「清原和博の次男」だけで偉大な父と同じ活躍を期待するのは酷。清原勝児ら“慶応の逸材”たちをどう見るべきか?
2022年11月11日 05時30分THE DIGEST

今秋の大会でレギュラー格として起用されて小さくない注目を集めた清原。そんなサラブレッドの現状は果たしてどのレベルにあるのだろうか。写真:産経新聞社
高校野球の秋季大会も大詰めを迎え、来春の選抜高校野球への出場校も見えてきた。来秋のドラフト候補となる選手では、大阪桐蔭のエースである前田悠伍、広陵の主砲となった真鍋慧が代表格であり、注目を集めている。そんななかで、彼らよりも高い注目を集めそうなのが、清原和博氏(元西武など)を父に持つ清原勝児(慶応)だ。
現在、慶応大でプレーしている長男の正吾は高校時代に野球部に所属はしておらず、甲子園には縁がなかった。しかし、次男の勝児は秋の新チームからレギュラーの座を奪取。チームも関東大会で準決勝に進出し、選抜出場は当確と見られている。父がPL学園時代に13本のホームランを放った檜舞台に立つとなれば、必然的に注目が集まるのは間違いない。ちなみに清原の学年は現在1年生となっているが、学業不振が原因で進級できなかったために、年齢的には現在の2年生と同学年である。
そんな大注目の清原だが、父と同じようにプロの道へ進めるかというと、現時点では難しいと言わざるを得ない状況だ。先述したように今秋はサードのレギュラーとしてプレーしているが、打順は7番前後であって中心選手というわけではない。
関東大会初戦の常磐大高戦ではホームランを含む2安打2打点の活躍でチームの勝利に貢献したものの、続く昌平戦、専大松戸戦ではバットから快音が聞かれず。関東大会の3試合での合計は10打数2安打という成績に終わった。筆者も神奈川県大会決勝の横浜戦と関東大会の昌平戦を現地で見たが、上半身の力みが目立つスイングで引っ掛けるような打球が多く、プレーに関しては強い印象は残っていないのが正直なところだ。父が高校時代に見せたような活躍を現時点で期待するのは酷といえるだろう。
ただ、プロは度外視したとしても、清原の今後の野球人生においてプラスとなる要素は存在している。慶応高校ひいては慶応大学出身でプロ野球と社会人野球で活躍している選手が近年急増しているのだ。慶応高校から慶応大学を経てプロ入りした選手はこれまで10人いるのだが、そのうち7人が過去10年間に集中している。その顔ぶれは以下のようになっている。
白村明宏(2013年日本ハム6位)
山本泰寛(2015年巨人5位)
矢崎拓也(2016年広島1位・入団時の苗字は加藤)
津留崎大成(2019年楽天3位)
柳町達(2019年ソフトバンク5位)
木澤尚文(2020年ヤクルト1位)
正木智也(2021年ソフトバンク2位)
白村はすでに引退しているが、他の6人は一軍でもプレーし、とくに今年は矢崎、柳町、木澤の3人がチームに欠かせない存在となった。また、社会人野球でも今年都市対抗優勝を果たしたENEOSでは山崎錬が長く中軸として活躍しており、他にも三宮舜(明治安田生命)、瀬戸西純(ENEOS)、森田晃介(JFE東日本)も存在感を見せている。今年の大学4年生でも下山悠介と生井惇己が社会人でプレーを続けると言われており、2年後にドラフト候補となるのも十分に期待できる。 そして今年の慶応高校のチームを見ても、将来が楽しみな選手は確かに存在している。とりわけ清原と同じ野手で楽しみなのが加藤右悟(1年・外野手)と福井直睦(2年・外野手)の2人だ。
加藤は1年生ながら主に4番を任されており、県大会の東海大相模戦ではホームランを含む4打数4安打の大活躍。関東大会でも3試合で13打数5安打としっかり結果を残した。振り出しが鋭くスイングに柔らかさがあり、力みなく強い打球を放つことができるのが長所だ。守備でもライトで見せる強肩は魅力である。
福井も加藤と同じ右の強打者だ。選抜出場に向けての大一番となった関東大会準々決勝の昌平戦ではスリーランホームランを含む4安打4打点の大暴れでチームを勝利に導いた。加藤と比べても一回りは身体が大きく、強いインパクトが残せるバッティングは大きな魅力である。
中軸に力のある右打者が並ぶというのは慶応打線の大きな強みと言える。そして投手で楽しみなのが、小宅雅己(1年)だ。この秋は背番号こそ10だったが、大事な試合には常に先発を任され、県大会準優勝、関東大会ベスト4の立役者だったのは間違いない。
小宅はまだストレートは135キロ前後とそれほどスピードがあるわけではないが、悪癖もないよどみないフォームでしっかりコーナーに投げ分けられ、試合を作る能力は高い。関東大会準々決勝の昌平戦でも16安打を浴びながらも四死球は0。さらに3失点完投としっかり試合をまとめて見せた。筋力がつき、球速がアップしてくれば、見違えるような投手になる可能性も十分だ。
慶応からプロや社会人に進んだ選手を見ても高校時代から突出していた選手ばかりではない。山本、矢崎、津留崎、三宮などは大学で大きく成長した選手たちである。
そうした“実績”を考えても、加藤、福井、小宅はもちろん、清原もここから驚くような成長を見せる可能性は当然ある。そういう意味でも来春の選抜だけでなく、長い目で彼らのプレーぶりに注目してもらいたい。
取材・文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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現在、慶応大でプレーしている長男の正吾は高校時代に野球部に所属はしておらず、甲子園には縁がなかった。しかし、次男の勝児は秋の新チームからレギュラーの座を奪取。チームも関東大会で準決勝に進出し、選抜出場は当確と見られている。父がPL学園時代に13本のホームランを放った檜舞台に立つとなれば、必然的に注目が集まるのは間違いない。ちなみに清原の学年は現在1年生となっているが、学業不振が原因で進級できなかったために、年齢的には現在の2年生と同学年である。
そんな大注目の清原だが、父と同じようにプロの道へ進めるかというと、現時点では難しいと言わざるを得ない状況だ。先述したように今秋はサードのレギュラーとしてプレーしているが、打順は7番前後であって中心選手というわけではない。
関東大会初戦の常磐大高戦ではホームランを含む2安打2打点の活躍でチームの勝利に貢献したものの、続く昌平戦、専大松戸戦ではバットから快音が聞かれず。関東大会の3試合での合計は10打数2安打という成績に終わった。筆者も神奈川県大会決勝の横浜戦と関東大会の昌平戦を現地で見たが、上半身の力みが目立つスイングで引っ掛けるような打球が多く、プレーに関しては強い印象は残っていないのが正直なところだ。父が高校時代に見せたような活躍を現時点で期待するのは酷といえるだろう。
ただ、プロは度外視したとしても、清原の今後の野球人生においてプラスとなる要素は存在している。慶応高校ひいては慶応大学出身でプロ野球と社会人野球で活躍している選手が近年急増しているのだ。慶応高校から慶応大学を経てプロ入りした選手はこれまで10人いるのだが、そのうち7人が過去10年間に集中している。その顔ぶれは以下のようになっている。
白村明宏(2013年日本ハム6位)
山本泰寛(2015年巨人5位)
矢崎拓也(2016年広島1位・入団時の苗字は加藤)
津留崎大成(2019年楽天3位)
柳町達(2019年ソフトバンク5位)
木澤尚文(2020年ヤクルト1位)
正木智也(2021年ソフトバンク2位)
白村はすでに引退しているが、他の6人は一軍でもプレーし、とくに今年は矢崎、柳町、木澤の3人がチームに欠かせない存在となった。また、社会人野球でも今年都市対抗優勝を果たしたENEOSでは山崎錬が長く中軸として活躍しており、他にも三宮舜(明治安田生命)、瀬戸西純(ENEOS)、森田晃介(JFE東日本)も存在感を見せている。今年の大学4年生でも下山悠介と生井惇己が社会人でプレーを続けると言われており、2年後にドラフト候補となるのも十分に期待できる。 そして今年の慶応高校のチームを見ても、将来が楽しみな選手は確かに存在している。とりわけ清原と同じ野手で楽しみなのが加藤右悟(1年・外野手)と福井直睦(2年・外野手)の2人だ。
加藤は1年生ながら主に4番を任されており、県大会の東海大相模戦ではホームランを含む4打数4安打の大活躍。関東大会でも3試合で13打数5安打としっかり結果を残した。振り出しが鋭くスイングに柔らかさがあり、力みなく強い打球を放つことができるのが長所だ。守備でもライトで見せる強肩は魅力である。
福井も加藤と同じ右の強打者だ。選抜出場に向けての大一番となった関東大会準々決勝の昌平戦ではスリーランホームランを含む4安打4打点の大暴れでチームを勝利に導いた。加藤と比べても一回りは身体が大きく、強いインパクトが残せるバッティングは大きな魅力である。
中軸に力のある右打者が並ぶというのは慶応打線の大きな強みと言える。そして投手で楽しみなのが、小宅雅己(1年)だ。この秋は背番号こそ10だったが、大事な試合には常に先発を任され、県大会準優勝、関東大会ベスト4の立役者だったのは間違いない。
小宅はまだストレートは135キロ前後とそれほどスピードがあるわけではないが、悪癖もないよどみないフォームでしっかりコーナーに投げ分けられ、試合を作る能力は高い。関東大会準々決勝の昌平戦でも16安打を浴びながらも四死球は0。さらに3失点完投としっかり試合をまとめて見せた。筋力がつき、球速がアップしてくれば、見違えるような投手になる可能性も十分だ。
慶応からプロや社会人に進んだ選手を見ても高校時代から突出していた選手ばかりではない。山本、矢崎、津留崎、三宮などは大学で大きく成長した選手たちである。
そうした“実績”を考えても、加藤、福井、小宅はもちろん、清原もここから驚くような成長を見せる可能性は当然ある。そういう意味でも来春の選抜だけでなく、長い目で彼らのプレーぶりに注目してもらいたい。
取材・文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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