク)に人気が集中するなか、社会人トップの山岡泰輔(東京ガス)を単独指名。山岡は19年に13勝を挙げて最高勝率のタイトルを獲得した。だが言うまでもなく、それ以上の大収穫は山本由伸(都城高)。21年のMVP&沢村賞、今季もMVP連続受賞が確実視される球界最強投手を4位で取れたのだから笑いが止まらないだろう。

 2位の黒木優太(立正大)も、最初の2年間は中継ぎで健闘。敦賀気比高時代から高評価で、6位まで残ったのが不思議なくらいだった山崎颯一郎も、時間はかかったが大器の片鱗を見せ始めている。今季限りで戦力外になった澤田圭佑(立教大)も通算126試合に登板するなど、8位指名にしては十分な働きだった。
 ベスト4位:2013年広島
1位    大瀬良大地(投手)←九州共立大    
2位    九里亜蓮(投手)←亜細亜大    
3位    田中広輔(内野手)←JR東日本    
4位    西原圭大(投手)←ニチダイ    
5位    中村祐太(投手)←関東第一高    

 九州共立大のエースにして大学No.1投手と評判だった大瀬良大地には、阪神とヤクルトも入札したが、広島が見事にクジを引き当てた。18年に15勝で最多勝のタイトルを獲得すなど、これまで5度の2ケタ勝利を挙げており、やや波はあるものの、リーダーシップを含めて期待通りの活躍を見せている。2位の九里亜蓮(亜細亜大)も着実に力をつけていき、21年に13勝を挙げて最多勝に輝いた。

 3位の田中広輔(JR東日本)も1年目から正遊撃手に定着し、35盗塁でタイトルを取った17年はベストナインに選出。主に1番打者として、16~18年のリーグ3連覇に大きく貢献した。田中のピークが思ったより短かったが、上位3人が全員主力となったので大成功なのは間違いない。【ベスト5位:2020年阪神】
1位    佐藤輝明(内野手)←近畿大    
2位    伊藤将司(投手)←JR東日本
3位    佐藤蓮(投手)←上武大    
4位    榮枝裕貴(捕手)←立命館大
5位    村上頌樹(投手)←東洋大
6位    中野拓夢(内野手)←三菱自動車岡崎    
7位    髙寺望夢(内野手)←上田西高    
8位    石井大智(投手)←高知ファイティングドッグス

 ドラフトから2年が経っただけだが、すでに現時点で「成功」と言い切れる。ソフトバンク、オリックス、巨人との競合で引き当てた佐藤輝明(近畿大)は、1年目の前半戦だけで20本塁打。後半戦は一転して大不振だったが、今季もリーグ4位の84打点を叩き出した。指名時はさして注目度が高くなかった2位の伊藤将司(JR東日本)も1年目に10勝&防御率2.44、今季も9勝&2.63と2年目のジンクスをはね返した。

 拾い物だったのが、6位の中野拓夢(三菱自動車岡崎)で、正遊撃手として21年は30盗塁、新人では4人目の盗塁王に輝いた。今季も打率.276をマークしている。さらには8位の石井大智(四国IL高知)が中継ぎとして頭角を現し、7位の髙寺望夢(上田西高)も高卒2年目にして二軍で打率リーグ2位と急成長中。数年後にはとんでもない大成功と見られているかもしれない。
 【その他の候補】
 15年のオリックスは吉田正尚(青山学院大)を単独で1位指名。2位の近藤大亮(パナソニック)も17年から3年続けて50試合以上登板、3位の大城滉二(立教大)も一時はレギュラー級だった。そして9位の杉本裕太郎(JR西日本)が、21年に突然大飛躍。32本塁打を放ち、首位打者の吉田ともどもタイトルホルダーとなった。

 13年のロッテも1位の石川歩(東京ガス)が16年に防御率リーグ1位になるなど期待通りの活躍。5位の井上晴哉(日本生命)、6位の二木康太(鹿児島情報高)も主力となった。ロッテは19年も佐々木朗希(大船渡高)に加え、2位の佐藤都志也(東洋大)が今季は盗塁阻止率リーグ1位、3位の高部瑛斗(国士舘大)も盗塁王と、上位指名の3人がいずれも戦力になっている。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)

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